第9話
「バード、エミリー嬢による被害額ってどのくらいだったの?」
「色気のないピロートークだなぁ。他の女の話?萎える」
萎えて結構!
「あれは、嘘も方便ってやつだよ。うちの商家が莫大な金額を稼いでるのはわかるだろ?その数パーセントの被害額って、数パーセントでも莫大な金額だからね。でまかせでまかせ。でも、そんなのにあの子はひっかかったから、万事OK」
はぁ、心配したのに。私も引っかかったんだけどなぁ。
「私だって、あんな小娘がうちの商家に被害与えてたのかと思ってドキドキしたわよ~。うそでよかった」
「さすがにあんな小娘では数パーセントも被害出せないかなぁ?0.01パーセントくらい?それでも庶民には結構な額だけどな~♪」
「明日は大事な商談あるんでしょ?あ、もう今日?」
「こっちの方が大事だもーん」
こういう時だけ子供っぽくて甘えた感じなんだから、こっちは仕方ないなぁって思っちゃうじゃない!
「我が商家から軍事部門を引き抜きたいと?」
それは無理な話だろう。軍事部門は収入の3割近くのはず。
「無理なら美容部門を引き抜きたいと?それは我が商家を弱らせ自分たちの力を付けたいというのが見え見えですね。どちらも私が力を込めて作った部門ですのでこの商談は決裂ですね。いくら積まれても、無理です。私が大事に育ててきた部門ですから」
バードは捕縛された。容疑は謀反準備罪。
「おかしいよ、軍事部門だって前からあったし、美容部門だって父さんが力入れて大きくしたんじゃんか」
ライクの言う通りなんだけど…。
「多分…今日の交渉相手、王家だったのよ。面と向かってたてついたから、腹が立ったんでしょうね。権力の乱用よ」
軍事部門は確かに前からあって、うちの商家の独占状態だった。バードの手腕で。美容部門については失っては貴族のオクサマが家庭内戦争を起こすだろうとの予測の下でバードが力を入れていた。
「さて、どうしたらいいでしょうね?王家からは2つの部門とバードの身柄を引き換えるって。ライク、考えましょう?」
2代目になる予定のライクをたきつけて、さて考えましょう。
「王家は名前だけ欲しいのかしら?権利が欲しいのかしら?軍事部門の権利はあげられないわよねぇ。美容部門についても商品の名前だけ?中身の成分とかのリストはいらないのかしら?研究者とか…」
「母さん、それだよ!王家には軍事部門と美容部門を渡す。父さんは戻ってくる。もちろん軍備に関わる権利は渡さない。だから、暗躍する感じ?美容部門も研究者は渡さない。化粧品は名前を変えて売り続ければいい。王家とは二度と交渉しないと書面で伝える。ってのはどうかな?」
つまり、王家は『この商家から軍事部門と美容部門を手に入れました』って一時的にお金が入るでしょうね。
でも、権利がないから王家に渡ったはずの軍事部門は機能しない。美容部門については研究者がいないから、化粧品開発が進まない。とそういうことね!
「それでいきましょう!」
ルリは泣いてるから放っておきましょう。余計な事はしないように!使用人に見張っていてもらいましょう。
私とライクは王家との交渉で二人で相談していたように、バードを奪還した。
バードには軍事部門の権利を渡していないという事。美容部門の研究者を渡していない事を告げた。
「小手先だけで、王家にそれが通用するのか…。俺は戻ってきたけど、今後は大丈夫なのか?各部門の責任者を呼び出して、要相談。さらに研究者の警護だな。権利書は守れるが、研究者は直接警護するしか方法がないからなぁ」
ライクはちょっと凹んだ。自身の渾身の案がバードには‘小手先’と言われたのだから、仕方あるまい。
「その責任者の会議に俺も参加したい」
ライクが言った。うーん、負けず嫌いなのかなぁ?
王家…そんなに国庫が困窮しているんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます