第17話 アドバン武術大会 



 エリー達と訓練を始めて2ヶ月が経った。

2人とも体重移動が上手くなり、次のステップの動きの中での体重移動の練習に入った。所謂組み手を2人で永遠にしてもらっている。そして、俺は雷神を習得してから考えていた技を開発していた。前世では空手の発勁や太極拳の纒絲勁など相手の身体の中に体内で起こした力の流れを流す技があったが、その力の流れに合わせてマナを流さないか練習していた。結果としては余り上手くいっていないが、歩法などを見つめ直し作り直したので結果としてはまだ悪くはない。

 そして、夏休みに入る前に学園で行われる武術大会の予選が始まった。この予選では各学年から上位10名になるまで総当たり戦が行われ、合計5学年で本戦出場者を50名になる。その50名の中から、5グループに分けられ、最終的に決勝トーナメントの10名に絞られる。

 この武術大会で優勝すると学園が保有するマジックアイテムから1つ好きなのがもらえる。中には国宝級の物などが入ってたりする為是非ともこの特典は欲しいと思った。

 そして、決勝の10名には10月に行われるアルマー武術大会の代表選手となり、18歳未満の若手騎士や若手冒険者などと戦うことができる。










「勝負あり!」


 ハンスは予選を全勝で突破し、見事本戦出場を決めた。


「ハンス様、お疲れ様です!」

「ハンス!お疲れ様!これから私の戦いが始まるからしっかり見ててね!」

「ありがとう、2人とも、うん、応援してる!頑張ってね!」

(この2ヶ月でレイとエリーは大分強くなった。正直負けるとは思ってなかったけど、あの子は少し反則かな?)



 この2ヶ月でハンスはSクラスの面々とは大分仲良くなれた。そして、この武術大会でハンス以外にも全勝で来ている相手がいた。Aクラスのシズだ。獅子族の獣人で現獣王の1人娘らしい。どうやら筆記でほとんど0点に近かったらしい為Sクラスには入らなかったらしい。そんなんでいいのか?と思ったが、実際にレイに勝ち今のところ全勝でエリーに勝てば、俺と同じく全勝での本戦出場になる。




「ハンス様、エリーは大丈夫でしょうか?」

「そうだね、接近戦だけで見れば僕と同じくらいか、負けてしまいそうだからね。少し厳しいかもしれない。」

「接近戦だけでは?」

「そう。彼女は闘気の扱いが非常に上手い。恐らく、上級生相手でも勝てるだろう。だが、魔法を使い、遠距離戦を仕掛ければ勝ち目はあるんじゃないかな?前回のレイとの戦いではお互い接近戦に持ち込んでしまっただろ?」

「はい、その通りです。」

「今回はエリーも相手のことがわかるから、いつも僕と最後にやる模擬戦みたいに全アリで戦えば勝てるんじゃないかな?」

「そうですね。まずは見ましょうか。」













「なあ、姫さんや、もしかして、レイって人と一緒の師匠か?」

「なに?そうだけど?もしかして、余裕とでも思ってる?レイの得意分野は魔法なんですけど?」

「やっぱりそうか、いや、その師匠に是非会いたいなと思ってな。」

「ふん、私に勝てたら教えてあげる。」

「そうですか、それじゃあ、やりましょうか」


「始め!」



 まずシズは全身に闘気を纏いトップスピードで駆けてきた。

 それに対し、エリーは氷魔法のフロストで地面を凍らせて、続け様にフロストブレットを5発撃ち込んだ。

(くっ、当たった感じがしない。それに見当たらない。)


「姫さん、びっくりしたぜ!当たったら少しやばかったかもな!でも、これで終わりだよ。」


 そこから、シズは離れた場所から正拳突きを行ったかと思えば、次の瞬間にはエリーが飛んで場外になっていた。


「あれは・・・・」

(多分、俺がやろうとしている、発勁に似たやつだ。あれは、闘気なのか?)

「ハンス様?エリーの元へ急ぎましょう!」

「あ、ああ、行こうか」








「ハンス〜。負けちゃった〜。悔しいよ。」

(えぇ〜。泣いちゃったよ。けど、惜しかったもんな。)

「そうだね。惜しかったけど、試合を急ぎすぎたのがダメだったかな?5発撃つのはいいけど、その後の魔法の展開が遅いかな。油断はしない事だよ?」

「うぅ〜。レイ〜。ハンスがいじめる〜。」

「はいはい。よしよし。お疲れ様でした。ハンス様優しく慰めてあげてください。」

「うっ。そうだね。エリーお疲れ様。本戦で借りを返そうね?」

「うぅ。うん。」


「姫さん?約束通り頼むぜ〜?」

「あっ。そうだった。ごめん、ハンス、あいつからハンスを紹介してって言われてたんだ。」

「へぇ〜。あんたが師匠なのか?」

「あぁ、まあそうだね。僕も会いたかったからちょうどいいや。」

「「えっ?!」」

「ハンス?こんなのが好きなの?!」

「ハンス様?私じゃダメでしょうか?」

(え?なんのこと?)

