第6話 土木の行政機関ってすごい。

リックはセバスと共に土木省ネスト支部へと向かった。

土木省は各エリア支部を置いている。

ここでこの国について説明する。ネスト伯爵領はハイド王国の南側に位置する。南側エリアのちょうど中心にあるネストに支部が置かれている。また、ハイド王国には土木省の他にも各省が支部を置いている。土木省ネスト支部はあくまでその中のひとつである。

ネスト支部ではこのネスト領や南エリアの土木事業を一手に担っている。本部は当然王都にある土木省本庁である。


土木省ネスト支部は屋敷から馬車に乗って数分の場所にある。

建物は3階建てで土木なだけあり質実剛健といった作りだ。

リックとセバスは早速中に入り、支部長との面会にのぞんだ。

案内されたのは支部長室、中に入ると20代前半くらいの若い男性が出迎えてくれた。めちゃくちゃイケメンだ。


「お待ちしておりました、リック殿。土木省ネスト支部長のロッド・フォン・ダグリットです。」


「お出迎えありがとうございます。ネスト伯爵家サット・フォン・ネストの嫡男、リック・フォン・ネストです。」


「ご挨拶ありがとうございます。ではお座り下さい。」


リックとロッドは互いに席に座る。

リックはここであることに気づいた。

ロッドの身分についてである。名前と家名の間にフォンが入っていた。フォンが入るのは貴族のみである。



「ロッド殿は貴族のご子息ですか?」


リックは尋ねる。

するとセバスが焦った顔をしてリックの耳元で話しかけてきた。


「ロッド様はダグリット公爵家のご嫡男です。」


「えっ!」


リックはセバスの言葉にかなり驚く。

相手はまさかの貴族の頂点に立つ、ダグリット公爵家のしかも嫡男、つまり次期当主であったからだ。


「ダ、ダグリット公爵家のご嫡男殿とは知らず、失礼致しました。」


リックは急いで謝罪をする。


「リック殿、頭をあげてください。私は今、土木省のネスト支部長という立場です。またダグリット公爵という訳でもありません。」


「は、ですが…」


「お気になさらず。今日こられたのには理由があると思います。それを聞かせてください」


ロッドは淡々としていた。

それにしても何故次期公爵でもあるロッドがこの土木省ネスト支部長をしているのか不思議でたまらなかった。


「わかりました。その前にロッド殿はなぜ支部長をされているのですか?」


リックは思い切って聞くことにした。


「それは父が土木省の大臣だからだよ。大臣の息子は家長が大臣在任期間はその省の行政官として務めなければならない。それでたまたまネスト支部長をしているということ。父は財務省の大臣も兼務してるから財務省ネスト支部長も同時に兼務してるよ。」


「なるほどですね…」


リックは初めてそのような制度があることを知った。サットも商務大臣を務めている為、いずれリックも行政官として商務省で働かなくてはならない。


「まあ、僕の話はここまでにして、本題に入りましょう。」


「はい、よろしくお願いします。」


こうして土木省との話し合いが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る