血を吐いた事があるかい
1.血を吐いたのじゃ
ワシが最初に血を吐いたのは25歳の頃じゃったから、血吐き歴数十年じゃ。
最初はもー死ぬかと思ったが、しばらくすると慣れてしまって何とも無くなるのじゃ。
それが、いつじゃったかのう、色々体調が悪い時トイレに行ったんじゃ。
用を済ませてケツを拭いて、つい確認をしたら何と緑色なのじゃ。
胆嚢・脾臓という普通はどこにあるか解からない臓器の故障が頭に浮かんだ。
あーもう駄目だ、もー死ぬ、子供は当時5歳2歳0歳だから俺の顔は覚えていないだろうなー。
保険はどこにいくらあったかなー と尻を出したままぼーっと考えていたのじゃ。
あの時、頬を暖かい物がツーと流れたが何じゃったのかのう。
しかし、突然気づいたのじゃ。
昨日胃の調子がひどく悪くて、緑の胃薬サクロンを5袋も飲んだ事を。
それからワシは大正漢方胃腸薬に変えたのじゃ。
あれだったら茶色だからナニの色と混ざっても安心じゃからのう。
わはははは
2.胃カメラを飲むのだ
血を吐きはじめてしばらくして病院から胃カメラを飲めという命令が下ったんじゃ。
以前はまだ胃カメラは巨大で親指以上のの大きさがあったのう。
何だかプラスチックのドーナツみたいな物を咥えさせられた。
喉に麻酔を吹き付けて、しばらくするとベッドに横向きに寝かせられた。
なんと、そのドーナツの穴から喉に巨大な胃カメラを挿入しようとするのするのじゃ。
それがなかなか入らない。
横向きになったワシを看護婦が動かないように押さえつけていたんじゃ。
ふと気づくとワシの横腹当たりに何かプニュプニュした物が当たっている事に気付いた。
おおう、これはもしかしてオッパ…と、そちらに気を取られたとたん、禍禍しい胃カメラはずるずると喉の中に入っていったのじゃ。
あれは作戦だったのだろうと今でも思っている。
しかーし女の患者にはどうするのだ、もしかして男の看護士がぷにゅぷにゅとナニを・・・・
モニターを通し胃の中を涙目で見たのだが、やっぱり血だらけだった。
胃の上部を見るため胃カメラの方向を変えるんじゃが、胃袋に押し付けながら曲げていくんじゃぞ。
内臓が引っ張られる感じは初めての経験じゃった。
なかなか経験できる物ではないぞ。
ムハハ
3.断食なのだ
と言う事で、神経性の胃潰瘍と診断されたワシは即刻入院を宣言された。
仕事が忙しかったので、入院できないと遺憾の旨を伝えたがなかなか聞き入れられない。
なにしろ結構な出血じゃったからなー。
まあとにかく入院できないと断言したのじゃ。
すると、3日間の断食・断飲を申し渡された。
胃の中が傷だらけだから、食い物どころか水も飲むなと言う。
点滴で水分と栄養を補給しろというのじゃ。
ワシはそれに耐えた。
実に頑張ったぞ。
空腹感は2日目位から無くなったが、喉の渇きがつらかったのう。
3日目になると、まったく気力が無くなって昼間からテレビをぼーっと見ていた。
こんな事なら入院すれば良かった、とうっすら考えていた。
さてさて、テレビというのは食べ物飲み物のコマーシャルが実に多い。
特にコーラとかビールだと、コップに水滴がふつふつとついていたりして実にたまらんかった。
ワシはテレビを見るのもつらくなって、現場に行くといってふらふらと外に出ていった。
時は春。
暖かい日差しがワシの体を柔らかく温める。
ワシは車を止め、ふらふらと売店の中に入った。
コーヒー牛乳とアンパンを買い、よろよろと近くの川の土手に向かった。
ぽかぽかとした春の日差しを浴びて、ゆるゆると流れる静かな川面を見ながらアンパンをかじりコーヒー牛乳を少しずつ飲んだ。
それはじんわりと身体に染み込み、なんともうまかったのう。
その時ワシは静かーな気持ちになって、胃や身体が少し柔らかくなったような気がした。
うん、胃は直ったと思ったのじゃ。
それからもちょこちょことは血を吐いていたが、気の持ちようで少しづつ快方に向かって
いった。
今は血を吐くことはないのう。
辛い事が少なくなった訳では無いんじゃがのう。
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