三日目 憐れみはゴミ
月曜日。
調子がよかったので登校したら、涙ぐんだクラス委員に千羽鶴を渡された。
なるほど、両親も担任も、それなりに入念な計画を立てていたのだ。
怒りと軽蔑で、言葉も出ない。
僕のそれをどう感じ取ったか、クラス委員は千羽鶴を紙袋に入れて、僕の机の横に下げた。
虚無。無駄。無意味。何も救わない虚飾。
千羽の鶴が、不治の病から救ってくれるわけもなし。
ただあるだけだ。
誰かの思いつきにつきあわされて、貴重な時間をこんな無駄に費やす羽目になって、そして本人にも喜ばれないなんて、不毛すぎる。
発案者が誰か知らないけど、こんなの、誰も嬉しくないだろう。
そもそも休みがちで会話にも加わらない僕のことを仲間だとか友人だとか思っている人間がいるはずもない。僕も誰のこともそう思っていないし。
そんな現実を、何一つ見ていない。
その愚鈍さが、無知蒙昧であれる厚かましさが、おぞましい。
こういうときは常日頃からクールとか言われるくらいに表情を動かさない癖がついていてよかったと思う。そうでなければ、嫌悪を隠せなかっただろうから。
昔、「同情するなら金をくれ」と何かの台詞であったらしいけれど、僕のこれは、「同情するならおまえの健康な体をよこせ」だな。
人気の少ない北階段で自虐的に笑って、今隣に誰もいないことに、心底ほっとした。
千羽鶴なんて、その辺に投げ捨ててしまいたかったけれど、それが知れて説教されるのも、それに反応するのも、もう疲れた。
短い時間をゴミみたいな感情の処理に使いたくない。
憐れみほど、何も生まない感情ってないと思う。
何というか、無駄だなとしか思えない。
的外れで、愚かで、僕に何も届いていないことに気づかないあいつらの感情、可燃ゴミとして廃棄したい。
家でも、学校でも、そのすべてが面倒くさい。
大概いつも調子悪いから、部屋に引きこもるのは容易で、それはよかったかもしれない。
一人になりたい。
誰も僕を憐れまない空間にいたい。
それには僕一人の世界が手っ取り早い。
僕には時間がないのに、浪費しないでくれよ。
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