第8話 社交界デビュー②


 王都のブルーダー邸で1夜明けて


「お祖父様、お祖母様、おはようございます」

「おはよう、ハンスちゃん!」

「おはよう、昨日はすぐ寝たみたいだね?」

「はい、元気だったのですが、気づいたら寝てました。」


 うん、興奮してて気づかなかったみたいだけど、疲れてたようだ。


「うふふ、仕方ないわよ、初めての長旅だったんだから」








 そうして、朝食を終えて、お祖父様達とお話をして、仕立て屋でパーティに着て行く服を仕立てて、師匠とシェリアと王都散策に出掛けた







「うわー!すごいよ!人がいっぱいいるね!」

「そうですね、王都は時期に関係なく人がいっぱいいますね。」

「ハンス、離れないように手を離すなよ?」

「はい!市場に行ってみたいです!」



 そうして、市場に着くと、いろんなものが売られていた。そして、なんとそこに大豆が売られていた!




「おじさん、この豆はどうするの?」

「うん?この豆か?これはそのまま似て食べるんだよ」

「そうなんだ?これで調味料とかはできたりしないの?」

「うん?この豆でか?うーん、聞いたことないな。」

「そっか、なら、この豆買ってもいい?」

「いいぞ!一袋銅貨3枚だ!」

「わかった!じゃあ、5袋ちょうだい!はい!お金!」

「おお!まいどあり!」



 そうか、この世界にはやっぱり、大豆はあるけど、醤油や味噌とかは無いんだな。



「ハルト?その買った豆はどうするの?」

「うん?これはね、確か遠い国では調味料に加工して使われてるらしくて、食べてみたかったけど、無いから作ろうかと思ってるんだ!」

「そうなの?そんなことどこで知ったの?」

「え?わかんないけど、なんかわかるんだ!」



 うん、我ながら下手くそな嘘だ。



「そう?まあ、美味しく食べれるならいいか!」





 うん、師匠はこんな人だった。

そして、王都散策を終えて屋敷に戻った。





「ハンス、どうだった?王都は」

「うん!人も物もすごくいっぱいいたよ!」

「うふふ、そうね、王都は国で1番栄えてるからね」

「明日はパーティで忙しくなるじゃろう、早めに休んでおきなさい。」

「うん!わかった!おやすみなさい!」








 そして迎えたパーティ当日

ハルトは憂鬱な気分になっていた。




「ハルト、もしかしたら、婚約者になろうと声をかけられるかもしれんが、ワシに聞いてくださいと言うんじゃぞ?」

「え?婚約者とかもう決まるの?」

「そうじゃな、貴族では決して早いわけではないな。」

「うーん。でも、お祖父様に任せれば大丈夫ってこと?」

「そうじゃな、そう言えば間違いないじゃろう。」

「うん!それじゃあ。お祖父様にお願いするね!」








 初めて来た王城は全てが高くてキラキラしていた。そして、パーティ会場も1000人くらいは入れる広さはあった。そして、パーティが始まり、王族の登場を見ていたが、王女はとても可愛らしかったが、なんだか、楽しくなさそうだった。少し気になったが、料理の方が気になったので、すぐに料理に夢中になってしまった。



(すごいな。パーティ料理だけど、とっても温かくなってる。この下のが温かくしてるのかな?)





