第2話 まずは状況整理や
起きてすぐに考えたのは今日の顔見せでどうにかして婚約をしない方向で話をまとめたい、ということ。
昨夜唐突に思い出した前世に対して、今世で生きた記憶があるし生活に不自由はない、ただあるとすれば。
「おはようございますお嬢さま」
「はいはい、おはようさん」
「え?」
「いえ、おはよう」
そう、無意識だと口を突いて出てくるこの「大阪弁」「関西弁」とか言われる身につきすぎた前世の言葉。
常に油断が出来ない。
侍女が数人、ドタバタと部屋に入って来て身支度を整えられるのを流されるままに受け入れていると、馬鹿でかい鏡台の前に座らされ髪を解かされる。
スッと軽食が置かれてそれを口に頬張る。
「これだけ美しいお嬢さまでしたらきっと第二王子殿下にお気に召していただけますわ」
髪を結っている侍女が嬉しそうに言う、確かに鏡に映る少女は美少女と言っても過言ではない。
シルクのような銀の髪は陽の光に溶けるよう、白磁の肌に紅すら必要ないほど艶やかな唇は柔らかな赤に色付いている。
紫の瞳は光の加減で時折り青みを帯びて潤んで見える。
記憶にある美少女子役も裸足で逃げそうな美しさ、ただし、黙っていれば。
「はぁ」
憂鬱なため息を吐いた所でドタバタと足音が鳴り部屋に飛び込んできたのはピンクブロンドのふわふわとした髪の愛らしい、ひとつ下の妹だ。
「マリアンヌ、走っちゃだめよ」
「いいじゃない、どうせお姉さましか居ないんだし」
いやいや、侍女がようさんおるがな。
「いいなぁ、お姉さまは」
「何が?」
「だって、同じ歳って言うだけで第二王子殿下の婚約者になれるんでしょう」
流石に理由はそれだけではないんちゃうやで?
「お姉さまより、私みたいな可愛い系の方がお姫さまに向いてると思わない?」
……思わなくもなくない、ね。
確かに愛嬌があり見目は父に似た私と違い母に似て愛らしい顔付きにふわふわのピンクブロンドの髪、笑顔が似合い時々拗ねる姿も愛らしい。
お姫さまっぽさならマリアンヌはピッタリだと私も思う。
ただ、父や母は王子妃教育をマリアンヌに出来ると思っていない。
だってねぇ、この子見た目は可愛いのに頭は残念……勉強が苦手なんよねぇ。
行儀見習いも令嬢教育も、魔法学も歴史もどんな勉強もすぐ逃げ出すし。
だから早々に父や母から今回の話が側妃さまから打診された時に妹はないなと見切られたわけで。
前世の記憶に照らせば妹の成績は通知表があるならアヒルの行進、1か2しかない。
そんなん公爵家から婚約者として王家に出されへんやん。
「お父さまやお母さまが決めたことだから、仕方ないわよ」
「ふーんだ」
散々狡い狡いと喚き散らして、飽きたらしいマリアンヌは漸く部屋を出て行った。
その頃には私を含めた侍女全員が疲れ切っていた。
身支度を終えると直ぐにサロンへと呼び付けられた。
ふわふわの白いドレスの上に重なる黄色いレース、腰回りを黄色いシフォンのリボンで留めたドレスは明らかに第二王子殿下、アルフォンスなんちゃらの色。
ため息を吐きたくなるのを抑えて父と母に朝のご挨拶。
「お父さま、お母さま、おはようございます」
記憶の引き出しをひっくり返してカテーシーをすれば、父と母も軽く挨拶を返してくれた。
「この後、第二王子殿下と側妃さまが来られる、お前なら大丈夫だろうが失礼のないように」
チッ、釘を刺されてしまったやん。
ええ感じに嫌われすぎんと気に入られへんようにしようと思ってたのに。
母は無言でため息を吐いている、あれ?もしかして母は乗り気じゃないんちゃう?
逡巡しているうちに来客を告げに家令がサロンへやってきた。
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