第14話 学園 ③


「はい、席につけー」


 そう言いながら、長身の眼鏡の人だった。多分教師だろう。この学園では、生徒は白を基調にした制服を着けており、教師には黒を基調とした制服が支給されている。


「これからお前らの担任になる、ヴァイスハフトだ。」

「おいおい、まさか、あのヴァイスハフト様か?」

「そうだろう。噂では仙人らしいぞ。」

「まじかよ、さすが英雄だな。」


「おいおい、静かにしろよー。とりあえず、今から入学式だ。Aクラスが入場しきるまでまだまだ時間があるから先に自己紹介するぞー」




「よし、まずは、満点合格者の主席から自己紹介しろー」


(うわぁ、なんか、ざわつかれてしまった。)


「はい。ハンス•ファン•ブルーダーです。得意な物は武術、魔法、錬金術です。この学園では皆さんと一緒に研鑽し合えたら良いなと思ってます。」

(我ながらいい自己紹介じゃないか?)


「エリザベート•ヴィン•アルマーです。得意な物は水魔法と氷魔法です。学園内では身分は関係ありませんが、誰かを貶める行為などを見つけた際には遠慮なく権力を使います。なので、貴族だからとか平民のくせになどと言ったくだらない争いはやめて、研鑽しましょう。」



(おいおい、なかなか過激な事言うな。だが、俺もその考えには同感だな。)



 そこからは、Sクラスの生徒20名の自己紹介が終わり。伝来が報告に来て、入学式の会場に向かった。











 そこからは、前世でもあったような入学式を行った。ただ、前世より話す人が多く、長かった為眠りそうになってしまった。













 そして、入学式を終えて、Sクラスの寮に向かっている途中で、また絡まれた。


「おいおい、ここはSクラスの寮だぞ?場違いじゃないのか?」

(はぁ、またこいつか。)

「はぁ、言いたいのはそれだけ?」

「くっ!!お前また見下したな!ふざけるな!お前はSクラスじゃないんだよ!!!」

「うん、それじゃあ、学園長のところまで行こうか。」

「ふん!わざわざ学園長のところまで行く必要なんてない!」

「いやいや、僕は学園からクラスを決められた。その学園の判断が間違ってるって言うなら、聞きに行かないとダメでしょ?」

「だから、わざわざ学園長の手を煩わせる必要がないと言ってるんだ!お前がここから去ればいいだけだ!」


(だめだ、さすがにそろそろイラついてきたな。なんで話できないんだろう?)


「なるほど、まず、お前こそ、Sクラスでもないくせに、なにしてるんだ?」

「お前がいなくなれば僕がSクラスだったんだ!」

「そうか、ならどうすればいい?」

「ふん!決闘しろ!」

「決闘か、それじゃあ、負けた方が退学って事でいいか?」

「ふん!当たり前だ!」

「それじゃあ、始めようか。シェリア、誰か教師を呼んできてくれ。立会人をお願いしたいと」





「おー?面白い事になってるな。俺が立会人してやるよ」

「あ、ヴァイスハフト先生!いいんですか?」

「ああ、いいぞ。面白そうだしな。」

「それじゃあ、よろしくお願いします。」

「「デュエル」」





 この学園内には各学生が試験や課題などでポイントを集める方式を取っており、このポイントでクラスが決まる。そして、このポイントを生徒同士で取り合う事も推奨されており、制服についたバッチを起動して、お互いにデュエルと言い合えば、お互いの周りに結界を張り、ダメージを肩代わりするバリアも貼られる。このバリアが壊されると結界が無くなり負けが確定する。負けるとポイントが半分になり勝った方に渡される。そして、1ヶ月間決闘が出来なくなるというルールがある。今回はその決闘システムを使った物で万が一も死ぬことがない。





(これが決闘のバリアか。すごいなこれは。 それより、今回は試そうかな、新しい魔法。)




