システム

1セット目がフェイスオフのポジションにつき、レフェリーがパックを落としに中央へ向かう。


CFに3年の真壁理(マカベサトシ)さん


FWに2年の佐藤佳樹(サトウヨシキ)さんと栗山光(クリヤマヒカル)さん


DFは3年の坂井斗真(サカイトウマ)さんと清田大地(キヨタダイチ)さんだ。


『ピーーーーーッ』


レフェリーが笛を鳴らしパックを落とす。


『パァン』


練習試合開始だ。


理さんがパックを引き、大地さんの元へ渡る。


「よし!」


まずは先制攻撃のチャンスだ。


「お前素人かよ・・・よく見ろ」


横にいた朝陽に言われた。


「方向づけがうまい。パスコースが絞られている」


ご丁寧に解説付きで人を馬鹿にしてくる。


ただ、朝日に言われて全体を見ると、いつの間にかパックキャリア以外の選手にもしっかりマークがついている。


ただ、大地さんの前にいる佳樹さんは空いている。


「佳樹さん空いてるじゃん!チャンスチャンス!」


俺が思った通り、大地さんからも佳樹さんしか空いていないことを確認していた。


「佳樹!」


大地さんは空いている佳樹さんにパスを出す。


「ナイスパス!」


良いスタートを切った佳樹さんは、大地さんのパスを受け取り相手エリアに入っていく。


「1対1なら負けな・・・」


相手エリアのブルーラインを超え、3歩ほど進んだところで横からスティックが伸びてくる。


佳樹さんが相手DFと1対1だと思っていたその時、相手のCFが横からパックを取りにきたのだ。


「ばっちにはまってくれてありがと〜」


塩原工業3年の碓井朝登(ウスイアサト)がパックを取り、佳樹さんと1対1で構えていたDFにパスを出す。


「朝登ナイス!」


塩原工業3年DF、鶴田元(ツルタゲン)がパスを受け取り、すでに前へスタートしているFW2年、大島健吾(オオシマケンゴ)へ縦パスを出した。


「健吾!」


「オッケー!」


大島健吾はスピードを殺すことなく、トップスピードで受け取った。


鶴田元のパス技術は目を見張るものがある。


しかし、後方にいた斗真さんが大島健吾に絡む。


トップスピードに乗っている大島健吾を止めるには、なんとか追いつくだけの距離だ。


「いきなり取らせるかよ!」


斗真さんの根性が感じられる。


「・・・っ・・・!」


身体を入れてなんとかシュートコースを絞っている斗真さんに対し、大島健吾は大勢を崩しながらなんとかシュートを打つ。


コースを絞られて撃たれたシュートは雄司さんのミットの中に吸い込まれる。


「ピッ!」


ラインズマンの笛が鳴り、一旦試合が止まる。


試合開始からここまで30秒も経過していない。


高校のスピードの速さを思い知らされる。


「少し早いが交代していけ!」


川上先生の号令のもと、1セット目が引き上げてきて2セット目が出ていく。


自エリアゴール前でのフェイスオフだ。


「あの・・・」


亜里沙が絵真さんに尋ねかけた。


「ん?」


「今なんで試合が止まったんですか?私ルール全然知らなくて・・・」


恥ずかしそう亜里沙が訪ねた。


「どんどん聞いていいからね?基本的にホッケーは審判からパックが見えなくなったら試合を止めるってルールなの。今はキーパーが止めて見えなくなったから止めたけど、プレイヤーでパックが見えなくなっても試合を止めることになってるよ」


「そうなんてすね!じゃあピンチになったらプレイヤーはパック持っちゃえばいいってことですか?」


亜里沙からのもっともな質問だ。


「残念ながらそれはハンドリングパックっていう反則なの。手でパスを出すハンドパスも禁止されているよ」


なるほど・・・奥が深い・・・と亜里沙が噛み締めていた。


「あ、それからホッケーの交代のタイミングって前から見てて全然わからなかったんですけど、いつ交代することになっているんですか?」


「後退は自由だから、こうして笛が鳴ったタイミングとか試合中でもルール上はいつでも交代していいことになっているの。アイシングの時は別だけど・・・」


「あいしんぐ?」


初めて聞く言葉に戸惑う亜里沙。


「あ、アイシングは実際にそれが起こった時に説明するね!」


「はい!お願いします!」


しっかりメモを取りながら話を聞くあたり、亜里沙はとても真面目なのかもしれない。


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「で?どーよ?後輩たちの活躍は?」


紅音がスマホに向かって話しかけている。


「頑張ってると思うけど塩原工業強くなったなぁ・・・」


紅音のスマホから声が聞こえてくる。


「相手の感心しててどうすんの!後輩の方が気にならないかねぇ?」


声の正体は大上OBであり、紅音の彼氏である白峰蒼だ。


「仕方ないだろ?イメージと違ったんだから・・・」


「はいはい。ホッケー大好きだもんね〜。こんな時間に試合見るとか私じゃ考えられない!」


蒼は現在アメリカに住んでいるので、時差を考えると普通じゃ起きていられない時間帯だ。


「そう言うなよ。紅音の後輩でもあるんだからさ」


そんな話をしていると横から


「いい加減うるさい!集中できないじゃん!」


「おーおー、我が妹は試合に必死ですなぁ。試合になのか選手になのか」


紅音がからかい混じりに文句を言い始めた綾愛に突っ込んだ。


「いっつもそうやって!マジでウザ!」


そう言いながらグーパンチを紅音の肩にヒットさせる綾愛。


「ちょ!やめて!イタ!暴力反対!ってかスマホ!」


殴られた拍子にスマホを落とした紅音。


「ちょっと!スマホ壊れたら蒼が試合見れないんだからね!」


「じゃあ変なこと言わないの!」


「変なことってなに!あ・・・気をつける・・・」


妹の綾愛に怒られた紅音は、それからイヤフォンをして静かに蒼と試合観戦するのであった。

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