リボンが舞う

街中を車で走っていたら猫が飛び出してきて前の車の下に入った。

アッと思ったが、次の瞬間車の下から飛び出して走り去った。

私は猫が無事だったと思い安心した。

猫は赤いリボンを引きずっていた。

良く見てみると、リボンだと思ったのは内臓だった。

あれではすぐ治療しても助からないだろう。

嫌な朝の始まりだった。


以前の事を思い出した。

やはり車に乗って、信号待ちをしていた時。

信号が青になって走り始めた瞬間、最前列の車の窓から何かが投げ捨てられた。

なんとそれは数匹の子猫だったのだ。

そして、その子猫は私の前にいた2台の車が轢いてしまった。

猛スピードで逃げた車を、轢いた車がニ台追いかけていった。


驚きと怒り。

でも突然スッと醒めた。

醒めたというより諦めた。

そんなものなのか・・と。

そんなものなのさ・・と。


私はアメリカがイラク、アフガニスタンを空爆したのを知っている。

ロシアがウクライナに侵攻したのを知っている。

イスラエルのガザ地区攻撃を知っている。

どれも正しい事だとは思っていなかったが、私は何の行動もしなかった。

空爆の結果として、数万人のイラクの人民、アフガニスタンの人民の死があることを知っていたのに。

ウクライナの罪のない人の死を知っていたのに。

ガザ地区の家族の苦難を知っていたのに。

そこに老若男女の理不尽な死があることを知っていたのに。


そんなものなのさと諦めていた。

次はもしかしたら北朝鮮、イラン、台湾そして次は・・・

赤いリボンが舞うことだろう。

数多くの赤いリボンが・・・


それに何の行動もしないであろう自分。

繰り返す歴史を傍観するだけ。

十年前、百年前、千年前にも同じような事が有ったから、これからも繰り返すのだろう。

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