6
SH部隊の入隊テストの進行は、アンジェラ・コスギが務めた。アンジェラのサイズは、身長186センチ、体重107キロ。女子総合格闘技無差別級の元世界チャンピオン。誰もが認める強者である。
「じゃあ、あんたたち、早速スパーリングしていくからね。一番と二番、ゲージに入って……」
金網で囲まれた八角形のゲージの中に、二人のテスト生が入っていく。
「なんでもありの戦いだからね。ルールも反則もない。失神するか、参ったしたほうが負け。じゃあ、始めて……」
挨拶も自己紹介も詳しい説明もない。いきなり、格闘テストが始まった。
ゲージに入った二人は、最初、マゴマゴして、困ったように、お互いに、顔を見合わせていた。そして状況を先に理解したほうが、さっそく、相手につっかかった。
鋭いパンチを放つ。慌てて相手も、応戦する。
ボクサーと空手家の試合であった。
のっけから、凄惨な試合になった。お互い、打撃の選手である。激しい殴り合いが繰り広げられた。
目の上を切り、鼻血を流す。髪の毛を掴み、振り回し、顔面に膝蹴りを食らわせる。倒れた相手に馬乗りになり、上から、拳の乱打を浴びせかける。
最初は互角の戦いであったが、だんだんと、優劣が、はっきりしてきた。体格に勝るボクサーのほうが、一方的に殴る展開になっていた。
もう勝敗は、明らかについていた。しかし誰も、戦いを止めようとしない。やられてる空手家も、参ったしない。
会場内は、シーンと静まりかえっていた。
馬乗りで殴られ続けた空手家は、顔じゅう血だらけになって、失神した。それでようやく、勝負がついた。
「はい、勝ったほうは残って。次、三番、入って……」
再び、試合が始まった。
勝った一番は、まったく休む間もなく、次の闘いになっていた。一番は、二番に勝ちはしたものの、その戦いで、右拳を負傷してしまっていた。そのため、右のパンチが、あまり出ない。
三番は、柔道家であった。
柔道家は、拳を負傷したボクサーを床に転がし、押さえ込み、肘を顔面に、何発も叩きつけた。
ボクサーは失神した。
失神した者は、係の者が、運び出す。
「はい次、四番入って……」
柔道家は三人抜きを果たしたが、四人目のキックボクサーに、三日月蹴りを食らい、悶絶した。そして倒れ込んだところで、サッカーボールキックを顔面に何発も食らい、たまらず参ったをした。
血が噴き出し、鼻が曲がり、歯や骨がへし折れるような、凄惨な試合が、次々と続いていく。
そこに、強者が現れた。女子総合格闘技、無差別級の、現役日本チャンピオン――藤本忍である。
ノールール。このような戦いを、総合格闘家は得意としていた。
日本チャンピオン藤本忍は、組技系の選手であった。
藤本忍は、絞技や関節技で、次々と、一本を決めていく。七人、八人と、抜いていく。
(強すぎる……これは、誰も勝てない……)
見てる者たちは思った。
藤本忍の実力は、ズバ抜けていた。みんな、五分ともたずに、やられていく。
八人抜きを果たした藤本忍に、疲れた様子は、まったく見えない。無尽蔵のスタミナの持ち主だ。二十人でも三十人でも、軽々と抜いていきそうな勢いである。
藤本忍のサイズは、身長170センチ、体重75キロ。誰も彼女には、勝てそうになかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます