第14話 国王からの期待。

ダグリット公爵とサラ嬢への挨拶を終え、リックとサットはネスト伯爵家の席へと戻る。

席に戻ると下級貴族たちがサットの元へ挨拶にくる。

下級貴族たちは上位貴族に挨拶に行かなければならない。中にはリックに娘を紹介する貴族もいた。

サットとリックは一通り対応を終え、席に着くと会場にラッパの音が鳴り響いた。


「どうやら国王陛下が来られたようだ。」


サットがリックにいうと会場の扉が開かれ、国王陛下が入場してきた。ちなみにラッパの音は国王の入場曲だそうだ。

マッド・リラ・ハイド国王。年齢は50歳くらいだ。鋭い眼光からは国王としての威厳を感じる。

国王は拍手で迎えられ、用意された玉座に座る。


「皆、突然の訪問で失礼した。例年参加はしないが今年の社交会に優秀な子どもがいると聞き来させてもらった。」


優秀な子どもと聞きリックは少し嫌な予感がした。


「まぁ、私のことは気にせず、楽しんでくれ。」


国王がそういうと再び社交会は動き出した。


「リック、陛下に挨拶しに行くぞ。」


「はい、父様。」


サットに連れられ国王の元へ行く。


「国王陛下、ネスト伯爵です。」


「ネスト伯爵、ご苦労。そちらはそなたの息子かな?」


国王が尋ねる。


「はっ、嫡男のリックになります。リック挨拶を。」


「国王陛下、お初にお目にかかります。サットの息子リックです。以後お見知り置きを。」


リックは最敬礼する。


「そなたがリックか。話には聞いておる。」


「話ですか?」


リックは国王に尋ねる。


「ダグリット公爵からな。そなたネスト領を盛り上げるために温泉街とやらを作っているそうだな。」


なんと温泉街計画が国王まで伝わっていた。


「15歳にも成ればどの家の子どもも領地運営に携わるものだが、新たに事業を起こすものは滅多にいない。それもネスト領のために必死になってやっていると聞く。その姿勢私は好きだ。」


国王は嬉しそうに言ってくれた。

国王としてはリックのような子供が将来の国づくりに貢献してくれると感じているからだろう。


「今後もネスト領のため、ハイド王国のために働いてくれ。」


「はっ!」


リックは最敬礼し、返事をする。


「ところでネスト伯爵。リックを商務省でいつから働かせるのかな?」


「はっ、まだ本人には伝えておりませんでしたが領地での温泉街計画終了後にと考えています。」


「うむ、それがよいだろう。」


突然のカミングアウトだ。いずれ商務省で働くことは聞いていたが具体的な時期を伝えられたのは初めてだった。その後少しだけ話して国王への挨拶は終わった。


「では、ネスト伯爵、リック。今後とも頼むぞ。」


「「はっ!」」


国王への挨拶が終わり、しばらく社交会を楽しんだ後、色々あった社交会は無事終了した。

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