「それじゃあ、負けたらこの学園を退学でいいんだな?」

「「はい。」」

「バリアが壊れた後の攻撃は禁止だ。例え勝っても反則すれば負けだからな。それじゃあ  始め!」








 ロイは身体強化の魔法を使い早速仕掛けてきた。それをハンスは受け止めて数度打ち合いをした後は、ファイアバレットを撃ってきた。


「おいおい、そんなに避けてばかりでいいのか?」

(こいつは何を言ってるんだ?当たらない魔法をそんなに撃ってきて。そんなに魔力は多くないはずだが。)


「それじゃあ、今度はこっちから行くよ」

「何言ってるんだ?グハァ!!」


(おお!成功した!)

 

「ふぅ。先生終わりですよね?」

「あぁ、そうだが。今何をした?」

「ああ、ナイショです!」

「ふふあはは!面白いな!お前最高だ!」

「え?あぁ、ありがとうございます。」


「待て!!お前どんなインチキしたんだ!ふざけるなぁ!」

「はぁ?あの中でどんなインチキがあるんだ?」

「あり得ないだろ!僕が負けるなんてあり得ないんだ!」

「あぁ、それじゃあ、後は先生お願いしますね!」

「任せろ、おい!お前ついてこい!」

「なっ?!僕にそんなこと言っていいのか?僕はアドラー侯爵家だぞ!」

「はぁ?ルイスのガキか?黙ってついてこい!言うこと聞かないなら、後で家に文句言ってやるからな!」






 その後も、先生に文句言ってたが、無視してそのまま寮に入って行った。



「ハンス様大丈夫でしたか?」

「ああ、特に問題ないよ!実験も上手くいったしね!」

「そうですか。私には瞬間移動したように見えましたが。」

「そう見えたのなら成功さ!それにしてもこの部屋広いね!」


 案内されたのはSクラスの寮の中でも1番いい部屋。各学年の首席が入る部屋で。寝室にリビング、キッチン、応接間まで備えてあった。


「ウルー、ここでなら、ウルも一緒にいられるね!」

「わふっ!」

「今日の雷魔法上手く行ってたかな?」

「はっはっ!はふ!」

「そうかそうか、でも、まだあんまり長くは使えなさそうだね。これが上手く行ったら纏にも属性をつけたいな!」







 この世界では、魔法はイメージの世界である。なので、身体強化など、体の中での魔法は無属性でやるのが基本だった。なぜなら、体の中で火だった。風、土などが動くイメージができなかった。そして、水は早く動くイメージができないなどの理由があった。纏もおんなじで、属性を纏うイメージが出来なかった為、これまで出来ないとされていた。だが、ハンスはこの身体強化の属性変化を成功させた。それには、ウルとの契約で雷魔法が使えるようになった事。前世で、体の中には脳から微弱な静電気が流れて動かしていることを知っていた事で、体内に雷魔法を使い、身体強化を行い、まるで雷のような高速移動を実現させていた。








 






「おいおい。ジル爺、ハンスのやつ最高だぜ」

「ほう。お主にはどのように見えた?」

「油断してて全ては見えなかったが、ありゃ、身体強化しか使ってなかった。そして、油断してたとはいえ、俺の目では捉え切れなかった。闘気も纏ってるようには見えなかったからな。あれは多分、普通の身体強化じゃねぇ。」

「ふむ。そんなにか。魂格はどうじゃった?」

「魂格の方は、もうすぐイエローだな。同年代にしちゃあ早すぎるが、俺を補って余りある才能がある。それに、魂格に聖獣がいるからか、シルバーくらいの格ではあった。」

「そうか、それにしても、初日から騒動とは、これからはハンスを中心に色々起こりそうな気配がするなぁ。」

「おいおい、俺の可愛い生徒になったんだ。巻き込むなよ?」

「ふん!ワシとの賭けに負けて教師になったんじゃ!いい加減ワシへの言葉遣いを直せ!」



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