『女の子どうしって、ややこしい!』1.txt
【見出し】相手が傷付くから本音は言えない
午後一時十五分、メリーマウントで初めて顔を合わせた八年生の女の子たちは、みないまにも横になりそうだった。ランチを食べたばかりで、お昼寝にちょうどいい頃合だ。床に座って、壁にもたれ、たがいに寄りかかっている。季節は三月、外には春の兆しが見えていた。
私はオレオクッキーを出して勧めた。それがきっかけとなったように、みな座り直す。ほっとして、ディスカッションをはじめることにした。まず、完璧な女の子とはどんな子のことだろうか、と訊いた。みなとまどったように私を見、やがて二、三の手があがった。気楽な雰囲気にしたいから挙手はしないでいいといってあったのだが、長い習慣はなかなか消せないらしい。
「やせてる!」
「かわいい!」
「性格がいい!」
「性格がいいって、どういうこと?」私はノートから目を上げていった。
「いつも友だちがいる」
「けんかしない」
「みんなに好かれる」
そこで私は質問を変えた。「もし友だちに何かいやなことをされて、むっとしたり悲しくなったりしたら、その友だちにいう?」
「いわない!」この答えは全員そろっていた。
「どうして?」
みな黙ってしまった。私は待った。
隅にいたひとりの女の子が口を開いた。「だって、大変なことになっちゃうでしょ」
「大変なことって?」
「大げんかがはじまるってこと」と別の子が説明する。「みんなが巻き込まれるし、そんな小さいことで友だちを失うなんてつまらないから、うまくおさめるんです」
「自分の気持を誰かにいったら、どうなる? そのほうが少しは気分がよくなるかしら?」
「でもそうしたら、相手が傷つくでしょう?」誰かがいうと、みなうなずく。
「本当のことをいったら傷つけてしまう。だから私は嘘をつくんです」。隅の子が静かにいった。
※レイチェル・シモンズ著・鈴木淑美訳『女の子どうしって、ややこしい!』(70-71頁、草思社、2003年)より引用。
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