第10話 王都は都会だな。
北区の貴族エリアに馬車は入る。
周囲は立派な屋敷が建ち並ぶ。路地には多くの馬車が行き交い、衛兵が警備のために列を成していた。北区の中でも王城に近いエリアに上位貴族の屋敷が置かれ、離れていくにつれて下位の貴族の屋敷が置かれる。
ネスト伯爵家は上位貴族になる為、比較的王城に近い場所に屋敷がある。
リックは馬車から各屋敷を見ていると馬車が止まった。
「旦那様、リック様、屋敷に到着しました。」
外からセバスの声が聞こえ、リックが見ていた方とは逆の扉が開かれる。
どうやら反対側にネスト家の屋敷はあったようだ。
リックは馬車から降りる。
「えっ、これがネスト家の屋敷ですか!」
リックは思わず声が出る。
なんとネスト伯爵家の屋敷は領都バンにある本邸よりも大きかったのだ。
「リック、驚いただろ。」
「は、はい、まさかこんなに大きいとは…」
「まぁ、公爵家と比べれば小さいがな…」
「えっ!一体公爵家はどれほどの!」
サットの言葉にリックは驚きを隠せなかった。
「王都の屋敷は各家の威厳みたいなものだ。領地は離れているから直接各家の力を見ることが難しい。」
「なるほど。」
リックは納得できた。
王都の屋敷には貴族の往来も多いという。各家の外交窓口の機能でもある。
「まぁ、中に入ろう。明日は社交会だ。ゆっくり休もう。」
「はい、父様。」
サットとリックは屋敷に入ってこの日はゆっくり休んだ。
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次の日、社交会が行われる為いつもより少し早く起きた。身支度をする為である。
貴族の身支度は普段でも時間がかかるが、今日はこの日のために用意した貴族服に着替え、髪の毛もセットする。朝食を済ませ、馬車へと向かう。
サットは既に馬車の中で待機していた。
「父様、おはようございます。」
「おはよう。いい感じに仕上がっているな。」
「ありがとうございます。」
サットはリックの姿を褒める。
リックが席に座ると馬車は会場に向けて動き出した。
「今日の社交会はどこが会場なのですか?」
「会場は中央区にある、迎賓館だ。」
「迎賓館ですか、」
迎賓館。このハイド王国に訪れる他国の王族や貴族を迎える専用の場所である。
そして今日行われる社交会は特別に使用が許可されるという。
「今日行われる社交会は別名、お見合い会と呼ばれている。」
「お見合い会ですか。聞いていた内容そのままですね。」
リックは特に驚きもしなかった。事前にそのような話は聞いていたからだ。
馬車は中央区に入った。
王城や貴族院などがあるこの国のまさに中心地である。
馬車からは王城が聳え立っているのが見える。
「もうすぐで迎賓館だ。リック、今一度身だしなみを整えるように。」
「はい、父様。」
そう言われ身だしなみを再度チェックする。
そして窓から外を見ると立派な建物が正面に見えた。迎賓館だ。
他国の要人を迎え入れる場とだけあってかなり豪華なつくりである。庭園もかなり広い。
馬車は敷地内に入り、正面玄関の前で止まる。
「リック、では行くぞ。」
「はい!」
こうして新たな出会いが待ち受ける社交会が始まるのであった。
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