第10話

「どういうことだ?バードは奪還され、軍事部門・美容部門は確かに手に入ったが、肝心の軍事に関する権利は全くなく、さらに美容部門には研究者がいないんじゃあ新しく何かを開発して、稼ぐということができないじゃないか?!」

国王は机に置いてあるものを薙ぎ払うように床に落として言った。


「お言葉ですが、陛下。バードを釈放するように決定したのは陛下です」

宰相は続ける。


「美容部門ですが、もしも研究者がいたとしても新商品の開発はできないかと存じます。理由は新商品開発には莫大な資金が必要となります。今の国庫にはとてもそのような余裕はありません」


「チッ、バードの商家の小僧にしてやられた感じか。軍事力においてもあっちの方がありそうだな。ん?小僧?…ふふふ、小僧か…」




ライクは寒気を感じた。

「なんか嫌な感じがする。王家、まさか俺を取り込もうと?俺はこの商家の跡取りだぞ?と、なると狙いは…ルリ!ルリが王家に狙われる」

うーん、兄離れ的にはイイんだけど…。残念だけど王家の王子ってたしか、ライクとかバードみたいにイケメンじゃないのよね…。ルリ、激しくメンクイだから…。


「バードどうしよう?ルリを王家に差し出せって言ってくるかも」

これでも平民だから、王家には絶対逆らえない。


「何だと?俺のルリ?」

いつバードの物になったのよ?嫉妬するわよ?


「まぁ、大丈夫でしょ?ルリ、メンクイだから。しかも超メンクイ。王子ってそんなにイケメンなの?」

バードが量るイケメン度だからなぁ。


「社交界なら昔の俺の方がモテてた」

ふーん。つまり、ライクの方がイケメンなのね!


「ルリが大好き、ライクと比較するとどっちがイケメン?」

これがわかりやすいなぁ。


「大きくライクの方がイケメンだな」

憐れルリ。イケメンが好きなのに、よりによってライクよりもイケメン度が低い王子に生贄に…。



予想通り、王家はルリと第一王子(次期国王)の見合い話の手紙を送ってきた。

ルリが焼却処分しそうだったのを危ないところで止め、とりあえず顔合わせくらいするようにうながした。


「ライク兄さまみたいにイケメンなら許すけど、違ったら怒るわよ?」

誰を許して、誰を怒るんだろう?不思議な子だと思う。私が怒られるんだろうか?

ライクみたいにイケメンじゃないのは確定してるから、私が怒られるのかな?


私はバードを侮っていた。

バードの社交界の時の俺=今のライクだった。迂闊だった…。

王子…。そうだなぁ、ライクとかバードとは違った風のイケメンだと思う。


「あ、初めてお会いしました。ルリの母親のリラでございます。お見知りおきを」

と、一応の挨拶をしておいた。以後知らなくてもいいんだけどさ。


うーん、ワイルド系のイケメンかなぁ?

ライクとバードは純粋にイケメンなんだよなぁ。さて、ルリの評価や如何に?


「そうねぇ、もうちょっとスマートなイケメンになったら付き合ってあげてもいいわよ?」

すごいなぁ。王家に上から目線…。


「ルリ嬢に認められるように手を尽くしましょう。私の名前はスツール。気楽にスツールとお呼びください。ルリ嬢の家族を含め」

国王と違って腰が低いなぁ。なんでこんなに違うかなぁ?

母君だろうか?王妃様がきっちりと教育を?うちのルリも教育してほしい…。



「まったく、王家だというのにスツールのやつは腰が低くてなぁ。ルリ嬢の言いなりではないか!まったく…」


「まぁ父上、グチグチ言わないでくださいよ。王家に入れてしまえばこっちのものです」


「あの商家を侮らないようにな」

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