「おいおい!失礼ってやつじゃねーか?それ」

「ん?どうゆう事だ?俺はシズに闘気の事聞こうと思っただけだぞ?」

「はぁ、そうですか。どうぞゆっくり聞いてください。」

「紛らわしい事言わないでよね!」

(うーんなぜ?怒ってるんだ?納得いかないな。)


「てことはやっぱり、あんたはまだ闘気使えないんだな?」

「はい。習いはしたんですが、苦手で習得できませんでした。」

「まあ、そうだよな。普通は10年くらい修行しないと出来ないからな。この歳で扱えるのは私くらいじゃないか?」

「えっ?そうなのか?俺の弟が使ってたから修練が足りないと思ってたんだが。」

「はっ?!弟?何歳なんだ?」

「えっと、ハリーは俺の二つしただから、今年8歳だな。」

「「「え?そんな事あるの?」」」

(うん?そんなに驚くことなのか?)

「あのね、闘気ってのは魔力と違って、魂格に溜まっていくものじゃないの。身体の中に器を作ってそこに生命エネルギーを貯めて扱う物なの!だから、取得難易度がとても高いスキルで応用も効くから、みんな何年も頑張るのよ?」


(へぇー。そうなのか。母上とかユキ叔母上が普通に使うから知らなかったぞ。ハリーは凄いな!もっと褒めてやらなきゃ!)


「俺の弟はやっぱり天才だったな!」

「はぁ、弟自慢はいいから。それで?闘気を扱いたいんだっけ?」

「あぁ、そうだ。教えてくれないか?」

「それはいいんだが、なぜあの歩法を扱うのに闘気が使えないんだ?」

「え?あれは俺が作り上げた武術だからな。闘気を扱う全体では作られてないぞ?」

「はぁ?!そんな事あるのかよ?!」

(うん?どうしたんだ?あの歩法に何かあるのか?)

「あの武術はダメなのか?」

「いや、ダメとかじゃなくてだな。なんで説明すればいいんだ?」



 そこから、シズのよくわからない説明を噛み砕きながら1時間くらいかけて理解した結果。

どうやら、闘気とは正しい武術を学びその中にある点を意識する事で目覚めるらしい。その点の事をチャクラと言うらしい。そして、俺が開発した武術はなぜかそのチャクラを意識出来るような作りになっていて尚且つシズは初めて見た武術で興味を持ったらしい。


(うん。チャクラね。まさか、インドのヨガにある7つのチャクラの事なのかな?確か、丹田のとこにあるのがスワーディシュターナだったっけ?少し意識してみるか。)




「なぁ、シズ?なんとなくわかったから少し意識してやってみるから、見ててくれるか?」

「ああ、やってみな?」



 そこから、ハンスは型を行いながら、チャクラを意識した。すると、次第に身体のあちこちから丹田に段々集まる感じがしてきた。魔力とは違い制御しやすいが、身体のあちこちにある為、正しい呼吸、正しい動きをしないと集めることができない。数にして108個目を集めた時。丹田に集まった物が身体中を駆け回っていった。


「うわぁ、すごいこれ。」

「そんなことあり得るのかよ。」

「え、なにこれ。」

「ハンス様凄すぎます。」



 そして、ハンスは闘気を習得する事が出来た。


「ありがとう、シズ!お陰で習得できたよ!」

「えぇ?あぁ、そうだね。そんな事あるんだね。信じられないよ。」

「ねぇ、ハンス?私たちも習得できるかしら?」

「あぁ、しっかり、歩法を学び、武術を理解できれば習得できるよ!」

「そう、頑張るしかないのね。」

「ハンス様!頑張ります!応援しててください!」

「ああ!2人とも頑張れよ!って事で、シズ!模擬戦してくれないか?」

「え?いいけど、大丈夫なのか?まだ習得したばかりだろ?」

「うん、だけど、俺の武術はまだ完成してないみたいだ。完成させる為に手伝って欲しい!報酬はもちろん渡す!」

「あぁ、もちろんいいが。報酬はお前の武術を教えてくれないか?」

「いいぞ!けどそんなんでいいのか?」

「そんなんでって!闘気を扱うための武術は本来秘匿して、家の財産にするもんだぞ?!」

「そうなのか、別にまぁいいよ?」

「後で忘れろと言われても無理だからな!」













 そうして、武術大会本戦出場選手も決定した


全勝 ハンス・フォン・ブルーマー

   シズ・ブラン・レオ

9勝 エリザベート・ヴィン・アルマー

   レイ・ソルト・フェルマー

8勝 ブラット、シルビア、メアリー、ケイン、シュウ、ソルベ


 やっぱり、シズ以外はSクラスからの出場になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る