第3話 調査の前に
鉱脈調査へ行く前に、いくつか仕事を片付けておこう。
外地の開発予定と新たに建てる住宅に関する指示だ。
内地に建ててある住宅はどれも簡易版。なので最低限の設備しか備えていない。
一応の拠点は完成しているので、これからは本格的な住宅を建てるつもりだ。その前に、この惑星の住宅事情を詳しく調査しないとな。住宅開発の方針を定めるのはそれからだ。
そんなわけで、住宅事情の調査・視察も兼ねてガンダラクシャへ買い出しに出かけることにした。
メンバー選定をとうしようか考えていたら、ティーレが声をかけてきた。
「あなた様、今日はどのようなお仕事をなされるのですか?」
どこで覚えたのだろうか、やたらと二の腕で胸を寄せて魅了してくる。露骨な色仕掛け? まさかね……王女様がそんなことするわけ…………。
そう思っていたら、もう一人の王女は前合わせの胸元を大胆に開いている。
「ラスティ様、今日のお仕事は?」
一体何をしたいんだ二人とも。……理解が追いつかない。
いや、これは幻だ! きっと心の奥底で眠っていた、男としての本能が目覚めかけているのだ!
いかなる時も紳士らしく……。
心の奥底でざわつく感情を抑えつつ、妻たちを見直す。
俺の妄想ではなかったようだ。
二人のして、大胆に胸を強調している。一体何があった!
頭を冷やしてから、ティーレとマリンに今日の予定を話す。
「領民に新しい住居を建てようと思ってね。最初の頃に建てたのは簡易的な建物だったから、もっとしっかりした住宅を建てるんだ。最初にしっかりした住宅を建てておけば、手直しする無駄もないだろうからね。もちろん、利便性も追求する。間取りや設備にもこだわりたい。だから参考にガンダラクシャへ見学に行くんだ。視察って言ったほうがしっくりくるかな?」
庶民の生活様式を調査するので、王族であるティーレやマリンはついてこないと思っていたのだが……。
「視察は大事ですッ! 我が国の民のこと、王族として知っておく責務がありますッ!」
「私も、人族の生活様式を学びたいと思いますッ!」
未来の妻二人は意欲的だ。
「遊びに行くんじゃないし、あまりおもしろいものじゃないぞ」
「問題ありません。あなた様の行く場所が、私の居場所です」
「そうです。どのような場所でも、ラスティ様についていきます!」
詳しい事情はわからないけど、熱意だけは伝わった。これ、絶対についてくるパターンだ。
ちらりと王女二人の護衛を見やる。
ベルーガサイドはアシェさんが護衛を担当して、魔族サイドは新たに加わった近衛騎士が担当。
魔族の近衛騎士はガモウという名で、プルガートで蟲事件を解決した際に協力してくれた一人だ。
黒髪銀眼で色白。三〇代とおぼしき男性で厳めしい顔をしている。そこそこ長い髪をオールバックにしている。ナイスミドルだが、気軽に声をかけずらい印象だ。魔族らしい目立った特徴はなく、自分から名乗り出なければ魔族だとバレないだろう。
アシェさんは眉間に皺を寄せて顔を振り、新たに加わった魔族の騎士ガモウは引き結んだ唇をひん曲げて、答えてくれた。どちらも胃痛持ちっぽい神経質な性格に思えた。
この惑星の護衛はストレスが多そうだ。あとで二人にご褒美を出さないとな。
当初の予定ではスパイクやウーガンと一緒に見学に行くつもりだったので、メンバー変更は大きな誤算だ。
まあいい、ロイさんのところに顔を出しがてら賃貸物件でも見せてもらおう。
見学予定も決まったことだしガンダラクシャへ行くか。
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