第16話 学園 ④


「ハンス様!今日からよろしくお願いします!」

「え?ああ!訓練のこと?」

「はい!これからよろしくお願いします!」

「そっか、それはいいんだけど、毎日?」

「はい、できたらそれが嬉しいんですが。」


 うーん、これからは冒険者登録して、魔物狩りしたかったんだけどな。それに、錬金術の練習もしたかったし。


「毎日は無理かも、冒険者としても活動するつもりだから。」

「そうですか!それなら、是非付いて行かせてください!」

「えぇ!?!魔物と戦うんだよ?」

「はい!それくらいは大丈夫です!」

「わかった。なら、僕が大丈夫だと思えるくらい強くなれたらいいよ」



 それから、2日に1回のペースで訓練を行う約束をした。




「ねぇ、ハンス?私のこと忘れてない?」


 それはいきなりだった。授業が終わり、レイ嬢と訓練に向かおうとしていた所に、エリー様に呼び止められた。


「え?!」

(なんだろう。なにか約束してたっけ?)

「エリザベート様、これから、ハンス様と訓練がございますので。失礼します。」

「あら?私は誘われてないのだけど?」

「いえ、私から朝の訓練に誘いましたので。」

「へぇ〜?そうなんだ。ハンスは?私と訓練するのは嫌?」

(あれ?2人から圧が感じる。)

「い、いえ、そんな事は。それでしたら一緒に訓練いたしますか?」

「まあ、いいでしょう。」


(ふぅ〜。これでよかったのかな?圧も無くなったし。)


 そうして、3人で訓練場に向かう事にした。














「まずは、ストレッチからしますか!」

「ストレッチ?なんですか?」

「え、ああ、身体をほぐしましょう!」

「ハンス様、やり方を教えてもらえますか?」


 レイ嬢にそう言われて、手を引かれてストレッチのやり方を教えてあげた。


「レイ嬢?近すぎでは無いかしら?」

「え?そうでしょうか?やり方がわからないので。教えてもらってただけです。」

「ふーん。ハンス?こっちにきてしっかり教えなさい。」

(あれ〜?この2人仲悪いのかな?)



「はい。このストレッチを訓練前に、その後にやったストレッチを訓練終わりにやりましよう。身体の疲れが取れやすくなりますし、怪我しにくくなります。あと、出来ればお風呂上がりにも軽くしてください。」

(ストレッチすれば関節の可動域も広がるし、筋肉のバランスもよくなるからなぁ)



「それじゃあ、これから、訓練を行うんですが。まず初めに2人にはある程度体術をできるようになって欲しいです。」

「体術ですか。」

「それはなぜなの?」

「えっとですね、極論なんですが、武器も魔力も無くなった時はどうしますか?」

「そうならないようにするわ」

「そうですね、そうならないようにするのが1番なんですが、僕の考え方は違います。そうなった時、後悔しない事を考えてます。なので、最悪この身体1つでもある程度戦えるように体術を始めました。それに、体術ができるようになると、手札も増えますし、身体の動きを学べるので基礎としては1番体術がいいと思います。」


(俺の体術は、前世での空手とマリク師匠の武術をより実戦で使えるようにしたやつだから、もはや俺だけの物だけど、どうやって教えようかな。) 


「そうね、確かにその通りかもしれない。」

「わかりました!それじゃあ、教えてください!」

「はい。それでは初めに、僕の手にパンチしてみてください!」

「「え?」」

「ん?思い切りでいいですよ、どんなパンチをするのか見たくて!」

「ああ!なるほど!わかったわ!」


(うーん。全然体重が乗ってないな。)


「それじゃあ、今度は僕のを受けてみてください。最初に2人のパンチをマネます。その後に僕のやり方を見せますね。何が違うのか感じてみてください。」


 そこから、2人に体重の乗ったパンチと乗ってないパンチを体験してもらった。


「なにこれ、すごい。なんとなく。重さが違った?」

「そうですね、ハンス様のパンチは重かったように感じます。」

「そうですね、ほとんど正解です。僕のパンチは体重を乗せて打ちました。ですが、力はどっちも同じくらいです。これからは、このパンチが打てるように訓練していきましょう。」

「「はい!!」」

(お!2人とも目の色が変わった!やる気になったのかな?)




 そこからは、体重を乗せるために、中腰の姿勢でひたすら突の練習を行い、その横で僕はシャドーをしながら、2人を見て改善するのを1日繰り返した。最後はストレス発散の為に模擬戦をして終了。そして、2人に提案した。



「2人とも少しスタミナが足りないから、一緒に走り込みもしようか?」

「えぇ、今日で痛感しました。是非やらせてください。」

「私も足りないのに気づきましたので参加しましょう。」


 それから、2人とは朝練で朝6時から走り込みをする事にした。




「ハンスさま、はぁはぁ、これは毎日行ってるんですか?」

「そうですね、5才くらいから少しずつ距離を増やしたりペースを上げたりしながらやってきましたね!」

「そう、やっぱり、あなたは努力もしてきたのね。」

「なんでそこまで努力できるんですか?」

「そうですね、可愛い弟達がいるんですよ。3人にかっこいいところ見せたいのと、守りたいからですかね。」

「そうなのですね。」

「はい!やっぱり、守りたいものがあるので頑張れるんだと思います!」

「そうね、守りたいもの為に強くなる。」

「お2人は守りたいものはありますか?」

「はい。私は自分の意思を守りたいです。」

「私は自由を守りたいかな。」

「おお!いいですね!どれも、とても大事な事だと思います


「本当ですか?私は貴族なのに、その勤めを守りたく無いんです。本当にいいんでしょうか?」

「確かに貴族に生まれてその利益を得たなら勤めを果たさないといけないけれど、それはレイ嬢の親が得た利益であって、まだ、あなたはただ親から受け取っただけです。なのでいいんじゃないでしょうか?」

「そ、それは確かにそうかもしれませんが」

「いいんですそれで、それにレイ嬢は別に何も返さない訳では無いんでしょう?違う形で勤めを果たせばいいんですよ。何も1つじゃなくていい。」

「あなたはまだマシよ?私は自由になりたいのよ?」

「ははは、そうですね。エリザベート様よりはマシかもしれません。」

「ちょっと?言い方悪いんじゃない?それに、エリーでいいわよ」

「ふふふ、ありがとうございます。エリー、私のことはレイでお願いします。」

「それじゃあ、レイ、明日からも頑張りましょう!」

「はい!よろしくお願いします!」

(お?なんだ?2人とも仲良くなったぞ!)

「それじゃあ、お二人とも明日朝6時で!しっかりお風呂終わりにストレッチして魔力操作も忘れないように!」


(2人ともやる気いっぱいだったなあ、明日からはウルと2人っきりじゃなくなるね!)

(わぅぅ)

(あはは、それじゃあ、今度2人で王都の外で走り回ろうか!)

(わう!)
















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