敵から味方へ
「龍!トモ!お前らも大上だったんだ!」
先生が教室を去った後、嬉しさのあまり2人に話しかけた。
「ミヤこそ大上だとは思わなかったよ!よく入れたな!w」
龍がからかうように返答してきた。
「ほんと、俺もなんとか入れたからなぁ」
トモも応える。
「お前らに勉強の話してたっけ?ギリギリだったのには違いないけど・・・」
そうして話していると後ろから声がした。
「おい!」
振り向くとそこには中学全国優勝キャプテンの今がいた。
「お前、青雲中の2番だろ?高橋に回されたダメージは大丈夫かよ?」
こいつ・・・
思い出したくもない、全道で俺がひっくり返されたこと掘り返してきやがった。
「大丈夫に決まってんだろ。ってか、もうあんなことにはならねぇよ」
そう応えると、龍とヒロも小声で俺に聞いてきた。
「なぁ、回されたってなんだよ?」
そんな言葉が聞こえてきて恥ずかしい気持ちになったところで、今が言った。
「いや、気分を悪くさせたならごめん。お前あの時しばらく立てなかったろ?あと、あれは高橋の反則だからそこまで恥じることもないと思うぞ」
そうは言われたものの、全国優勝の看板を背負っているだけに上から言われてる気がしてならない。
不機嫌な顔を俺がしていると、今はこう言った。
「お前が覚えていないかもしれないけど、最後2分でノーマーク取られた時最終ラインにいたのは俺だ。追いつけなかった。」
確かに自分が抜け出た時、逆サイドにDFがいたことはなんとなく見えて覚えていた。
それが今だったということか。
「あの試合、唯一俺が抜かれたのはお前だけだ。だから気になってたんだよ。まさか大上にいるとは思わなかったけど。頼りにしてるぞ」
そう今に言われたが、やっぱり上からな気がする。
「どうも。」
そう答えると、一応握手はしたものの納得できるものではなかった。
「すげぇよなぁ!青雲中のキャプテンに西ヶ峰中のキャプテン!他にも前線で活躍してたやつばっかりじゃん!」
突然大声を出したのは東だった。
「東か・・・。お前も大上だったなんてびっくりだ!」
龍が言った。
「こいつ俺と小学校同じだったんだよ。中学では広西中はそこまで強くなかったけど、こいつ1人で動き回るタイプで嫌だったなぁ」
龍は昔を懐かしむように腕組みをして言った。
「あの、なんか皆さんすごいんですね・・・。俺全国大会も出たことないから、北海道の中学もわからなくて・・・」
そう言ったのは藤澤だった。
「そっか。東京から来たんだもんね。周り知らない人ばっかでやりにくいかもしれないけど、もうホッケー部は知ってるだろ?仲良くやろうぜ?」
そう俺が言うと、安心した表情を見せながら藤澤が言った。
「ありがとう!中学まではみんな敵同士だったけど、今日から味方だね!絶対インターハイ出よう!」
核心の言葉を言われ、全員が雷に打たれた衝撃を受けた。
インターハイ。
そう、ここに集まったのは仲良しではなく、目標があってこその集団だ。
「出るだけじゃない。優勝だ。」
今が言い直すと、その言い方がなんとも固すぎて、全員が笑い始めてしまった。
「なぁ今、インターハイ優勝を目標に頑張るのは当然だが、表情怖いぞ?」
龍が今の肩を叩きながら言った。
「そ・・・そうか・・・。俺だって知り合いいないんだから緊張することくらいあるだろ?」
今が緊張・・・
意外すぎて少しかわいかった。
面白いやつかもしれない。
「さ、帰ろうぜ?ここ3年生の教室だし使わせてもらってるのもなんだし」
俺がそう言うと、「それもそうだな」と言いながら全員が3年生の教室を後にした。
いよいよここから高校部活生活が始まる。
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陸トレが終わり、ミーティングで使用した3年2組で帰り支度をしている3人がいた。
アイスホッケ部3年、清田大地、坂井斗真、伊藤力(イトウチカラ)だった。
「なぁ大地、今年はインターハイ行けるかな?」
斗真が大地に尋ねた。
「行けるように努力するのがこれから俺らがやるべきことだろ?」
大地が堪えると、それに続いて力が口を開く。
「俺たち1年の時にインターハイに出たけど、試合に出てない今の3年も多いからな。最後の年には出て、胸張ってインターハイに出たって言いたいよな。」
他の2人が覚悟を決めたような表情で首を縦に振る。
「そういえば滝澤・・・だっけ?斗真の後輩だろ?どうなの?身体はでかいしなんか戦力になりそうだけど」
そう大地が聞くと、斗真が答える。
「あいつまたでかくなってやがった。ホッケーにも真剣だし、場合によっては秋の大会で戦力になるんじゃないかな?」
すると力が
「ほんといい身体だよな。そして全国優勝の今だろ?DFが豊富だねぇ。斗真、ポジション取られないようにな?笑」
と笑いながら言った。
「ば・・・ばか!簡単にポジション明け渡すかよ!俺だってホッケーには真面目に取り組んでるし!1年に負けるわけねぇ!」
そう言いながら、少し不安な表情を見せた。
「大丈夫だ。斗真はDFの柱だろ。安心して任せられる。というか、しっかり1年DFをまとめて育ててくれよ?」
そう大地が言うと斗真が
「ん〜その面はちょっと不安だなぁ・・・今はプライド高そうだし多分うまいし、ミヤは熱くなりすぎることあるし・・・」
と言うと、力が言った。
「まぁやるだけやるしかないだろ。で、インターハイ優勝しようぜ!」
2人の肩を叩いた力に対し、同時に大地と斗真が
「おう!」
と力強く答えた。
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