第13話 学園 ②


 入学試験の後、錬金術師のポグバと魔道馬車の話し合いを夜遅くまで行ったハンスは寝過ぎていた。


「ふぁあ、うん?もしかして、寝過ぎたかな?」

 昨日は遅くまで起きてしまったからなー。


「ハンス様、おはようございます。」

「うん、おはようシェリア、いっぱい寝ちゃった。」

「大丈夫ですよ、今日は何もありませんし。エルヴィン様も起こさなくていいと仰ってましたし。ポグバ様は庭の方で作業をされています。」

「そっか、早いな。それじゃあ、ご飯食べたら向かおうかな。」









「おお!ハンス様!ようやく起きられましたか!昨日話していたスプリングの部分なんだが、知り合いの鍛冶師も来ることになったのだが、そいつが来たらまた教えてくれませんか?」

「ああ、いいですよ!その鍛冶師の方は信用できますか?」

「大丈夫ですよ!ドワーフで仕事も選びますが、今回の事は多分やりたがると思います!」

「そうですか、うーん。やっぱり、2人とも僕の商会に入りませんか?これから、スプリングの特許とかの申請もありますし、他にもいろんな物を作って行きたいので。」

「ふむ、そうですな、これからも色々な新しい物を作れるのは魅力的ですな!是非入らせてください!」

「よかったです!これからもいろんな物作っていきましょう!」

(よかったぁ、これで安心して作れるな!)



「あー!ハンス様来ました!おーい!トド!」

「あ、初めましてなのだ。トドって言うのだ」

「よろしくお願いします、ハンスと言います。それで早速、スプリングの説明をしたいんですけど。」





 そこから、魔道馬車の説明から、車輪のスプリング、そして、商会への勧誘を行った。

結果として、トドは商会に入ってくれる事になった。


「んだ、ハンス様のアイディアは凄いだ。こんな凄い物これからも作っていけるなら入りたいだ!」

「おお!これからもよろしくね!トド!」

「んだ、よろしくだ!」

「それで、今、トドに説明した通りなんだけど、スプリングのバネは作れそう?」

「んだ。すぐ作れるだ。後は素材のどの部分を使うか決めなきゃいけないだ。」

「うーん、そこは、ポグバとトドで決めていいよ!僕じゃ決め切れないからね。」







 そこからは、その機能と用途に合わせて素材を決めていき、足りない素材に関しては買って足す事にした。そして、ポグバ達には王都邸の作業場に道具を持ってきてもらい、作業をお願いした。










「ハンスどうかね、作業の進捗は」

「お祖父様!はい、今、使う素材を決定して、2人で合わせて作ってるんですが、凄いです。大分早く出来上がると思います。」

「そうか、ハンスが今回考えた物だが、他にも作れると思うかね?」

「材料と作り方さえ揃っていれば作れるとは思います。」

「そうか、問題は銀獅子を全て使えるかどうかだったね。」

「はい、他の素材でも作れるかと言われれば作れますが、やっぱりグレードは落ちるので、普通に馬に引かせた方がいいかと思います。」

「そうだね、銀獅子は狩ることももちろん難しいが、遭遇するのも難しいからね。」

(うーん。王家に献上とかしないといけないのかな?)


「お祖父様、献上はする必要が無いと思います。これは馬でも引くことができるし、スプリングの部分に関しては、私の商会で売り出す予定です。そして、それを王家に献上する予定なので、大丈夫かと思います。」

「うっ。そうか、そこまでわかってたか。それなら、問題ないな。もしバレたとしたら、銀獅子を丸ごと使っていると言えばある程度は大丈夫だろう。」

「はい。それでも、もし作れと仰るなら、辺境伯領から抜け出しても大丈夫ですか?と聞けばいいかと。」

「確かに。それを言えば黙るしか無いだろうな。」

「はい。王家も辺境伯とは仲良くしたいはずなので余り無茶は言ってこないでしょうが。」

(そうか、9才でそこまで見透せるか。本当に傑物じゃな。)














 そこからは、ポグバとトドの作業を見学しながら学んでいた。そして、学園の合格発表が来た。もちろん合格なのだが、まさかの首席だった。しかも、全て満点の評価だった。これには、流石にお祖母様もビックリしていた。でも、褒められたのは嬉しかったからよかった!












 そして、合格の知らせを送る前になんと、母上たちが到着した。父上とマリク師匠は居残りで他のみんなは王都に来ていた。もちろん、弟達も来ていた。そして、ポグバとトドの紹介をすると、もちろん、クロエがポグバに質問攻めをしていた。その間に僕は弟たちと模擬戦をしていた。弟たちはしっかりと成長していた。もうすぐで、魂格がオレンジに行きそうだったのには驚いたが。理由を聞いたら、母上とユキ義叔母様が扱う、闘気を学んでいるらしい。僕ももちろん学んでいる。闘気は使えば強いのだが、魔力と違い、体力を消費して使うので、ソロには向かない為あまり使わなかったが、弟たちはパーティの為、3人とも積極的に修練していた。それでパーティの戦力が底上げされた為、最近はDランクの魔物とも偶に戦っているらしい。






