第2話 トラウマ
朝、今日は早くに目が覚めた。別に眠たくはないわけではないが、もう眠れそうてはないので起きた。
まだ時間がありそうだったのでスマホをふと開く。するとトップニュースとして残虐殺人事件のニュースがあった。
なんだろうとタッチした。次の瞬間、その行動を後悔した。
その文章がかなりショッキングな物だったのだ。
血が曲がれ、肉骨まで見えるくらい残虐に切り刻まれたと書いてあった。
正直吐き気を感じる。
こんなもの本当に見なければよかった。
スマホの画面をユーチューブに切り替える。あのくそみたいなニュースから気分を切り替えるために。
「ねえ、昨日のニュース見た?」
いつもの通り曲がり角へ来ると、早速由美がそう言った。由美……私のトラウマを掘り返さないでよ。
「うん」
「なんか……凄い……って言ったらなんか違うかもしれないけど……凄かった」
「……うん怖かった」
そりゃあ語彙力を失ってしまうだろう。あんなショッキングなニュースを見てしまったら。
「なんか元気ないね」
「そりゃあね。人が死んでるんだから」
それに文章だけでもかなりのグロさだったし。
それに私は一つ引っかかってしまう。人が死んだタイミングが、私が夢を見た翌日だったことだ。もしかしたら私の夢と関係があるのかと。
もしかしたら私が殺したかも。とかは考えないが……それでも何か勘繰ってしまう。
杞憂であればいいのだが、
「ねえそう言えば、三週間後の修学旅行楽しみだね」
私の暗い様子を察したのか、由美が明るい話題に話題チェンジした。
「うん」
「綾香と愛華と回れるの楽しみだなあ」
「そうだね……幸せだね。私たち」
「うん……ってどうしたの? 急に」
「死の恐怖なんてないから」
「次の被害者は私たちかもしれないよ!」
「ちょっとやめてよ。そんなこと言うの。怖いよ」
話題を戻したら行けなかった。そうだった由美はこういう性格だった。
「えへへ」
「おはよう二人とも」
「おはよう! 綾香」
「ねえ聞いた? 昨日の事件」
「もちろん。私たち道すがらその話をしてたんだ」
「SNSで拡散されてた画像は?」
「画像?」
「うん。見て」
そこには世にも恐ろしい惨殺死体が移っていた。見るだけで吐きそうな。血まみれで顔も分からないような恐ろしい死体。怖すぎて、もう……無理だ。
「もう……やめて」
吐きそうな気分なのを我慢して、そう発した。もう見るのが嫌だ。こんな……こんな恐ろしいものを。
思えばすぐに逃げればよかったのだ。だが、私の中の一介の好奇心がそれを許さなかった。
「ごめん。気分悪くした?」
「うんもうやだ」
「ごめんって」
そして私は机の上でうつ伏せになった。気分が悪く。もう帰りたい気分だ。
この状態で六時間授業を受けるのかと思うと、少し憂鬱な気分になる。帰りたいと言えば嘘になるが、それでも早く家に帰って寝たい。それが今の私の気持ちだ。
結局その日は何とか帰らずに、授業をすべて受け、由美たちに挨拶をせずに一目散に家に帰った。
彼女たちが何も言ってこないということは、私の気分が悪くなっていることなどわかって、そのうえで、そっとしてくれているのだろう。
本当にいい人たちだ、私にはもったいないくらいの。そして、その日はご飯を食べたらすぐにベッドに寝ころんだ。お母さんに、大丈夫? と訊かれたから、よほど私の顔は暗く、厳しい顔つきだったのだろう。
もう寝よう。そして、意識を闇に閉ざした。
「お、お前は誰だ? まさか昨日のニュースのやつか? おい! 聞いてるのか。そうだ。警察がいるじゃないか……」
男はすぐにスマホで110番をうち、警察に電話する。
「助けてください。例の殺人鬼がいます!!! 早く着て、俺を助けてください!!!」
男は自分が電話中に殺されると思っていたが、あんがい律儀に殺人鬼は待っていた。そして、一歩ずつ近づいていく。
「やめろ。お前はもう終わりなんだ。それ以上罪を重ねない方がいいぞ。警察を呼んだんだからなあ」
そう言って、男は自衛のための包丁を持ち、それを突き出し、牽制をする。だが、殺人鬼はそれを警戒するそぶりもなくどんどんと近づいていく。そして、最後には男を、包丁を動かす前に殺してしまった。腹を裂き、心臓が飛び出すような格好で。そして、それから殺人鬼はその場を離れた。
「間に合わなかったか……」
警部の山内は神妙な顔で言う。助けを呼んでいた人をみすみす殺させてしまった。しかもこんな残酷なやり手で。これで二人目の犠牲者だ。傷跡から考えても犯人は同一犯で間違いないだろう。
「しっかりと操作するぞ」
「はい!」
そして、警察たちは捜査を始める……だが、何の証拠も出てこなかった。調べても調べても不思議なほどに。
「おはよう!!!」
由美が私に対してあいさつしてくる。
「今日も遅かったね」
「昨日は早かったでしょ。うわああ」
欠伸をする。眠すぎてたまらない。昨日はしっかりと寝たはずなのに。
「どうしたの?」
「眠い」
「そう……」
その後、色々な話をしたが、昨日の殺人事件のことについては 何も話してこなかった。由美自身も昨日吐き気が出そうになった私を心配しているのだろう。そんな感じがする。
「おはよう!!!!」
彩香が元気よく挨拶をした。由美に続いてハイテンションだなあ。私は眠たいのに。
「おはよう」
「どうした? 暗いねえ」
「眠いの。だいぶ」
「ふーん。それで今回も仕入れてきたよ。死体の写真を」
「彩香……そう言うの不謹慎だよ」
まあよくもここまで手に入れられるものだ。それにまずよく見られるものだ。グロ化ゾウなど出番されないのだろうか。
「主人公は見なくてもいいわよ。由美はどうする?」
「見たーい!!!」
「じゃあほら! あ、愛華は吐かれる困るから向こう行ってて」
「私は吐いてはないから」
吐きそうになったのは事実だけど。
「うわあ、今回も見事にえぐい殺され方をしてるねえ」
「でしょ。えぐいよね」
よくそんな話ができる。人が殺されるのに。そう考えると、段々気持ち悪くなっていく。はああ寝よう。
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