11話 戦士ロバ
家族と別れて早数カ月。ペリエのローブが最早その役割を果たせない程にまでボロボロになる。さすがに大事な部分は葉や木の皮などを加工して隠せているがそろそろ装備を新調しないと不味いだろう。それにペリエは魔法人形、定期的なメンテナンスが必須だ。
しかし、一見してタダの鹿と無口な魔法人形。
これでどうやって資金を稼ぐ?
そもそも街に入れるのか?
まぁ後者はともかく、前者は問題無い。なにせ俺は何百回をも転生した身である、死んだ後の備えは抜かりない。だが、そのためにはまず俺が前にお世話になった街であるモンベルへ帰る必要があった。ただ、鹿に生まれ変わって土地勘はリセットされている。同じ風景が続く山や森では、ここが何処なのかすら見当がつかない。そこで一番簡単な方角の見分け方を頼りに、中央南方方面を目指す。モンベルがあったメルレパ地方は丁度世界の中央南にあり、そこさえ辿り付けばモンベルはすぐそこだ。この世界にも太陽があり、日は東より出て西へ沈む。これさえ分かっていれば、自然と北と南、非常にアバウトだがざっくりと目的地へ向かう事は可能である。問題は天候が崩れた場合だが、それでもわずかに影が見えていればそれで方角を測る事は可能だ。昔ハマっていたサバイバル番組の外国人が言っていた知識がこんな所で役に立つとは・・・。
そして・・・
『剣闘マスタリーlv1』の熟練度を獲得。尚、『剣闘マスタリ―』はレベル事に新たな技能を獲得できます』
道中で現れるモンスターは何とか剣を振り回して倒している。とは言っても、倒すのはスライムや小動物などの小柄なものが殆どなので、ペリエの魔法も温存でき、さらに俺自身の修行にもなると言う訳だ。それに、ここまで順調なのも、
ザシュ!!
鮮やかに撫で斬りを決めて即終了。
今では首の力で剣を振り切るのにも慣れてきた。
鹿の体は俺がイメージする以上に体幹が良い。撫で斬りとは言ったが、少しジャンプして体の向きを変える事で垂直に剣を振るう事だって可能だ。瞬発力に物を言わせて素早く攻撃ができその動きもなかなかにトリッキーである。さしずめは想定外の動きで敵をかく乱する遊撃戦士とでも言おうか。
そして・・・さらにもう一つ。
「あえんおあはいなあいうへお」
これが非常に大変だが、何とか暇を見つけては言語を話す練習をする。ペリエは言葉による意思疎通が出来ない。と、なれば俺が何とか話せるようになるしかない。そうそう街に入る方法だが、実はペリエを魔法使い兼従魔使いとして冒険者ギルドへ登録しようかと考えているのだ。その際、俺がペリエと契約した喋る鹿の魔獣という具合で話を進めていけば潤滑に事が運ぶ・・・という具合なので・・・・
「はれわれはうとういんであう」
寧ろ、戦闘技術よりも最優先で言語を習得する必要がある。心なしか中咽頭も成長している気がする。
そして、そこからさらに数カ月・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「確か、この辺に・・・」
ここは廃墟化したモンベル郊外にある町はずれ。俺は謝金を返済する中、こういう事もあろうかと自分の財産を何か所に分けて穴に埋めて隠す、通称デポットを行なっていたのだ。
が・・・
「うーん、こういう時って目印を付けて置いても中々見つからないもんだよなぁ」
まるで大人になってから掘り返そうとしているタイムカプセルが見つからない現象にでも遭遇しているみたいだ。
「ん・・?」
その時、ペリエがとある場所を指さす。そういえばその時、ペリエも一緒に居たんだったか。ここほれワンワンとばかりにペリエが地面を指さす。すると・・・・
「おっ!あったあった!!」
そこには路銀や、ちょっとした保存食を入れた金属製の箱があった。これだこれ、これを探していたんだ。
「ふむふむ、中身は問題無いっぽいな。ほれペリエ、魔法で保存してた干し肉があったぞ」
俺はペリエに干し肉をあげる。ペリエはそれをムシャムシャと食べ始めた。思えばずっと木の実ばっかだっただけに、純粋なたんぱく質は嬉しいのかもしれない。全く表情にでないけど。
