第3話
翌週、バードの商家に招待されるように遊びに行った。
なんだろう?敵意みたいなものを感じる。
「ライク、迷子にならないように手をつなごう!」
「うん♪」
本当にバードはすごいなぁ。この商家はなんでも扱ってるんじゃないだろうか?扱ってないものあるの?
「ようこそ。リラ、ライク。本当に欲しいものがあったら言ってね。必要とあれば、ね?」
ね?何?怖いんだけど?もし私が宝石欲しいって言っても、OKでそう。怖いわ~。昔ならそんなことなかったなぁ。
何?いきなりバードが目の前を覆う。というか、私とライクを覆う。
「誰だ?吹き矢なんて古風な事したのは?」
バードが怒っている。その手がちょっと痺れているようだ。
「誰か、バードを!手が痺れてるみたい。吹き矢に毒でも塗られてたのかしら?」
私は、バードの背中から矢を抜き、救護室へ向かうバードと共に救護室に持っていった。
私とライクも救護室に行った。
「あーこれ、吹き矢に毒だな。古い手だ。で、犯人捕まえたんだろ?」
というのは、救護室の主任。
「解毒剤があるはずだから、至急持って来て」
主任はのん気にテキパキしてるなぁ。
「意識ははっきりしてるな?」
主任はテキパキ処置をしていく。ライクは泣きそうだ。
「で、犯人は?」
バードは意識もはっきりしてるみたいでよかった。で、そこ聞くんだ?
「笑えるぞ?お前の家族を狙ったんだと。ここには解毒剤が沢山あるし、吹き矢なんて古風な手を使うとはねぇ」
笑えないんですけど。ここに入った途端に感じた殺気の答えか…。
「それなんですけど、ライクがずっと二人で暮らしたいって」
私は、ライクが一生懸命出した答えをバードに伝えた。バードはショックだろうか?
「おかあたんちがうの!おとうたんがいなくなるのはいやだとおもったから、たぶんちがうの!」
バードが毒を受けたって聞いて、ずっと震えてたもんね。
「ライク、ゆっくりでいいの。話してごらん?」
「うん。おとうたんとしぇいかつするのやじゃないよ。でもきゅうにかわるのはこまる。じょうれんのおいたんもいるし、おかみたんだってはなれたくないよ!」
ライクが涙目で一生懸命話してくれた。
「うんうん、わかったよ。それじゃあさ。お店がお休みの日だけココに来るっていうのはどうかな?」
バードの提案。恐らく、ライクの年齢が上がるにつれてココに来る率が上がるのだろう。
「うん、わかった!やくちょくね、おとうたん!」
「うん男の約束だ!いやぁ、お父さんと我が子に呼ばれるのは感慨深いなぁ」
「なーに言ってんだ?お前がしたことなんて種付け…」
「種付けとか言うな!!」
主任とバードで口論する。
「あのー、主任とバードは仲がいいですね?」
「嫉妬?安心して、ただの幼馴染だから。俺はここの主任のディスプ」
嫉妬じゃなくて、口汚いというか、何というか…。
「バードとはこいつが商家にいる時からの付き合いだから、もう20年以上?いやぁ、年とったもんだねぇ。バードの母親も別嬪さんだったけど、バードもメンクイに育っちゃってまぁ。ライク君はどんな子を連れてくるんでしょうね?」
そんな遠い未来の話しないでほしい。ライクとはまだ離れたくないなぁ。あら?私、子離れできてないのかしら?
「俺の傷もそんなに深くないし、ライク~そんな顔するんじゃない!改めてココ案内する?」
「今回はこれでもう帰るわ。ライクもショックだったでしょうし」
「次の店の休みは…今週末か。楽しみに待ってるよ。ライク、男の約束だからな!」
余程ライクと過ごしたいのね。必死さが伝わるわ(笑)。
その週の週末。私とライクはバードの所にお邪魔になった。お泊りという形だろうなぁ。
「いらっしゃーい。待ってたよ、ライク。リラ」
名前を呼ばれたのは久しぶりだ。家を勘当されてから、誰も名前を呼ぶ人いなかったのに…。
「今日は商家の中を案内するよ。欲しいものがあったらすぐ言うんだぞ!」
「あんまり、ライクを甘やかさないで下さいね!ワガママっ子になっちゃいます」
「はははっ、それを君が言うか」
私の黒歴史…。恥ずかしい。ライクの前で言わないでほしい…。
「行きましょう!」
私はライクの手を引いた。そしたら、ライクの逆の手をバードがしっかりと繋いでいた。
「あ、この調理器具!あると便利なのよね~」
「欲しいのか?」
はっ、マズい。ライクに悪影響が出てしまう。
「いや~、あれば便利だな~って感想です。今のままでも十分作れるんですけどねっ!」
「おかあたんのりょうりがおいちくなるの?」
私の料理下手がバレる。仕方ないじゃない!包丁なんて勘当される前は持ったことなかったし。
「はははっ、ライクに言われてるぞ?」
「特に変わらないかなぁ?味は。手間が減るのよ~。つまり、私が楽になるだけ!」
ライクは味の変化を求めていたようだけど、それは無理なのよ~!せめて女将さんの料理を持って帰った時だけ美味しい顔をみせてほしい。
「俺のとこは料理人雇ってるから、母さんは年中料理作らなくていいぞ!」
「かあたん、何するの?」
「うーん、俺の補佐かなぁ?」
え?計算とかできないんですけど?
