第10話 由美

 あれは急な出来事だった。修学旅行の時に彩香が死んでいた。あの時の彩香の死にざま、そして愛華の顔は忘れられなかった。


 愛華のあの絶望しきった顔が忘れられない。



 それから愛華は私に一言もしゃべってはくれなかった。私が、「ねえ」と言っても、聴いてないふりをしてくるだけだ。もしや、愛華には犯人の目星がついているんじゃっと思った。でもとある事情から私にはそんなことは言えないという事なのだろうか。

 だとしてもやっぱり悲しい。

 私たちは友達じゃあなかったの?


 そして休み明け、学校に向かう。遅刻覚悟でいつもの角で待ってみた。だけど、愛華は一向に現れなかった。

 先制は家庭の事情だと言っていたが、そんなの嘘だ。絶対私に言えない秘密があるんだ。

 だけど、愛華には電話はつながらなくて。

 どうしよう、もう愛華には会えないかもしれない、そんな予感がした。


 私の予感は残念ながら当たっていた。

 愛華は転校してしまった。

 どうやら家族親戚全員が死んだかららしい。

 マスコミに凸られる前に逃げたのだろうか。

 私にはそうは思えない。

 愛華の周りの人間が死んだ。そこには何か関連性があるのではないか。

 愛華に、例の殺人鬼は関係しているんじゃないか。

 もしかしたら、この行為は私を守るためだったのかもしれない。


 それから私は彩香と愛華のいないクラスで一人寂しく生きていた。何をしたらいいのかも、全てがわからなくなった場所で。

 その時、ネットで、ある配信者を見つけた。藍川日向、彼女の動画を見たら、声がまんま愛華だった。

 私は、少しだけ安心した。その中の声が明るかったから。

 でも、すぐにその安心は消えた。聞き続けていると、少し無理をしていると感じた。会いたいと思った。

 だが、どうしたらいいか分からない。

 それから高校を卒業したタイミングで、家を出た。

 愛華に会うために。


 愛華が私を守るために、学校をやめたのは知ってる。でも、守られるだけは嫌だし。やっぱり彩香が死んだ真相が知りたい。

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