「よし、これでモンベルに行く手筈は整ったな。あと・・・」
「ペリエ、俺ってちゃんと喋れているか?」
「・・・・こくこく」
よし、言語の方も問題無い。後はうまく街の連中に誤魔化していけば・・・。それにしても街の連中はあれから数年経過したのか・・・顔見知りが今もいるなんて甘い考えは捨てた方がいいかもな。幸か不幸か、転生した先が鹿である意味良かったとさえ思う。もし仮にまた人の子にでもなってしまったらペリエはともかく、時間経過で状況はさらに難しくなっていただろうしな。
「まぁ、とにかくモンベルへ行ってみよう」
全てはそこからだ。
・・・・・・・・・・・・・
モンベルへ入る出入り口は二つ、南門と北門のみ。そこには門番が居て、怪しい者で無いか検問が入る。
「・・・おい、お前待て!!って・・・アンタ、ペリエッタさんじゃ?」
門番の一人がペリエの存在に気付いたようだ。
「・・・こくこく」
「ペリエッタさん!良かったー生きてたんだねー・・・それにしてもなんだそのヘンテコな格好は?」
まぁヘンテコもヘンテコだろう。今のペリエはローブが完全に破れて上半身がタンクトップに、下半身は木皮を剝いだだけの腰巻を巻いてるという恰好である。保護者ながらなんとなく不甲斐なくさえ感じる。
「なんだ、この姉ちゃんと知り合いか?」
「いえ、知り合いって程では無いんですが、この子以前にこの街で変なオッサンと活動していたんですよ。無口で可愛いから俺、隠れファンで」
変なオッサンで悪かったな。全く最近の若い連中は女を見れば欲情しやがって。けしからん。
「そういう事なら入場は問題ないな。でも念のため身分証は確認させて貰おう」
(ペリエ、鞄に入っている身分証を)
こういう事もあろうかとペリエには事前に魔法ギルドの身分証を作ってある。
「・・・よし、問題無い。だが連れが居ないみたいだが、何かあったのか?」
「・・・・こくこく」
「そうか・・・まぁ大変だったな。ゆっくり休むといい」
「・・・・こくこく」
・・・・よし、なんとか第一関門は突破・・・・。
「じゃあ、この非常食はとりあえず馬小屋にでも入れておくから」
あれ?ちょ、非常食?いや、そこじゃない。
「・・・・ふるふる」
「ん?ペリエッタさん、どうしたの?」
「・・・・・・・・」
まずいな。いや、考えて見ればそうか、普通鹿が街に自由に出入りできるなんて聞いたことが無い。ペリエも想定外のこの状況に混乱しているし・・・だが、ここで喋るとかえって大騒ぎになりかねない。ここは一つ・・・。
「む!なんだコイツ、おい!」
俺は手綱を強引に振り切り、ペリエに近づく。
「ペリエッタさん・・・まさかとは思うけど、それってペットなの?」
「・・・・こくこく」
「参ったなぁ、ペット同伴なんて聞いたことねーぞ」
「でも、まぁ、明らかに魔獣の類じゃないし、これってどー見ても鹿だよなぁ・・・それに何故か人間を全く恐れないし」
「だが、むやみに野生の鹿を街に入れて流行病を持ち込む危険性もある。ここは、魔法ギルド扱いにして、しばらく待機させよう」
「まぁそれが無難でしょうねぇ、ペリエッタさんもそれでいいすか?」
「・・・・こくこく」
そうして俺達は小一時間、待機場所で検疫をする魔法ギルドの人間を待つ頃になる。俺自身は沐浴を欠かさず清潔にしているつもりだが、検疫は受けた方が良いだろう。マダニとか怖いし。
「・・・!!!ううううペリエッタさーん!!!」
扉が開くなり、見慣れた顔がペリエに抱き付いてきた。あの魔法ギルドの受付嬢のエバだ。
「もう死んじゃったかと思ってたんですよ~うううー」
「でも、それにしてもこんなにボロボロになって、全くロバルトさんは一体何をして・・・あれ」
「ペリエッタさん、もしかしてロバルトさんは・・・・」
「・・・・こくこく」
「そうだったんですね、でも、まぁペリエッタさんが生きていて良かったです」
えっ、俺への感傷そんだけ?
