第4話

翌朝、この家ならよくあることなのかもしれない。

4頭立ての豪奢な馬車と馬のいななきが家中に響いた。


流石にライクもバードも起きた。


「とうたん、かあたん、なんのおと?」

ライクが戸惑うのも当然だろう。今までそんな音とは無縁の生活をしてきたのだから。


「噂では聞いていたんだが…。君たちを悲しませるような事は絶対にしたくないんだ。あの音は多分公爵」

あっ、昔調べたんだった。バードは公爵の落胤って。公爵家に何かあったのかしら?


「籍は入れていないが、君は私の妻だ。それが事実だ。」

改めて言われると恥ずかしい。



バードが出迎えることとなった。

「公爵様、いらっしゃいませ。我が家にどんな用件で?我が商家ならばどんな品でも取り扱っています」


「うむ、心意気やよし!さすが我が公爵家の跡取り!」


「何かの間違いでは?」


「なに、その銀髪と青い眼が何よりの証拠!平民にはいないだろう?」

「恐れながら、公爵家には後継様がいらっしゃったと思いますが?」


「不慮の事故でなぁ…」

(本当は横領の罪で勘当したハズ)


「私は今の暮らしが好きです。満足しております。跡継ぎでしたら他をあたってください」


「公爵の力をもってすれば商家の一つくらい潰せるんだが?」


「できないはずですよ。この商家でしか扱っていないものが多すぎて。ここを潰すと国が潰れるんです。公爵様の賢明な判断を。では失礼します」





「全く、朝から不愉快だよなぁ。まぁ、そのために奔走してたんだけど?」

疲れて見えたのはそのせいなんだ…。


「バードが公爵様の跡継ぎってのは?」


「多分、本当なんだろうね。ほら、ディスプが言ってただろ?母親が別嬪だったんだよ。公爵邸で使用人してた時に手つきだろうね」

子供(ライク)の前なので、ぼかした会話になった。


「本当にこの商家を潰すと国が立ち行かなくなる?」


「あぁ、うちは日用品も扱ってるけど、軍関係とかも扱ってるからね。しかも独占状態で」

本当にすごい人なんだなぁ。と思う。


「あぁ、貴族の奥様が好きな化粧品とか美容系も独占状態だ。ここ潰したら、家庭内戦争勃発だなぁ(笑)」

貴族は面倒だと思う。そうか、そういう角度からも攻めたのか。


「とうたん、だいちょうびゅ?」


「ああ、俺もみーんな大丈夫だ。ライクは心配しなくていいぞ!」




公爵は別の角度から攻め込んだ。

“SI亭”を買収しようとした。つまり、私とライクの居場所を奪おうとした。


「いらっちゃいまちぇ」

「おお、君がライク君か?可愛いねぇ。お爺ちゃんだよ」


「おじいたん?」


「ライク、知らない人について行ったらダメよ!」

と、私はライクをSI亭の中の部屋に入ろうとした。


「君は…元・ステインベルク侯爵令嬢。勘当されて、今は平民。公爵にたてつくとは畏れ多い」


「はぁ、こんなことになると思った。リラ、ライクおいで!」

こんなにこの人が頼りになると思わなかった。


「バード、平民の娘なんかどうでもいいだろう?公爵家を継げば、女なんて選び放題だ」


「あいにく様ですが、私はリラ一筋で10年以上も生きていますし、今の肩書でも女性は選び放題なんですよ。リラしか興味ないですけど」


「とうたん、かあたんのことラブラブなの?」


「そうだぞー。ライクが生まれる前からずーっとラブラブだぞー!」

「きゃーっ」

二人でじゃれて、公爵様は放っておかれてる。


「そ、それにだ。公爵家では使いきれないほどの金が…」


「我が家は商家ですからね。金は貯まるんですよ。使わなくても自分の所から調達すればいいので、出費がないんです。使いきれないというか、そもそも使わないので。あぁ、使用人たちの給与には使うなぁ。そのくらいですね。」


「うーむ・・・」


「そういうわけなので、跡継ぎについては他をあたってください」

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