第7話 王宮主催お茶会へ
「貴様!あちらこちらに媚を売りよって!どういうつもりだ!」
「大体この俺が声をかけてやっているというのにその態度はなんだ!」
「はっ!似合わない格好だな!不細工に拍車がかかっているぞ!」
私は唖然としてその厚顔無恥で傲慢な顔を見返すしかなかった。
なんなら空いた口が塞がらない。
そもそも何故こんなことを言われなければならんのか、サッパリわからない。
周囲も状況についていけず遠巻きに戸惑っているし、アルフォンスの側仕えであろう妙年の男性が慌てて止めに入ろうとしている、その向こうで側妃さまが真っ青な顔をしているのにこの無恥な王子さまは全く気づかず、先程から私に罵声を浴びせとるんやが、あかん、段々腹立って来たわ。
この国の貴族子息女が十三歳になる年、社交デビューの前にプレバレイションとして王宮の薔薇園にて行われる茶会に出席することになっている。
茶会の目的は同世代の顔合わせと貴族子息女の交流が主ではあるけれど、まだ婚約者が決まっていない子息女の皆さんは社交会で最初の婚約者探しも兼ねているらしい。
既に婚約者であるユーリさまが居る私はユーリさまにエスコートをしてもらうことが決まっていて、当日の初めて会う方々へ挨拶する場合、ユーリさまの婚約者として私は挨拶するのと同時にユーリさまは私の婚約者として名乗ることになっている、だって略奪好きとかでない限り婚約者の居る相手に擦り寄るのはマナー違反になるから、うっかり下位貴族の子息女がやらかしたら家門が危うくなりかねないし。
私はユーリさまから送られてきた琥珀色のデイドレスを着て銀の髪をハーフアップに髪飾りにはマリーゴールドの花を使って華やかに着飾ってユーリさまを待ちます。
すっごい恥ずかしいんやけど、このドレスってやっぱりユーリさまの瞳の色やんな?すっごい恥ずかしいんやけども。
「わぁ凄く可愛いねぇ」
顔を合わせるなり真っ白な頬を薄く朱に染めてそういうユーリさまに、私は首まで赤くなりながら「お、おおきに」とつい令嬢として口にしてはならない言葉で礼を言ってしまい慌てて「いえ、ありがとうございます」と言い直した、ユーリさまには幸いにも聞こえなかったようで言い直した私にニコリと微笑んだ。
「ユーリさまも素敵です」
そう伝えたけど、黒の正装は銀糸の刺繍がしてあり、プラチナの胸飾りにはアメジストが輝いている。
落ち着いて穏やかなユーリさまによく似合っていて普段よりずっと大人っぽくシュッとして見えるのはいつもなら下ろしている前髪が、今日は後ろに撫でつけられて形の良い額が見えているからやろか、それにユーリさまの胸飾りは……。
私の色やね?
王城まではユーリさまのランドール家の馬車にて向かうことになる、完璧なエスコートで私を先に馬車に乗せたユーリさまは向かい側ではなく私の隣に座り、私の手を握りながらニコニコと私を見ている。
百戦錬磨な訳やないけど、前世は娘もおったし十二歳なんて子ども相手のはずが、どうにも毎回ユーリさまの視線に恥ずかしくなるのが不思議やったんやけど、前世の記憶はあれど感情はいまの体に引き摺られている気がしよる。
要は記憶はあってもマルグリットとして前世の記憶がある、せやから私自身も多少子どもらしさはないにせよ十二歳であることに変わりはあらへんみたいや。
おかげでこれまでもちょくちょく緊張や恥ずかしさのあまり前世の言葉がうっかり口をついて出たりしよるから、最近気をつけているんやけども。
「ゆ、ユーリさま?見過ぎです」
「んー?だって僕の色のドレスを着てるマリーが可愛いから仕方ないよね」
満面の笑みが眩しいっ。
仕方ないの?仕方なくないよね?え、私が可愛いからなん?
「か、堪忍や…」
「ふふふ」
ユーリさまに翻弄されているうちに馬車は王城の門を潜り、気がつけば私は茶会の会場に着いていた。
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