「私、正直言うとあの人苦手だったんですよねーなんかニヒルって言うか、仕事も丸投げしまくるし、ちょっとばかし魔石見つけられるからって威張っているというか・・・知ってましたー?あの人、見てない風にしてさり気なく胸ばっか見ていたんですよー?他にも・・・」
ぐぬぬぬぬぬ・・・仮にもそれが死んだ人間に対する仕打ちか。クソ、なんかもう完全に人間不信になりそうだ。まぁ鹿なんだけど。
「でも、もう居ないって思うと、ちょっと寂しいというか、悲しいですよね、あ、今さらだけどペリエッタさんの前でちょっと言いすぎちゃったかな、えへ」
「こくこく・・・・」
すると、徐にペリエが俺を指さす。あ、そういえばペリエに俺の事を伏せて置く事言うの忘れていたわ・・・。
「うんうん、ところでこの鹿一体何なんですか?あんまり肥えてないみたいですけど・・・」
どいつもこいつも俺の事=肉としか見てない。まぁ常識で考えればそれが普通なのだけど。
「そいつはぁペリエッタさんのペットみたいなんだ、だが見ての通りどうみても野生の鹿だ、安全に街に入れるかどうか色々とチェックしてくれや」
「なるほど、それで私たち魔法ギルドが呼ばれたのですね」
検疫、もとい『鑑定』スキルで大抵の事は調べがつく。俺の体は一通り鑑定にかけられ安全かどうかを判断される訳だが・・・。
「・・・・この鹿、なんかおかしいぞい」
エバと一緒にいた老練の魔法鑑定士。
「どう、おかしいのですか?」
「うーむ・・・ワシの『鑑定』の結果だが、健康状態や衛生面には問題無い。問題なのは・・・」
「鹿のくせに『剣装備』のスキルを所持しておる、それに『剣闘マスタリ―』・・・これについては聞いたことさえない、非常に・・・
「なるほど・・・つまり、えっと、そう言う焼き加減だと美味いとか?」
「おっほっほ・・・エバ嬢や、こりゃ一本取られたわい」
全然面白くないわ。
「でもまぁ・・・街に入るなら問題無いじゃろう、気性はかなり大人しい」
「じゃあ、ペリエッタさんは街に入れますね!!!良かったー!!」
エバはガシっとペリエの腕を掴む。
「とにかくまずはお風呂ですよ!女の子がそんなボロボロじゃ目立っちゃいますし、そうだ、あと服も・・・私の貸してあげます」
むっ・・・まずは冒険者ギルドへ行きたいのだが、どうしたものか。
「んで、この非常肉ですけど、丁度良い豚小屋があるのでそこに置いときましょう」
「・・・・ふるふる」
「えっ?じゃあこの鹿も一緒にお風呂に?」
「・・・・ふるふる」
「・・・・うーん、ごめんなさい、私よくわかんないや!!」
「・・・・・・・」
そうして、俺は豚小屋にぶち込まれる事が決定した。
ーーーーーーーーーーーーーー
グキュルルルル・・・。
ああ、腹が、減った。
「ちょっとアンタ!!食べないなら邪魔だから奥へ行っておくれ!」
豚のようなババアなのか、ババアのような豚なのか的な豚がががめつい顔して俺に睨みをきかせた。その中でもせっせと口の中に人が与えた残飯に貪り付いている。この豚のせいで俺の中の豚評価が底なしに下落したのは言うまでもない。はぁ・・・せめて馬小屋にぶち込んでくれれば飼い葉に在りつけたのに・・・。
奥でションボリしていると、外からうまそうな匂い、つまり草が蒸れた香りがしてくるでは無いか!!
慌てて小屋の外を見ると、なんと草の塊がこちらに向かって歩いてくる。いや・・・誰かが前が見えない程に枯れ草を抱えて此方へ向かっているようだ。
「・・・・・・」
(もしかして、ペリエか?)