こそっと耳打ちで「俺は女の子も欲しい」と言われて顔が紅潮してしまった。
「かあたん、おかおがあかいよ?だいじょうぶ?」
「あ…、うん、大丈夫だよ。心配してくれて、ライクは優しいいい子だなぁ」
「えへへ~」
と、ライクは鼻の下を擦った。
「おとうたんに、ちょちぇいにはやちゃちくちぇっちたほうがいい。っておちょわったの」
何を教えてるんだ?全く、バードは。
でも、楽と言えば楽だなぁ…。貴族の時はそんな生活してたはずなんだけど。
「洗濯も掃除もしなくていい。使用人の仕事だからな。母さんは俺の補佐でいいんだよ?」
「わかった~!!」
「うん、ライクは賢くて優しいのか。俺に似てるから、将来イケメンになるのかな?」
ん?バードは自分がモテ男だって自覚してるんだ。まぁ、社交界であれだけ令嬢に囲まれれば…。媚薬まで盛られるし…。
「さ、今日はこの家に泊まるんだよ!」
目の前に広がるのは、ライクに読み聞かせる絵本に書いてあるような豪邸。門から家の入口までどのくらいあるのかしら?
「わー、すごい!お城!!」
「俺の家だよ。お城はもっとおっきいんだよ」
そうだった・・・。私も昔はそんな世界に住んでたんだった。
「「おかえりなさいませ、ご主人様!!」」
「うん、ただいま。こちらは今日から度々泊りに来るって言っておいたよね?俺の妻と子供だ。粗相のないように」
「奥様はこちらへ」「坊ちゃまはこちらへ」
と、使用人は流れるように私達を連れていく。
「かあたーん、ぼくはかあたんとはなれるのヤダ!」
使用人たちの動きが止まった。
「私は使用人頭のエマと申します。早速の粗相失礼致しました。奥様と坊ちゃまは同じ部屋ということで。そのように手配致します」
エマはパンパンと手を叩き、指示を出した。
「大丈夫よ、ライク。男の約束でしょ?バードは嘘吐かないわよ」
うん、多分…。
「かあたん、ココはしろくてなんかチョワチョワする!」
「慣れるしかないよ~。頑張りましょ?」
私は昔の感覚を思い出すだけなんだけど。ライクは…小さいし、すぐに適応するでしょ。
「お食事の時間です。お二人とも食堂の方へ移動してください」
「かあたん、こんなにしろいのにちょくちはべつのところなの?」
そうなんだよね?これだけ広いと食事、ここでできるよね。そう考えるのが普通だよね。
「でも、移動って言ってるし。とりあえず、移動しようか?」
そう言って、私はライクの手をひいて食堂まで行った。途中迷子になりそうだったのでそこらの使用人の方に場所を聞きました。
「バード、ライクがね、部屋広いのに何で食事は別のところなの?って」
「それは俺も思う。無駄だよなぁ。無駄を省くと経費削減…。おっとこんな時に仕事の話は」
そっかぁ、生活の上でなんでも仕事に結びつけちゃって…。だから疲れてるのかな?
夕食は素晴らしかった。美味しかった。マナーは昔の記憶を思い出して何とか頑張った。
ライクは…美味しいものは美味しいとして食べたいようで、マナーも何もなかった。
「俺から提案がある!夜は是非、川の字で寝たい!!俺と母さんでライクをサンドイッチな感じで寝たい!!」
「とうたんか、かあたんがベッドから落ちちゃうよ?」
「大丈夫よ、ライク。見てないのね、すごく大きなベッドだから。父さんと母さんでライクを守るの」
バード…ライクとコミュニケーション取りたいんだ…。
「私はわかったわ」
「とうたんと、かあたん、ちんぱい~」
ベッドはキングサイズかそれよりも大きい特注でしょ?大丈夫よ…。
「ライクがベッドを確認したら使用人さんに伝言を頼むわ」
食後、私とライクは部屋に戻り、ライクは早速ベッドを確認。
「うわー!こんなにおおきいベッドあるんだね。これなら、とうたんもかあたんもだいちょうびゅだね!」
と、ライクは安心したようで私は早速外の廊下で待つ使用人に、その旨を伝えた。
はぁ、ライク産んでから体形変わったと思うんだけど。またバードとベッドに入ると思わなかった。ライクも一緒だけど。
「うわぁ~!!かあたんっ、たしゅけて~!!」
お風呂場からライクの叫び声が、まさか?
使用人に風呂で体を洗われるのが未体験だったライクの叫びだった…。
「ライク~。母さんと一緒にお風呂入る時は母さんがライクを洗っているんだからいいじゃない?」
「ちょれとはなんかちがう~!」
あぁ、使用人さんはアレコレ実況するもんなぁ。頑張れ、ライク!
私もお風呂で使用人の方に洗って頂いたが、非常に心地よかった。
頭皮の汚れも落としていただいたのかしら?頭がすっきりする。
「かあたん、おふろはいってなんかきれい!」
それは…普段はそうね、いい風呂とは言えないから。
それから私とライクはベッドに横になった。広いなぁ。
しばらくすると、バードが部屋に入ってきた。何でバスローブ姿なのよ?パジャマ着なさいよ!教育に悪い。ライクはもう寝てるけど。
「昔見た俺の寝顔の肖像画にそっくりだな(笑)」
あなたの子だから。
「ライクは一度寝たらそうそう起きないけど、騒ぐといけないから私達もさっさと寝ましょう!」
そう言いながらも鼓動はドキドキしてしまう。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「??」
バードに突然キスをされてビックリした。バスローブからは、広い胸板と割れてる腹筋が見えるし。この人に寄りかかることができたらどんなに幸せだろう?
翌朝、ライクとバードの寝顔を見て笑えた。同じ顔をしていた。近くに絵師がいたら間違いなく描いてもらうのに…。
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