五日目 知ること、それだけが安らぎになる

 僕がこれからすることだって、無駄かもしれない。

 それでも、僕がこの生に意味を持たせるために、必要なことだ。

 そう思いながら、僕は家に届けられた本の山から、一冊を手に取った。

 僕を蝕む病の正体を知りたかった。

 両親の嘘まみれの言葉でなく、両親の顔色を伺わなければいけない主治医ではなく。

 僕に対する利害がさほどない視点からの真実を知りたかった。

 何が起きたかわからないまま、ただ苦しんで死ぬのは嫌だ。

 同じ死ぬにしても、自分の身に起こっていることくらいは知りたい。

 わからないままじゃ、恐怖も増すだろうから。


 とてもじゃないけれど、量も難易度も一日で読めるものではない本。

 それでも僕は自分のことを知りたかった。

 勉強と読書以外に継続してできることがない闘病生活のおかげで、僕は辞書を頼りつつだけど、医学書の英語を読んでいくことができた。

 こんな高い本を買ってくれるのも、もう長くはないと思っているからなんだろうとか、そんなことはもうどうでもよかった。

 僕は貪るように読み進めていった。

 読み続けて、明日はここまで読むと決意して眠りに落ちるときに、やっと安らかな気持ちになれた。

 明日は体内で起きている変化について読み進めよう。

 明後日は原因と考えられるものについてを読む。

 そうやって考えていくと、夜が明けなくても仕方ないとは思えなくなった。

 せめてこれを読み終わるまでは、と願う。

 その一方で、明日何を読みたいと楽しみにする気持ちもある。

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