第2話 いきなり仕事です。

この世界での僕はリック・フォン・ネスト。

ネスト伯爵家の長男である。

父は現伯爵であるサット・フォン・ネストで40歳。この国の商務大臣も務めている。母はナリア・フォン・ネストで38歳だ。ナリアはターナ侯爵家出身である。

この2人から生まれた子どもは僕だけで次期領主である。

次期領主ということはこのネスト伯爵家及び領地の運営をいずれやらなければならない。

市長をやっていたこともあり、ワクワクする。


そうこうしていると部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。


「どうぞ!」


リックは入るように言う。

扉が開き入ってきたのは執事のセバスだ。

セバスはこのネスト家の筆頭執事でサットの秘書も務めている。


「リック様、旦那様が執務室へいらっしゃるようにと。」


「セバス、わかった。ありがとう!」


リックはすぐに執務室へ向かった。


リックは執務室の扉をノックする。


「入りなさい。」


中から声が聞こえ、扉を開け中に入る。


「父様、失礼します。お呼びでしょうか?」


父であるサットは窓から外の庭園を眺めていた。

そしてこちらを向く。

サットは40歳とは思えないほど若く見える。

身長も高く、イケメンだ。


「リック、呼び出してすまない。まあ、座るといい。」


リックは応接用のソファーに座る。サットはリックの向かいへと座った。少し深刻そうな顔をしている。


「リック、呼び出したのはお前が次期領主であるからだ。」


「はぁ、でもいきなりですね。」


次期領主として呼んだということでリックも少し背を正す。


「実はこのネスト伯爵家の経営、領地運営があまり上手くいっていないのだ。」


突然のカミングアウトだ。と言うよりも転生したばかりの僕にとっては衝撃だ。


「一体、どのような状況なのですか?」


リックはサットに尋ねる。


「大きくは2つ。人口の流出、産業の衰退だ。このネスト領は炭鉱で栄えてきた。しかし、近年は採掘量も減っている。それに伴い仕事も無くなり、ほかの領地に出ていってしまっている。」


「なるほど、状況はかなり深刻なのですね。」


リックはすぐに状況を理解した。

前世で市長なだけはある。

このような事態は前世でも起きていた。

なかなか次の産業を見つけ出せない、できなかったことにより人口が流出していく。

解決策はひとつだ。


「では、父様。次の産業を早急に見つけましょう。」


「な、なんだと!」


リックの言葉にサットは驚く。

驚くのも無理は無い。実はこの世界、産業や文明は前世の世界の中世前期頃のヨーロッパのような世界である。

そう簡単に次の産業が見つかるはずもない。

だが、リックとしては市長として改革を行なってきたこともあり、自信があった。


「父様、僕にこの件任せていただけませんか?」


「リックにか?まぁ、いいだろう。やってみなさい。」


「ありがとうございます。」


サットは許可を出す。

その後、少しサットと話をして、リックは直ぐに自室へと戻った。


「よし、まずはこのネスト領を調べてみよう」


こうしてリックの最初の改革が始まるのであった。

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