第7話 11年目 その2
朝の短い散歩が終わった後、男はいつも少年に簡単な勉強を教えてやっていた。しかしやってみるとどれも上手くいかない。文字の読み書きを教えようと思って本を与えても、2、3ページめくってみたところですぐに飽きてほっぽり出してしまうし、数字や幾何学の類にも全く興味を示さなかった。
音楽を教えるために笛を渡しても、手にとって何回かひっくり返して眺めただけで、すぐに机に置いてしまう。絵を描かせるつもりで筆と絵の具を渡してみても、目の前の紙に何かを描くことはなく、絵の具を手や顔に少し塗ってみるだけで終わってしまう。だからといって化粧に関心があるというわけでもないようだ。行きずりの行商人から買った化粧道具は、箪笥の上で、ほこりをかぶったまま忘れ去られている。
少年が唯一興味を持ったようなのが料理で、男がパンを切り分けたり、サラダ用の野菜を煮込んでいたりすると、隣にやってきて配膳や片付けを手伝ってくれるようになった。しかし、男が礼を言ったところで何の反応も返ってこなかった。相変わらず可愛くない奴だ、と思ってしまう。
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