第14話 異能者探し

 由美はその沖縄の景色を見て、少し胸をさすった。

 ここであの日、綾香が死んだ。

 その死体を思い出すだけで胸が痛くなる。


 だけど、今はそんなことは考えてる場合じゃない。

 早く、異能持ちを探さないと。


 そして、少しずつ歩いていく。

 やっぱり周りの人には由美の姿は見えないみたいで、少し嫌な気持ちになる。

 ここにいるっていう異能持ちもそんな気持ちなのかな。


 そして、歩いていくうちに、カリファの言ってたことをまとめたメモを見る。

 そこにはその人物は、重力系の能力の可能性が高いらしい。

 という事はつまり、ここじゃない可能性が高い。

 ニュースになりそうな場所。

 そこであることに気付いた。


 沖縄ならもっとニュースに名tぅている可能性が高いという事はここじゃない。


 もっと小さな島の可能性が高い。


 渡名喜島、沖縄で最も小さな島と言われている。

 そこに行けばあるいは。


 そこで、その島への便を探す、


 だが、そんな時に電話が鳴った。相手はカリファだ。


「その人物は渡名喜島にいるとの報告が入った、ニュースでもやっている。そこの人口が一夜にして全滅したと。今、その島への船は出港停止したが、私の権力で何とかする。とりあえず、一二時に船を走らせる。そこに乗れ」

「分かりました」


 そして由美は船に乗り、その渡名喜島へと向かう。



 その島へ向かう際に、船からの景色は素晴らしかった。

 小さな船という事もあって、水をかき分けるように船は進んでいく。

 後々しんどいことになるのだから、今はこの景色を楽しもうと、由美は思った。

 そして、二時間後、船は無事に渡名喜島へとついた。


「ここが……」


 その島の木々は折れていて、見るも絶えないような姿だった。

 そして、近くには自衛隊員の死体があった。おそらく島についた途端重力で押しつぶされたのだろう。

 いやはや、おそろしい。

 今の由美には異能者だからか、重力を感じないが、そうではない人たちにとっては恐ろしい重力なんだろうなと、由美は思う。


 早速開けた場所に出るまで歩いていくと、村が見えた。

 村もひどい被害状況だ。

 家は押しつぶされており、人の死体も転がっている。

 そんな死体を見ていると、あの日を思い出して嫌になる。


 そして少し歩いていく。


「嘘」


 由美はそう呟いた。そこにいたのは綾香だったからだ。




「なんでいるの、由美」


 そう疲れ切った顔で由美に言う綾香。

 その周りの大地は沈んでおり、まるでクレーターのようだった。


「綾香、だよね」

「そう……だけど」

「死んだんじゃなかったの?」


 由美は死体を確かに見たはずだ。


「私は……死んだの?」

「え?」

「私は、あの日、枕投げをして、これからバナナボードをするつもりで……ごめん。あまり覚えてない」


 そう。綾香は頭を抱えながら言った。


「とにかく、気が付いたらここにいたの」

「そう」


 やっぱり由美と同じ感じだ。

 なぜこの島なのかという疑問はあるが、由美だって生き返った場所は地元ではなく、愛華の家の近くだ。

 そこについては細かくはないのだろう。


 それは置いといて、


「綾香、効いて? 私たちはみんな異能というくそ能力を貰ったの」

「くそ能力? どういうことだ?」


「平たく言うと、周りの人たちに被害を及ぼすような能力ってこと。私の場合は透明化で、周りの人に見えなくなるし、愛華の場合は人を殺してしまう鈍い。後は永遠に姿が変わらないまま不老不死というのもある。私たちは自分で自分を殺すことはできないし、人に殺されることもできない」


「意味が……分からないな」

「それは当然だよ。そこで問題なのは、これは永遠に終わらないってこと。だから、悪魔を倒すことが必要になる」


「愛華が言ってたやつか?」

「うん。他にカリファっていう人が他の異能者を探している。で、その異能者が集まったら悪魔界への扉が開く。そこで綾香の力が借りたいってこと」


「そうか……ただ一つ、私多分ここから動けない」

「それは分かってる。だから、その時までここでまつしかない」

「分かった」


 そして、私は綾香と積もる話をした。

 あれから起きたこと。そしてこれまでの顛末などたくさんのことを。


「そう……愛華が……」

「愛華のことは恨まないでほしいの」

「恨んでないよ。愛華は何も悪くないもの。だって、私はもうすでに二〇人以上の人をこの手で殺しちゃってるんだから」


 そう、辛そうに、圧死体を見て呟く綾香。

 本当に、悲しそうで……由美は一瞬人を殺す系の能力じゃないことにほっとした。だが、そのあと、すぐにその思いを取り消した。

 _なんで二人が苦しんでいるのに、一瞬この能力でよかったって思っちゃったんだろう。


 そもそもその能力だって、誰にも存在を引致されないつらい能力であるはずなのだ。


「てか、問題が生じたね。その時にどうやってその海溝に綾香を連れて行けばいいのか……」


 綾香を連れていく場合、船が重力で沈む可能性がある。


「それならいい方法がある」


 急にスマホからその音が聞こえ、由美と綾香はびっくりした。


「我々が研究している薬。これは大量生産はできないが、一時的にその異能を防ぐことが出来るのじゃ。だが、効果は一時間しか持たんがな」

「なるほど……」


 それなら移動できそうだ。だけど……


「ねえ、ならそれをカリファが飲んだら死ねるんじゃ。いや、あなただけじゃなくて愛華も」

「いや、これは不死の能力は消してくれんかった、ただ、私の睡眠欲、食欲などと言ったものを復活させてくれるだけじゃったな。まあ、その時に久しぶりにご飯がおいしく食べれたからよいものとするがの……」


 そう言って豪快に笑うカリファに対して、綾香と由美は苦笑いをする。



「まあ、それhともかく、その綾香はそのまま放置というのはしのびないが、ほかの人物の捜索にもあたってほしい」

「それは……?」

「感情が読める女じゃ。彼女は五島列島のどこかにいる」

「分かった」


 そして通話が切れる。


「綾香には本当に悪いんだけど」

「私のことならダイジョーブ!」


 そう、にかっと笑う綾香。


「私のことなんて置いといてさ、さっさとその感情が読める女を探して、私を楽にさせてよ。その方が私嬉しいよ」

「……そうだね」


 そして、由美は綾香を置いて、五島列島に向かった。

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今日も人が死ぬ、この私の手で 有原優 @yurihara12

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