第13話 出会いの連続。

ダグリット公爵家の列は少し減ってきていた。

これなら並んでもすぐに挨拶ができるだろう。

ハイド王国の貴族の頂点に立つ公爵家。

リックは少し列から外れて先の方を見る。

ダグリット公爵とその娘の姿が見えた。

ザイル・フォン・ダグリット公爵は髭を蓄えたハーバトン伯爵のようなダンディーな男性だ。風貌からとても威厳を感じる。

そして隣に立ちダグリット公爵の娘はとても美しかった。赤茶色の髪の毛でお淑やかそうな美少女だ。

(なんでこの世界の貴族の娘はこんなにも美人が多いんだ!)


リックは心の中で思った。


そしてついに挨拶の順番が回ってきた。


「ダグリット公爵閣下、お久しぶりです。」


サットが頭を下げる。


「ネスト伯爵じゃないか、久しいな。」


ダグリット公爵も快く迎えてくれた。


「息子のリックを紹介にあがりました。」


「おぉ!この子がリック殿か!息子から話には聞いているよ。」


ダグリット公爵がいう息子とは土木省ネスト支部長のロッドのことだ。


「ダグリット公爵閣下、サット・フォン・ネストの嫡男リックです。お初にお目にかかります。」


「うむ、挨拶ありがとう。娘を紹介しよう。サラである。」


公爵に言われサラ嬢が挨拶をする。


「サラです。兄からリック様のお話しは聞いております。ぜひ一度お目にかかりたいと思っておりました。よろしくお願いいたします。」


公爵の娘なだけあって華麗に挨拶をしてくれた。

美しいの一言に限る。

そしてリックに対してかなり好印象のようだ。


「ダグリット公爵閣下、温泉街計画において多大なるご尽力感謝しております。」


リックは侯爵に感謝の意を伝える。


「いやいや、構わんよ。リック殿の計画。とても興味深く感じた。完成したら是非訪れたいと思っている。」


「ありがとうございます!でしたら完成記念式典にご招待させていただきたいと思います。」


「おぉ!それはありがたい。ネスト伯爵、素晴らしい御子息を持たれましたな。」


公爵は嬉しそうにいう。


「15歳にしてここまでとは将来はとても優秀な貴族、大臣になるだろう。ぜひ、繋がりをつくりたい。」


「えっ、」


サットは思わず声を出す。かなり驚いた表情だ。

リックも話の展開を悟った。

公爵がいうつながり。つまりリックとサラ嬢の婚約だ。


「それはつまり、婚約ということでしょうか?」


サットは公爵に尋ねる。


「うむ、その通りだ。リック殿は将来必ず大成する。ならば先に手を打っておくことが最善だろう。」


「ですが、いきなり過ぎて…」


「ネスト伯爵はうちの娘では不満だというのか?」


公爵はサットに詰め寄る。


「いえ、不満などありません。ありがたいと思っています。」


サットは折れた。これが権力の差である。

この貴族社会では政略結婚が当たり前である。子供に選択肢はない。

だが、サラ嬢は美少女だ。リックとしては嬉しかった。好印象を持ってくれている。

リックはサラの方を見る。

すると顔を赤らめていた。


「サラ、それでよいな?」


公爵がサラに聞く。


「はい、お父様。」


サラはあっさり了承した。


すると公爵が突然笑い出した。


「はっはっはっは、よかったよかった。無事に婚約できて。」


「えっ、一体…」


サットは困惑していた。


「いや、ロッドが温泉計画の応援要請を直接王都まで頼みにきていてな。その際にサラはロッドからリック殿の話を聞いていて、その後私にリック殿の話をずっとしていたのだよ。同じ15歳なのにすごいと、」


公爵が訳を話し始める。


「私の娘にすごいとおもわせる男。それほどの男であれば婚約者にしてもよいと思っていた。今日実際にみてそれをより感じた。娘も満更でもないようだしな、」


「はい、今日お会いして、リックさまの聡明さ、あとかっこよさに惹かれました。」


サラも口を開いてそう言った。


「みたいだ。リック殿、よろしくな。」


こうして突然リックに婚約者ができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る