第14話 ビニール
賃上げ云々で話は逸れてしまったが、ローランの頑張りのおかげでスライム由来の〝ビニール〟が完成した。
ビニールの汎用性は高い。柔軟で密封や防水にもつかえる優れ物だ。透明感を生かせば、さまざまな商品が誕生するだろう。
手始めにローラーで薄くのばしたビニールで、農業用のビニールハウスを建てた。温度低下を防げる施設の誕生により、西部の気候と異なる野菜やフルーツの栽培が可能になった。
本来ならば種や苗から育てないといけないのだが、そこはナノマシンを利用して、細胞からある程度は成長した苗や株を利用した。
ナノマシンの原材料である清銀貨が手に入ったからできる芸当だ。
ナノマシンは万能だが、なんでもかんでも培養・複製はできない。それに原材料となる清銀貨のもととなる鉱物が稀少で、採掘量自体も少ない。ナノマシンの量が限られているので、大きな植物の培養は難しい。手の平に収まるくらいの苗や種子が限界だ。
ズルした分、ここから先は地道に交配させて品種改良をする予定だ。
ハウスのついでに、ビニールを利用して湿度の保てる小屋も建てた。こちらはキノコの栽培専用。
俺の領地は類を見ない野菜栽培の一大拠点となるだろう。
生産しすぎた野菜は、魔道具で再現したフリーズドライマシンで商品化しよう。湿気らないようビニールでパックした乾燥食料だ。
領地開発に問題があるとすれば水源だ。
近くに水源が無いのはネックだが、トンネル事業で培った技術をつかえば井戸くらいは簡単に掘れるだろう。なんせ魔法剣を応用した掘削機があるのだ。ちょいと井戸用に改造すれば、固い地盤も楽々貫通できる。
農業に関してはこれで十分だろう。
そろそろ鉱脈調査の準備も終わった頃だし、本格的に採掘事業に着手しよう。
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