草を持った何かは小屋の中まで入り、俺の前まで来ると持っている草を俺の元へ置いた。そこで飼い葉を持ってきた子がペリエであると分かった。
「いやーさすがは持つべき相棒だ!あはは、助かったよ」
俺はペリエに感謝しつつも草にかぶりつく。ああ、これこれ、クソ不味いけどおいしい。矛盾してるけど実際そうなのだから仕方ない。そんな俺の様子を見てペリエが・・・。
グッジョブ。
と、でも言うかの如く親指を突き上げるジェスチャーをした。どこでそんなジェスチャー覚えたのだろう・・・何かだんだん人間染みて来ている気がする。その後はペリエに頭を撫でながら腹が満たされるまで飼い葉を食っていた。・・・まぁ確かにハタからみれば俺はペリエのペットなのだが。少し悲しい。
「あー!!ペリエッタさんそんな所に居たんですかー」
エバがペリエを探していたようで駆けつけてきた。
「・・・・こくこく」
「ペリエッタさん、実はー・・・ちょっと魔法ギルドに来てほしいのですが・・・その、ロバルトさんの事で、ちょっと」
・・・俺の事?一体何だろうか。
だが、その前に行くべき場所がある。
(ペリエ、一旦断れ。冒険者ギルドへ行くのが先だ)
そこでペリエをテイマーに認定して貰わないとこの先俺が喋れない。
「・・・・ふるふる」
「えっ?うーん・・・困ったなぁ。もしかして他に用事が?」
「・・・・こくこく」
「なるほど、じゃあその用事が終わったら来てくれますか?」
(それはOK)
「・・・・こくこく」
「よかったー!じゃあ私はそのように報告しますので、必ず寄ってくださいねー!!」
そう言うとエバは来た時と同じように颯爽と駆けて行った。
「ふぅ・・・それじゃあ冒険者ギルドへ行くか」
「・・・・こくこく」
・・・・・・・・・・
そして、俺達は冒険者ギルドの前に立つ。あの受付嬢、アニエルなら俺が喋ってもきっと動じないに違いない。そこからお触れを出して貰えば晴れて俺は非常食の汚名を払拭できるというもの。
「いらっしゃ・・・あ、あなた・・・ペリエッタちゃん!」
アニエルはペリエを見るなり、まるで母のようにペリエを優しく抱擁した。
「良かった、生きていたのね・・・ご飯はちゃんと食べている?」
アニエルは目に涙を浮かべながら、ペリエのほっぺをプニプニしている。今さらながらペリエって割と愛されていたんだなぁと感慨深くなる。俺はどうでも良い存在っぽいが。
「ところで、ペリエッタちゃん。ロバルトさんは・・・もう?」
「・・・・ふるふる」
ペリエは否定し、俺を指さす。まぁそれでさすがに俺がロバルトである事など分かりようも無いので気にするのもやめた。
「うん、鹿なんて珍しいわね。まさか・・・この鹿がロバルトさんだって言うの?」
・・・・!!!マ鹿!!いやマジか・・・いくら冗談とは言え勘の冴え方半端無いだろこの人。
(ペリエ!ややこしくなるからここは否定しろ)
「・・・・ふるふる」
「そうよねぇ・・・という事はあの人はもう・・・そうなの、そう」
「あんな慎重な人が死んじゃうなんてねぇ・・・」
まぁ、死ぬときは死ぬよ。誰だって。
「それはそうと、今日は何の用事でここへ・・・って言ってもあなた喋れないし、読み書きも・・・出来る?」
「・・・・ふるふる」
・・・よし、俺は大きく深呼吸をし、覚悟を決める。
「・・・・あーあー」
「・・・・?」
「それについては、俺から説明する」
「まぁ、鹿が喋ったわ!」
「そ、そう・・・俺は喋れる鹿なんだ。そして今はこのペリエッタ様の忠実なる僕である」
「へぇ・・・そのなの?ペリエッタちゃん」
「・・・・こくこく」
グッジョブのジェスチャーをしながら肯定するペリエ。なんでそんなにノリノリなの。
「主は優秀な魔法使いだが、同時に優秀なテイマーでもあったのだ。という訳で、我が主は従魔使いとして冒険者ギルドに再登録したいとの希望である」
「なるほど、でも、それはダメよ」
あれ?
「ダメ・・・なのか?」
「ええ、ダメ」
「理由を聞いても?」
「そりゃ冒険者は基本的に複数の職業は名乗れない決まりだからよ」
「・・・・なるほど」
言われてみればそうかもしれない。いや、うん、職業変更という手は・・・・。
「では、魔法使いから、従魔使いに職を変える・・・いや、それは」
「そうころころ職を変えるのはあんまり良い事じゃないわ、ペリエッタちゃんの魔法使いとしての今までの実績が全てリセットされるし、等級もF級からのスタートになるのよ?」
「あ・・・うぅぅ・・・確かにそれは不味いな」
「・・・・こくこく」
「でも、職業を変えなくても特技として追加すればそれは可能よ」
「例えばね、戦士でも魔法が使えるなら『魔法戦士』って名乗っても良いけど、今までの実績を残したいなら単に魔法が使えるという備考だけを載せれば、今まで通り戦士の領分は維持できるのよ」
「だからペリエッタちゃんもテイムが出来る魔法使いという肩書にすれば登録上問題は無くなるって訳」
「・・・・なるほど、では、是非それでお願いできるか?」
「ええ、問題無いわ。それで、鹿ちゃん、君の名前は?」
「名前?」
「名前が無いとどう登録するつもり?」
「そうか・・・名前か」
さすがにロバルトは不味いだろう。だが、名前か、当たり前すぎて逆に考えもしなかった。んー・・・そういえば昔、犬なのにネコとかテロップつけていたくだらない流行があったな。
「そうだな・・・俺の名はロバ・・で」
「し・・・鹿なのにロバァ?」
それからアニエルの笑いが収まるまで5分程かかる。勿論俺には何が面白いのか皆目見当が付かない。他人との笑いのツボで分かり合える事はたぶん一生無いような気がする。
「ぷーっ・・・・分かったわ、ロバね、じゃあロバ君、今日から君はペリエッタさんの従魔という事で・・・それで、種族は鹿でいいのかな・・・・ぶっー!!!」
おいおいまた吹いたよこの人・・・大丈夫か?
「ああ、鹿で構わない。でも喋る鹿なんて相当レアなはずだから、そこの所はよろしく」
「あはは、分かったわ。あーそうそう、テイマーに使役される従魔はね、一応その役割を記入しなきゃならないのよ」
「役割?」
「まぁ、簡単に言えば前衛、中衛、後衛のどちらかって事ね」
「なるほど・・・」
俺はどうみてもアタッカーだ、よな?
「前衛で頼む」
「はいはい、前衛ね。その容姿だとタンクって事は無いわよね?」
「アタッカーで頼む」
「分かったわ・・・はい、これでペリエッタさんは晴れてテイム持ちで認定されたわ」
「そうか、それでお代はいくらになる?」
「ロバ君が払うの?ぷーっくすくす・・・でも今回は良いわ。ペリエッタちゃんが戻ってきた事のお祝いって事で」
「そうか、じゃあお言葉に甘える」
「なーんか、堅物っぽい鹿ねぇ・・・まるで本当にロバルトさんが乗り移ったみたい・・・」
「その者が死んだのは間違いない、ね?主」
「・・・・こくこく」
「そっか、じゃあ、さすがにいきなり街中で喋られると大変になっちゃうから私の方から告知を出して置くわ。もしかすると、あまりの珍しさに城代から声がかかるかもしれないわねぇ」
「その時は、その時だ。ありがとう」
「いえいえ、頑張ってね、二人・・・いや一人と一匹とも」
とりあえず何とか切り抜けて俺達は冒険者ギルドを後にした。それにしても前世がロバルトで今度はロバか、誰もが思いつきそうな何の捻りも無い名前になったが、俺は意外にも悪くないなんて思っている。
名前なんてどうでもいい。
どうでもいいからこそ、どうとでもなるのだ。
俺の名は鹿の戦士、ロバ。
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