24話

 目が覚める。外は明るかった。あぁもう朝なのか。

 私の耳にジュワッとなにかをフライパンで焼いている音が届く。すんすんと匂いを嗅ぐ。これはウィンナーかな。香ばしい香りが漂っている。

 「あ、おはよ」

 チラッとこちらを見て、私が起きたのに気付いた椿木はひらひらと手を振る。

 彼女の顔を見て、あぁ今日はお泊まりをしていたんだなって強く実感する。友達の家でお泊まりは想像以上に楽しかった。

 陽キャはこういうことを毎週しているんだって思うと羨ましいなって感じてしまう。小学校、中学校ってこういう楽しさを味わってこなかったら尚更。多少の疲労感があるのも否めないけれど。でもそれを隠してくれるくらいには楽しさが大きい。

 「ご飯できたらそっち持ってくね」

 「あ、ありがとうございます」

 寝起きの頭でとりあえず感謝する。髪の毛を触る。昨日髪の毛をまともに乾かさなかったからかぼさっとして、グチャっと絡まっている。変に戻そうとすると髪の毛が大量に抜けてしまいそうな気がして、そっとそのままにした。

 「なにか手伝いましょうか」

 「お客さんはそのままゆっくりしていてくださいな〜」

 ふんふふーんふーんふーふふーん、と鼻歌を歌いながら、器用にフライパンを触る。

 「とはいえ、昨日もやってもらいましたし。なにからなにまでやってもらうのはちょっと申し訳ないと言いますか……」

 泊めてもらっている立場でありながら、昨日も今日もお世話されっぱなし。すべて与えてもらう一方でなにも返せていない。友達はそういうのを気にするものじゃないのかもしれないけれど、やっぱりどうも気になってしまう。

 「大丈夫、大丈夫。昨日やってもらったことあるから」

 「昨日……やってもらったこと……? ですか」

 思い当たる節がない。なにかしたのだろうか。うんうんと悩んでも答えは出てこない。記憶にないものほど怖いものはない。知らないうちになにかしていたのだろうか。

 「そ、だから大丈夫。むしろ私が返さなきゃって感じ。それに私がやりたくてやってんだから気にしなくて良いんだよ。人の善意は素直に受けとっておくべき〜」

 そう言いながら、コンロを止めて、換気扇も止める。そして皿を持ってこちらにやってくる。

 机上に朝食を並べた。

 「はい、完成。どーぞー」

 ウィンナーにスクランブルエッグ。白米に味噌汁。世間一般的な和な朝ごはんという感じ。

 いただきますと声を出してからぱくりと食べる。

 日本人っぽいなーなんて馬鹿みたいな感想を持つ。

 「美味しい?」

 「美味しいです」

 「そっか。うんうん、良かった」

 えへへ、と笑う椿木。なんだかいつもより格段に可愛く見えたのは朝だからだろう。

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