「ご機嫌よう、私フェルマー伯爵家のレイです。ハンス様でございますか?」


 綺麗な青い髪の女の子が声をかけてきた。


「ご丁寧にどうも、ブルーダー辺境伯家のハンスでございます。」

「そうですのね!ハンス様はあちらの集まりに参加しないのですか?」

「ああ、はい、こういうパーティは初めてですので、とりあえず、料理を食べてました。」

「そうですか、ご一緒させてもらってもよろしいですか?」

「はい、よろしいですよ?レイ嬢はこの料理食べましたか?」

「いいえ、まだ料理は食べてませんの。」

「そうなんですか、是非お食べになった方がいいかと、とても美味しいですよ!」



 そうして、レイ嬢との食事を楽しんでいると今度は数名の男が近寄ってきた。


「レイ嬢?こんな所で何をしているのですか?」

「あ、ロイ様、ご機嫌よう。ハンス様がお1人でお食事をされていたので、一緒にしてました。」

「ふん、そんな田舎もんは1人で食事させておけ!」

「っ?!あ、申し遅れました。ブルーダー辺境伯家のハンスと申します。そちらの方々は誰ですかな?」

「私は、アドラー侯爵家のロイだ、わかったら、レイ嬢をお借りしてもいいかな?」

「はい、レイ嬢が行きたいのであればどうぞ?レイ嬢はどうしたいですか?」

「うっ。はい、今行きます。」

「そうですか、ではごゆっくりどうぞ」




 うーん。辺境伯と侯爵は同じくらいの位って聞いたんだけどな?なんであんなに偉そうなんだ?とりあえず、いろいろ食べたし、少し風にあたろうかな。


「シェリア、少し風に当たりたいな。」

「かしこまりました。エルヴィン様にお伝えしてまいります。」








 そのまま夜風に当たりに行くと、王女様がいた。





「王女殿下様、辺境伯家のハンスと申します。失礼ですが、こんな所でお一人は危ないと思いますが?」

「うふふ、あら?貴方もお一人のようだけれど?貴方は危なくないのかしら?」

「あははは、そうですね。自分も不用心でした。ですが、少し息苦しく感じてしまって、少し休憩をと思いまして。」

「そうなのですね、私も同じような理由です。 私のことはエリーとお呼びください。」

「え、いや、せめてエリザベート様でお願いします。」

「いやよ?」

「ふぅー。エリー様でよろしいですか?」

「うふふ、やっぱり貴方なら呼んでくれると思ってたわ。それに揶揄いやすい。」

「っ!!揶揄ってたのですか?」

「いえ?そんなことありませんよ?」

「うっ。また揶揄いましたね?」

「さぁ?それでは、気分も少し良くなったので、そろそろ戻ります。貴方もお1人は気をつけてね」

「はあ、わかりました。ご忠告ありがとうございます。エリー様。」







 その後、会場に戻ったハンスは、沢山の令嬢に囲まれる事になったが、婚約者などはお祖父様に任せていると一蹴し、エリー様に睨まれながらも無事?に会場を後にした。







「ハンス、気になる令嬢は居たかのう?」

「うーん、そうですね、まともに話したのは、レイ嬢とエリー様だけでしたのでよくわかりません。」

「っ?!!エリー様とは王女殿下のことか?」

「はい、風に当たりに行った所で出くわして、少しお話をしました。」

「そうか、愛称についてはどうして?」

「えっと、そう呼べと言われたので、やっぱり不味かったですか?」

「いや、王女殿下がそう言われたのなら仕方がないだろう。」

「そうですか、よかったです。」




(ふむ、しかし、レイ嬢に王女殿下か、もしかするかもしれんな。)








 王都での社交界デビューを終えたハンスは、ブルーダー辺境伯領への帰路に就いていた。


「行きも帰りも特に問題ないね!」

「それゃそうよ、ゴクウがいるからね、普通の魔物は怖くてよってこれないよ!」

「え?そうなんだ?ゴクウってすごいね!」

「うむ、すごいじゃろう。ワシが居ればなんの問題も無いわい!」











 そして、なんの問題も無く家に帰って来れた





「ただいま戻りました、父上。」

「うん、お帰りなさい、楽しかった?」

「はい!特に料理が美味しかったです!」

「そうか、アリア達にも顔を見せてきてあげて?」

「はい!ではいってきます!」

 そう言って、母上達の所に向かった。





「「「にぃに!!」」」

「ただいま、ハリー、アン、クロエ、はい、お土産だよ!」

「やったー!」「いぇーい!」「ありがとー」

「母上達にはこれです!」

「あら、可愛いわね、ありがとう」

「クロエにまでありがとうね」

「それで?誰かと仲良くなれた?」


 そうして、母上に根掘り葉掘り聞かれたハンスは旅の疲れもあってかその日はいつもより早く寝入った。













「それで、マリー、ゴクウ、ハンスはどうだった?」

「うーん、父上が言うにはパーティでは、フェルマー伯爵家の令嬢と王女様以外とはそんなに話してないらしいよ?」

「うむ、それに、ハンスは特に興味ないようじゃったな。」

「そうか、フェルマー家と王家か。魂格については?」

「父上もびっくりしていたよ、それに、パーティの後で伝えるらしいから、パーティではそんなに話題にはならなかったはずだよ」

「そうか、後はハンス次第になるけど、そろそろ、王家との繋がりも作ろうって話もあったんだ。もしかするとちょうどいいってなるはずね。」

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