第7話

見合い当日、ルリはライクが出かけるまで駄々をこねていた。


一応の正装。といってもスーツだけどを着て、付き添いはバード。バードの方が交渉が上手いから。私が付き添って下手に婚姻が成立すると大変なことになる。いろんな意味で。

政治的にマズいだろうし、ルリはごねるだろう。


「本日は悪天候の中、侯爵に出向いていただき誠にありがとうございます」

訳:悪天候?出かけたくなかったし?侯爵も悪天候なら家でおとなしくしてろよ。


「いやぁ、ライク君は噂通りお父様にそっくりないい男だねぇ」


「恐れ入ります」

(ライクは小さい頃から俺に似てるんだよ!)


「うちの娘なんだが、親の欲目かねぇ?なかなかいい娘に育ったと思ってるんだ。どう思う?」

(完全欲目だ。うちのルリの方が断然よい)


「ライクがどう思うかですからね。でもライクは普段からうちの妻や娘を見ているんで、目が肥えているんじゃないかと思いますよ?」


「そうそう!バードさんの奥方も美人だと評判ですよね?」

(当然の評価だ!)


「ライク、こちらはディーペスト侯爵閣下だ」


「初めまして、私はただの商家の長男ライクと申します」

(ただの商家じゃないけど、まぁ挨拶としてはこんなもんだろう)


「でなぁ、こっちがディーペスト侯爵家の次女のエミリー嬢だ」


「はあ」

(まぁ、そんなリアクションだよなぁ。リラとかルリの方が美形だし?)


「ライク君、緊張で喉乾いただろう?そこの水でも飲んだらどうだ?」

(明らかにおかしい。水というわりに、澄んでいない!毒を盛るならもっとわかりにくくしてくれ。ライクは帰ってから3日間寝込むんだぞ?)


「はぁ、でも…この水濁ってません?変えてもらっていいですか?なんなら商家から水を今すぐ取り寄せます」

(気持ちはわかる!なんでこんなにわかりやすいんだよ?もっと隠せよ。俺らの苦労を返せ!)


ディーペスト侯爵が呼ぶと、店の人がすぐに来て水を取り替えてくれた。

正直ライクは全く緊張していなかった。侯爵の方が緊張しているようだった。


ライクはどうでもいいから早く帰りたいようだった。


「ライク様のご趣味は?」「ライク様のお好きな色は?」「ライク様のお好きな場所は?」

等、エミリー嬢の質問が正直うっとおしかった。

仕事、と割り切ってココにいるだけで、エミリー嬢には全く興味がなかった。


「はははっ、エミリーのやつはライク君にホの字というやつだな。一目ぼれかな?はははっ」

何が楽しいのだろう?


「侯爵、仕事の商談の時間がありますのでライク共々中座しても構いませんかな?」

(これ以上この茶番には付き合いきれない)


「それならば…仕方がないが…。我が家との婚姻を考えておいてくれ」

(縁はここで断ち切る!)


「それでは失礼します、行くぞライク」

こうしてライクとバードは家に戻ってきた。

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