第4話 お見合いらしいんや

 無事、婚約者候補という形でマリアンヌが第二王子のアルフォンス殿下とくっついた、多分、いや知らんけど。

 

 そもそも本来であれば、王家の下位に当たる公爵家から婚約の申し込みに対して不可は出せないらしい。

 合わへんもんは合わへんのにややこしいねえ。

 ただ今回は私の性格がビックリするほど第二王子殿下と相性が悪いこと、また側妃さまがいいように動かすには私よりマリアンヌの方がやりやすそうと思われたようで、私は無事最初の目標である「第二王子殿下」との婚約回避を成し遂げたのだけど。

 

 私は今、庭の四阿にて二人の少年を前に座っている。

 そう、王家との繋がりはマリアンヌに押しつけれたけれど、貴族社会である上に我が家は公爵家。

 この国に二つしかない公爵家のひとつ、当然我が家に利のある婚約を私もしなければならないわけで、面倒なこっちゃ。

 一人は西に位置する領地を持つグラデン侯爵家の嫡男であるガレイン、燃える夕焼けのような赤い髪の体躯の良い少年。

 ちょっと頑固そうな太めの眉がずっと吊り上がっていて少し怖い感じやわ。

 もう一人が王都に隣接する領地を構えるキュラス侯爵家の三男アレックス。

 金髪に青い瞳はまるで海外映画の悪役の如し、線の細こい神経質そうな少年。

 もう一人来るはずが、遅れているらしく私たちは無言で視線を合わせることなく四阿に座っとる。

 どっちも正直好みやあらへんのんよねえ、この気まずい時間どないしよか。


 「すいませーん、お待たせしちゃいましたねぇ」

 何でかわからへんほどの静まり返った緊張感漂う場を良い意味で乱すような、のほほんとした声色が静寂を破った。

 風にサラサラと流れるストレートの黒髪と琥珀色の瞳の小柄な少年が侍従に付き添われゆっくり歩いてくる。

 「僕が最後ですねぇ、お待たせしてしまい申し訳ないです」

 そう言いながら空いていた私の隣の席に座りよった。

 「ランドール公爵家第二子のユリウスです、よろしくね?」

 私を見てコテンと首を傾げる姿が、とんでもなく可愛い。

 え?可愛い。

 「え、めっちゃすきや……」

 「え?」

 思わず口から出た小っ恥ずかしい本音の言葉を慌てて誤魔化すけれど、誤魔化せるわけもなく。

 「ふふっ、ありがとう、嬉しいな」

 ユリウスの少し上気した頬が白磁の肌にスッと紅を差した。

 はにかんだ笑顔が少年らしく、醸し出す空気は何故か暖かい。

 思わず顔が逆上せ上がってしもうた。

 「あー、これは決まったってことで良いのか?」

 「へ?」

 「そうじゃねえの?」

 「な、何?」

 そんな私とユリウスを見てガレインとアレックスが長々とため息を吐く、私はびっくりして顔をあげた。

 ガタンと二人は席を立つと、自分たちに付き添っていた侍従を片手を上げて呼び付けて四阿を離れた。

 「ごゆっくり」

 「俺たちは先に帰るぞ」

 え?私置いてけぼりやん。

 いきなりのことについていけず、呆然としながら隣に座っているユリウスを見ればニコニコと良い笑顔を見せる。

 うっ、あかん、この笑顔、なんかえらい強いやん、眩しっ。

 「って彼らは言っていたけど、本当に僕で良いのかな?」

 スッと私の手を取りまた小首を傾げ…あ、あざとい!うっ可愛いやんか!

 心臓が早鐘を打ちぶわっと顔に熱が溜まる。

 「は、はひ……」

 よくわからないまま返事を返した。

 「そう、良かった、よろしくね?」

 「は、い……」


 その日、私マルグリット•アルダイムとユリウス•ランドールの婚約が決まった。



 早やない?なんで?!



 

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