第5話 あ! やせいのネズミがとびだしてきた!
翌朝、俺は鳥のさえずりと共に目が覚めた。
天気は晴れ。澄み渡った青空に朝日が射し、青々と茂る草原を爽やかな風が吹き抜ける。
なんとも清々しい朝である。
俺はうーんと伸びをして立ち上がる。
野宿なんて初めてだったが、疲労がたまっていたせいかぐっすり眠れ、だいぶ気力が回復したように感じる。意外とタフなのかもしれない。
「喉が渇いたし、腹も減ったな……」
昨日の夕方からなにも飲み食いしていないことに気づくと、急激に空腹感に襲われる。
差し当っては水の確保だ。俺は立ち上がり、周辺を散策することにした。
水源を探すために小高い丘に登って周囲を見渡すと、昨日は暗くて気づかなかったが、遠方に城壁のようなものが見えた。おそらくそこに人間の暮らす町があるのだろう。
「よし、水分補給したら行ってみよう」
次の目標を定め、さらに散策すること数分。ついに小さな川を見つけた。
俺は駆け寄り、水を少し掬ってみる。川の水はひんやりと冷たく、透き通っていて変なにおいもしない。
思い切って一口飲んでみる。
う、うまい!!
冷たく、どこかほんのりと甘く感じる川の水はとても美味しく、乾ききった俺の喉を優しく潤してゆく。
俺は渇きに抗えず、小川に顔を突っ込んでガブガブと飲んだ。
あぁ……染みわたる……
空腹が解消されたわけではないが、とりあえず水を大量に飲むことで体力が少し回復した。
「よし、じゃあ町に向かってみるか」
俺は小川に別れを告げ、城壁がみえる方角に向かって歩き出した。
※
「しかし、のどかだよな……滅亡の危機に瀕してるって本当なのか?」
小川があった場所から小一時間ほど歩いただろうか。
途中で舗装された街道らしき道をみつけ、道なりに歩いているのだが、これまで人間どころか獣1匹見当たらない。
破壊されたり、戦闘があったと思しき痕跡もなく、ただただのどかな風景が続くのみ。
「いや、いまの俺の装備で獣や野盗に遭遇しても困るんだけどな」
裸装備も同然の状況で歩き回るのは心元なさすぎる。
早く人里に行きたい。はやる心で、自然と早足になる。
だが、さらに30分ほど歩くと、周囲の景色は鬱蒼とした木々が生い茂る山道に変わった。
進むほどに薄暗くなっていき、先ほどののどかさとは一転、不気味さを増していく。いかにもモンスターがでそうなロケーションである。
そう、モンスター。
女神からこの世界の詳細を聞けていないので実際のところは不明だが、魔王がいるならばモンスターも当然いるだろうと思っている。女神も「異世界ファンタジー」とか言っていたし。
そうなると今の自分の戦力、つまりステータスやスキルを把握したいが、実はまだどうやったら確認できるのか判明していない。
道すがらいろいろと試してはみた。「ステータス!」とか「メニュー!」とか叫んだり、頭の中で強く念じたりと、思いつく限り試してみたが、ステータスウィンドウが目の前に現れたり、システムメッセージが俺の頭に直接響いたり、なんてことは一切なかった。
ということで、いま俺の戦闘力は例の3回ポッキリなチート能力以外、完全に不明。
そして重ねて言うが、いまの俺の装備はスウェットのみ。
ぶっちゃけ、野生のタヌキにだって勝てる気がしない。
何かにエンカウントする前に、早く町について装備を整えたい!
しかしそんな切なる願いもむなしく、俺は街道の真ん中で何かを漁る、3匹の獣とバッタリ遭遇した。
「ギギギ、キィィィィ……」
獣はなにかを漁るのに夢中で、まだ俺のことに気が付いていない。
しかし、俺は突然のエンカウントに体が硬直して動けないでいた。逃げる? それとも先制攻撃してみる? どうしよう!
とモタモタしているうちに、中央の獣とバッチリ目があった。オワタ。
獣は、鋭い前歯に長い尾を持つ、まるでネズミのような姿をしている。だがネズミより数倍は大きい。四つん這いの姿勢で俺の膝丈ほどあり、後ろ足で立ち上がれば俺の腰ほどもあるだろう。
そいつが3匹。漁っていたのはウサギの死骸かなにかだろうか。口や前足が血に濡れている。巨大ネズミはウサギよりはるかに食いでがありそうな俺にターゲットを変更し、獰猛そうな低い鳴き声をあげながら襲い掛かってきた!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただき誠にありがとうございます!
執筆の励みとなりますので、是非「☆☆☆」評価やコメント頂けましたら幸いです
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます