13話

 私は陰キャちゃんから過去の話を聞いた。


 ゆっくりと淡々とでも噛み締めるように。


 口をずっと動かして疲れたのか、今彼女は毛布に包まってすーすーと可愛らしい寝息を立てて眠ってる。

 彼女の白い頬を私は人差し指で優しく触れて、撫でる。


 今までつらい過去を背負ってる風な態度を見せる人間は揃いも揃って私ほどの過去は背負ってなかった。

 親と大喧嘩をしてまともに口を利いてないとか、彼氏と別れたことがあるとか、こう言っちゃいけないのかもしれないけどしょうもないものばかりで、お前の努力でどうにでもなるだろと思わず言いたくなるようなものだらけ。

 だから心のどこかで藤花もそうなのかなと思ってた。

 だから軽く聞いてしまった。


 実際には軽さなんて微塵もなかった。

 他の子と比べて二倍も三倍も重たい過去を背負ってた。

 重たくて、立ち上がるのすら苦労するようなものだ。


 話を聞いてた私は途中からどんな反応をすれば良いのか、どんな顔をすれば良いのか一切わからずに、ただ頷くだけのマシーンと化してた。


 罪滅ぼしじゃないけど、悪いことをしてしまったという自覚はあるから。

 主に、話したくないであろうことを体調が悪い中、語らせてしまったという点。

 せめて彼女がもう一度目を覚ますまではこの場に留まっておこうと思った。

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