第12話 投獄
翌日のニュースで、由美の死を知った。
ああ、私はもう一人の親友も殺してしまった。
こうなるなら前もって知らせておくんだった。
私が高校を辞めた理由を。
また今日も人が死んでいく、この私の自分の手で。
だれか私を止めてください。誰か私を殺してください。
もう人が死んでいくのは嫌だ。
私は普通に生活をしていた。その生活が終わってしまうとは考えてすらいなかった。
私はもう、生きている価値などない。
こんな大量殺人犯になってしまった私なんて。
本当に誰か私を殺してくれ。もう人を殺したくはない。
もう、この世にいたくない。
誰か私を殺せる人はいないの?
誰か私をこの世から消し去ることのできる人はいないの?
私はもう、生きたくない。
私は彩香と由美以外にも何人も人を殺してしまっている。
何十人も、何百人も。
本当に生きたくない。
それから部屋で何もせずにいることが増えた。
一日何もしないで部屋の片隅に座ってただ時間が過ぎるのを待つ。
そんな日々が。
だが、ある日、私は無駄だと知りながら願った。
「ねえ、由美を助けて!! 彩香と由美を生き返らせて」
叫んだ!
でも無理だろうな、と思った。所詮この世に神様などいないのだ。
だが、
『分かった』
そう、頭の中に響いた。
何なのだろうか。
分からない。
もうどうでもいいや。そう思って眠りについた。
翌日、私は起きてニュースを見た。すると、大量虐殺があり、死亡者人が三〇〇万にもわたる世紀の大量虐殺だそうだ。
そして、死体の感じからしたら確実に犯人は私。
その瞬間、大いに泣いた。
私のこの能力はすでにもっと残虐なものに進化してしまっていた。
「うわあああああああ」
もうだめだ。自分は死ねないのに、他人は大量に殺してしまう。
なんて嫌な能力なの?
すると、ドアをすり抜けて一人の人物が入ってきた。
「由美……?」
「愛華?」
そこにいたのは由美だった。
なんで? 死んだんじゃないの?
私は思わず由美に抱き着いた。
どういう事か分からなかったが、とりあえず。
「なんで……生きて」
「私の方が訊きたいよ。だって誰も私の存在に気づかないし」
「気づかない?」
そう言えばさっき壁を貫通して入ってきてた。
「由美、幽霊なの?」
「分からない。でも、愛華に触れるし」
「そっか。でも、とりあえず良かった。由美を殺してなくて」
「私も!」
そして再びハグをする。良くは分からないけど、流石に由美をもう一度殺すことはないだろうと、
そして一通り話し終えた後、二人で今の状況について話し合う。
「ねえ、もしかしてさ、これって……」
「うん、私も認めたくないけど」
由美が現れた朝に、人が大量に殺された。この事実から推察することはたやすい。
由美が生き返ったから人が死んだ。
由美を生き返らせるための生贄として人がたくさん死んだんだ。
その事実は私と由美を悲しませるのに十分な事実だった。
「ああ、私のせいだ」
部屋の片隅で一人泣く。
なんでこうなってしまったのだろう。
由美の生を願ったからだめなの?
「……愛華のせいじゃないの。悪魔のせい」
「それは分かってる……けど」
だからって割り切れるわけがない。
何しろこんな状況になってしまったのだから。
由実がなんと言おうと、慰めにもならない。
ああ、死にたい。死ねない。
「由実なら私を殺せる?」
聞いてみる。今の特殊な由実なら殺せるかもしれない。
「嫌だよ愛華まで失うの。それは私が絶対しない。他の解決方法を探そうよ」
「……うん、そだね」
そんな物ないと思うのだけど。
そんな時、窓ガラスが割れる音がする。
これ、前にもあった気がする。
「喜多愛華確保する!」
そう言われて、拳銃を向けられた。見ると制服を着ている。警察なようだ。
遂に私を逮捕する区切りがついたのか。
もはや証拠がないとかアリバイがあるとかじゃあ済まされない状況だしね。
確か、漫画でも、警察が逮捕状無しで秘密裏で強引に逮捕したシーンがあったはずだ。
「ねえ、愛華これって」
由実がそう言ったのにまだ頷く。
そして私は大人しくその人達について行った。
由実は「逃げて!」と叫んでいたけど、私が悪いんだから抵抗するわけには行かない。
すぐさま両手を後手に拘束され、ヘッドフォンを被せられ、目隠しをさせられ、口も猿轡で拘束される。
まさに厳重警戒だ。
コイツラ警察ではないのか?
それならば捕まり損なんだけど。
何も聞こえないし、何も見えない。手も足も動かせなく、声も出せない。
でも、これで誰も殺さないという事が出来るのなら、そんな幸せなことはない。
そう、私なんて、厳重拘束され、監禁されるくらいが一番いいのだ。
そして、着いたのだろうか、歩けと言われて歩かされる。
一人の女性が私の脇を抱えている。
この人は私にガンガン触ってるのだけど、死なないのだろうか。
この女性には死んでほしくないな……。
そして、その女性に促されるまま歩く事少し、ようやく目的地に着いたようだ。
早速手枷が外される。だが、それはあくまで拘束具の変更だけみたいだ。
べッドに寝かされ、手と足を固定拘束され、首元にも枷がつけられる。さらに肌の感じからして、その拘束具は一つだけじゃない。足に五つくらい拘束具がつけられている。さらに手も手首だけじゃなく指にまで拘束具がついている。これじゃあ、指一本動かせないじゃない。
今の私には何も分からないが、たぶん周りから見ると、この世の誰よりも拘束されているのであろう。
ああ、幸せだ。
私はドエムでも変態でもないけれど、でも、人を殺す事との無い生活は幸せだ。
あれから何日もたった。いや、それはあくまでも私の体感時間だ。実はまだ一時間も経っていないのかもしれないし、三日たったのかもしれない。
暇なのは確かだ。
でも私には暇!と怒る権利もない。
っ
足が痛む。何かで刺されたのかな。たぶん実験とかだろう。
私が不死身であることに気が付いたから、ナイフとかで刺してみたのかな。もしかしたら秘密裏に処分しようとしただけかもしれないけど。
でも、そんなことはどうでもいいのだけど。だって、痛みなんて一瞬なのだから。
それで私を殺す方法を見つけてくれたらいい。
それよりも痛みがあったほうが、何もないよりも暇が和らぐし。
ああ、今外ではどんな会話が行われているのだろうか。
外ではどんな会話が繰り広げられてるの?
気になるなあ。私には知る権利なんてないけど。
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