第13話 カリファ
「むう。これがその少女が」
そう、少女は言う。見た目からして一〇歳、小学生高学年程度だろう。
「私と同類か。……しかし面倒な事をやりおる。あの悪魔め」
そう、ここにはいない誰かを恨む。
「それで今は厳重拘束されているという訳だな」
「はい。連れてきた警察官は皆死にました」
「なるほど。彼女を目視で見て、死なないのは私だけか……」
と言ったところで、彼女は「いや」と、先ほどの発言を撤回する。
「そこにいる彼女か」
そう彼女は指さす。その先にいるのは由美だ。
「そこに誰かいるのですか? カリファさん」
カリファと呼ばれた少女は何も答えすに由美のもとに行く。
「君も奴の被害者か」
「……私が見えるの?」
「ああ、私も君と、そこにいる少女と同類だからな」
そう、カリファは愛華を指さす。
「愛華は、これからもずっとここにいるんですか?」
「まあ、そうなるだろうね。このままいけばだが」
そう言うカリファの言葉に対して、由美は少ししょんぼりとする。
「大丈夫だ。そのために私が来た」
とはいったものの、由美にとってはカリファのことは信用できないみたいでぽかんとした顔をする。
無理もないだろう。由美にとってカリファは年下の少女にしか見えない。なぜ年下の人にこんなことを言われているのかわからないのだ。
「私が信用できないなら私の素性を明かそう。私はカリファ・シュバリエ。こう見えて一五〇〇年生きている。だから、カール大帝よりも年上という事になるな。まあ、そんなことは置いといて、私は悪魔に不老不死にされた。おかげで一五〇〇年たってもこの姿だ。永遠に威厳なんて身につかない。
私は、不老不死の体を貰った時からどんどん人から逃げ続けたよ。だって、永遠に年を取らないなんて、今でも他人から信じられるわけがないが、当時はもっと信じられなかった。
そのおかげで、すぐに魔女などと言われ蔑まれてきた。
たぶん今までの人生で、牢で過ごした時間は、一〇〇年にも及ぶじゃろう。何しろ、私は死なないのだから。そこから不死の魔女として人体実験も受けたよ。腹を切り裂かれ、肝臓とかを取り出されたこともあった。
そこからいろいろとあった後、明治時代に日本に渡った。日本の方がフランスより、ヨーロッパよりも過ごしやすいと思ったから。ただ、そこからも、決して怪しまれないように過ごしてきた。たが、千九百七十一年に、ついにその存在がばれてしまった。だが、低調な扱いをされ、特に魁皇と化されずに、その知識を生かし、日本政府のブレーンと名乗っていたというわけじゃ。それてじゃ、」
カリファは愛華の耳栓を外す。
「これでこの小娘にも聞こえるじゃろ。……さて、ここからが本題じゃ。実は最近たくさんの人が死んだあと、四人の異能者が現れた。今わかっているのは、重力の能力を持った娘と、幽霊として、人に取り付ける能力を持つ男と、人の思考が読める女じゃ。そいつらを仲間にし、悪魔に対抗するのがこれからのミッションじゃ」
「悪魔に対抗する?」
由美は呑み込めてないということを示唆するような顔を見せる。
「そう、この世界の底、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵にある扉。そこは七人の異能力者がそろうことで開かれる。そこに我々が行って、悪魔を倒しに行くのじゃ」
「……」
「まずは、愛華、貴様は今は外に出るわけにはいかん。このまま待機じゃ。そして、私は幽霊の方を担当する。由美、貴様は重力の娘を連れてこい」
「そういわれても、場所が……」
「場所ならわかる。それは、沖縄じゃ」
「……沖縄」
綾香がな亡くなった場所だ。因縁の地だ。
そして、由美は沖縄行きの飛行機を準備してもらう。だが、すぐに行けるわけでもなく、三日後の飛行機に乗ることになる。その間、由美は実家をのぞいてみることにした。
「はあ……」
家の前に立つ。そして、部屋の中に入っていく。
「お邪魔します」
自分の家なのにそう言ってしまったことに気付き、由美は思わず口を手で覆う。
「由美……なんで?」
そこには泣いている由美のおかあさんがいた。
顔はぐちゃぐちゃで、由美が亡くなったとされる日からの六日間、ずっと泣いていたということがわかる。
由美は、「私は……生きてるよ」そう、脱力しきった声で言った。
そして母親をなでる。だが、その手は母親の頭をすり抜けた。
当然お母さんは由美のことが見えていないし、
だが、返事など帰ってこない。
その事実を確認したのち、
「お母さん、必ず戻ってくるからね」
そう、母親に伝え、家から出た。
由美の使命は、仲間を集めること、今のところ由美の能力でつらく思うことはほとんどないが、ほかの人にはつらく思ってるだろう。そう、愛華のように。
それに、悪魔を倒せたら、綾香の復活もさせてもらえるかもしれない。
少なくとも、お母さんには会えるし、愛華とも不通にしゃべれることになる。
覚悟を決めた由美は、三日後を待った。
三日後、由美は飛行機に乗った。周りにはたくさんの人がいる。どうやら由美の能力も、すべてのものがすり抜けるわけではなく、乗り物には乗れらしい。どういう原理なのかはわからないが、すり抜けるのは横岳で、下にすり抜けることはない。
ただ、スマホも触れないし、機内のテレビもつけることができない。これに関しては不便だなと思いつつ由美は飛行機の中、ただ暇に耐えつづけた。
そして、三時間後、因縁の地沖縄へとついた。
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