迷子

斎藤 三津希

迷子

散歩するのが趣味だったんですよ。

家の近所に散歩コースやジョギングのコースがある大きな公園があるので、

よく散歩するために行ってました。


私「ました?過去形なんですね。」


そうですね。

なんで過去形かってっていうと、

とある事が起きたので

少し行くのを躊躇ためらってて、

確か、二ヶ月程前の事です。

あの日は珍しく散歩じゃなく、

ジョギングをした日でした。

ジョギングを終え、

休憩としてベンチに座っていました。

大きな公園なので子連れの方々が多くて

たくさんの子達がいたんです。

それを休憩がてらボーッとみてると

市からの放送がなったんです。


私「市からの放送?」


はい。子供達が夜遅くまで遊ばぬように

日の入りになり、辺りが暗くなり始めると

市から子供達に『もう帰りましょう』って

放送されるんです。

それで放送が流れたから

友達同士で遊んでる子供、子連れも含めて

皆帰っていくんですが、

なぜか一人、子供が残っていたんです。

最初は親が来るだろうと思い、

休憩を終えて、もう一回ジョギングを行って公園内のコースを一周しました。

そしたら、またベンチに戻って来るんですが

まだ子供が残っているんです。

市からの放送が流れてから結構たってますし

なのに、子供が残ってるのはおかしいじゃないですか。


私「確かにおかしいですね。親御さんはいらっしゃらなかったのですか?」


えぇ、いませんでした。

何処かではぐれたのか、最悪の場合虐待か、

色々考えてみましたが、

とりあえず、話しかけてみることにしました。


以下、その会話の再現

「もう空が結構暗いけど、迷子?」

「……」

「この辺りにお母さんかお父さんはいるのかな?」

「…わからない。」

「んー、そっか、お家はここら辺なの?」

「…わからない。」

「えぇと、名前はわかる?自分の。」

「…たまえ…しゅうや」

「そっか、じゃあ、どうしようっか。名前はわかるから、とりあえず、お巡りさんの所に行こう。」

「…」頷く。


そこから、近くの交番に二人で向かいました。手を繋いで。


私「なるほど、交番に向かっている間は会話しましたか?」


はい。無言だと何か気まずくて、


以下、その会話の再現

「交番は近いから、すぐお家に帰れるよ。」

「ありがとう。」

「いやいや、全然大丈夫だよ。」

「おじさん優しいね。」

「いやー、おじ…さんかぁ、まあ、そうだよね。あっ、交番見えてきたよ。」


交番に着くまではこんな会話でした。

それから交番に着いて、中のお巡りさんに

「すみません。この子迷子なんですが、」と言いました。そしたら、

「迷子?子供…はどこでしょうか?」

一瞬、お巡りさんが何を言ってるのか

不思議でした。

しかし、すぐに言ってる意味を理解しました。

あの子がいないんです。

交番の前まで話していたのに、

ずっと手を繋いでいたのに、

手を離した、離された感覚は感じなかったのに、あの子はいませんでした。

結局、あの子とはぐれたとのむねを お巡りさんに伝えて周辺を探しました。

しかし、見つかりませんでした。

なので、お巡りさんにあの子の名前だけ伝えて、あちらにおまかせしました。

その後は帰宅しましたが、

あの子のことが気になって

出でこないのを承知で

『たまえ しゅうや』と検索しました。

何も出てきませんでしたが、

たまえを田前に変換して検索すれば、

出てくるのではと思いました。

しかし、しゅうやの漢字がわからなかったし、田前があってるかも知らない。

とりあえず、田前だけ打って、

しゅうやの漢字を探そうとしたら、

予測変換に『田前 柊矢』と出てきました。

検索すると一つのサイトがヒットし、

その内容は紛れもないあの子の情報を

求めているサイトで、

息子を探しています。

名前は田前 柊矢です。

どんな些細な情報でも構いません。

何か知ってる方、情報を提供してください。

というものでした。

サイトにのってる写真や

行方不明になった時の服装、全てがあの子でした。

その時、あの子は行方不明の子だったのかと思うのと同時に、

サイトのとある文に気付いたんです。

当時六歳の柊矢は二○一九年に行方がわからなくなった。

つまり、公園で出会った柊矢君は十一歳ではなければ、おかしいのです。

ですが、サイトに記載されている身長一○二センチメートルと、あの子の身長と同じです。私の腰ほどの高さだったので計ってみると同じでした。

つまり、五年間の間、全く成長していないことがわかったんです。

それに突然消えたことも含め

少し、寒気を感じていました。

不安になり、あの子と繋いだ手を見ました。

するとあの子の手形がびっしりと残っていました。手形の部分が赤く、

未だに手形が残っています。


私「見せてもらうことは可能でしょうか?」


はい。これです。

この手形を見るたびに、

あの公園にはかなり恐怖を感じるようになってしまい、今は散歩をするのをやめています。

これが私の身に起きた怪談です。


私「話してくださりありがとうございました。」


いえ、ありがとうございました。





すごい人でしたね。

今回の怪談は私も聞いてて少しゾッとしました。

しかし、本当に怖いのは柊矢君なんでしょうか?

何故ならば、その柊矢君の手形とやらは

なかったのだから、

むしろ手形はおろか傷も無い綺麗な手でした。

最初は私の目が疲れてるのかとも思いましたが、どうみても手形はなかったです。

それを裏付けるように

検索しても田前柊矢君を探しているサイトは出てきませんでした。

本当に恐ろしいのは謎の少年でもなければ、

手形でもなく、それらを見たと錯覚している人なんですね。

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