「そうか、闘気を完璧に扱うことが出来たら強いね!」

「うん!母上が言うには扱い切れたらそんなに体力も消費しないから使いやすくなるんだって!」

「そうだね、その通りだと思うよ。それに、ハリーはセンスがありそうだしね!」

「それより、アンの周りの光はなんなのかな?」

「え?!お兄様これが見えるの?」

「あ、うん、魔眼を使ってだけど、光しか見えないけどね!」

「うん、これは精霊さんだよ!来る途中の川で怪我してたから治してあげたの!そしたら、契約できた!」

「え!そうか、これが精霊なんだ。アンにはどんなふうに見えてるの?」

「小さな女の子!喋る事はできないけど、なんとなく言ってる事はわかるんだ!」

「それじゃあ、精霊術の勉強もしないとね!」

「うん!属性は火だから、今のところは私の火魔法の威力を上げることしかできないけど、これから魂格を繋げたらもっと色んなことが出来るんだって!家に戻ったらやってみる!」

「そうだね、契約で魂格が上がると少しの間不調になるから、帰ってからが良いかもね!」


(うん、それにしても、闘気に精霊か、俺も負けてられないな。そろそろアレを試してみようかな。)


「学園の試験って難しかった?」

「うーん、そんなに難しくは無かったよ?ちゃんと勉強もしていたからね!2人もちゃんと勉強したら、十分受かるよ!」

「そっか、ちゃんと、勉強もしないとダメなんだ。」

「ハリーは勉強サボりすぎ!」

「なっ!言うなよ!アン!!」

「えっ?ハリーサボってるの?」

「うっ!!これからはちゃんと勉強する!」

「本当に?それじゃあ、まだ母上には言わないであげる。」

「うぅー。ありがとう。」


 ハリーが勉強をサボってるのは知らなかったな、ちゃんと学園までに勉強してくれると良いんだけど。










「ハリー、改めて合格おめでとう!」

「「「「おめでとう!」」」」


 母上とみんなからのおめでとうを貰い、いつもより豪華な食事を食べながらいっぱいお話をした。そして、数日が経ち迎えた入学式。













「まあ!ハリー制服似合ってるわよ!」

「うわぁ!兄上似合ってる!」

「うん!かっこいい!」

「かっこいいと思う!」

「うん、恥ずかしいな。ありがとう。」

「それじゃあ、ホールで見てるわね!」

「うん、先に教室へ行ってくるよ!」












(えっと、たしか、Sクラスだったから、ここか!)

 扉を開けるとほとんど皆んなが既に席にいた。そして、首席が座る位置に座った。


「おい!なんでお前がそこに座ってるんだよ!」

「え?だって満点だったから。」

「は?!嘘つくのはやめろよ!」

「なんで、嘘だと思うの?」

「だってそこは王族である、エリザベート王女殿下が座るべきだろう!」

「うん?まあ、席順なんてどうでもいいんだけど、僕はここに座るよう言われたから座っただけで、お前に言われる筋合いは無いね。」

「なっ?!お前だと?俺が誰だかわかってるのか?」

「ああ、わかるよ、アドラー侯爵家のロイだろ?」

「お前、わかってて言ってるのか?!」

「ああ、5才の時社交会で会ったからね。」

「ああ、そうか、お前はあの時の田舎もんか。そっか、田舎から来たからルールを知らないんだな?」

「いや、ルールを知らないのはお前だよ」

「は?!なんだと?!僕は侯爵家だぞ!」

「爵位の話をするのなら、辺境伯と侯爵は同じ位のはずだよ?」

「侯爵家とそんな田舎貴族を同じにするな!!」

「うーん。本当にこの学園に受かったのかな?てか本当にSクラス?」

「っっ!!ああ!僕は本当ならSクラスのはずだ!!」

「ああ、本当ならとかどうでも良いから、早く自分のクラスに戻ったら?」

「どうかしたのかしら?」

「うっ!王女殿下様!私めはただいま、王女殿下の席に座る輩を追い払おうとしておりました。」

「え?私の席はこちらですけど?」

「いや!この首席の席は王女殿下にふさわしいと思います!」

「うん、違います。もしかして、偉さで首席とかを決めると思っているの?」

「えっ?あっ、いや。」

「それならあなたの勘違いよ?そもそも、この学園のあり方は王家が決めた物です。それに対して意見を言うって事は王家に対して意見を言うと言うことをしっかりと認識する事ね。」

「っっ!?!はい。申し訳ありませんでした。」

(うわぁ、すっげぇダサい。ってか、なんでそこで俺を睨む?)

(それにしても、エリーはどんどん可愛くなっていくなぁ)


「やっぱり、ハンスが首席だったのね。久しぶりハンス」

「お久しぶりです。エリー様」

「うふふ、まだその呼び方覚えてくれてたのね。」

「あ、はい。もし嫌でしたらすぐにでも直します。」

「いいえ、大丈夫よ。エリーって呼んでちょうだい。」

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