02:立ちふさがる日常

 一切の白もなく、澄み渡るような青が一面に満ちる空の下。

 その一角に、『庭園ガーデン』と呼ばれている場所があった。


 青々と茂らせた葉を揺らして、地面に落とした影を躍らせる木々と、つい最近手入れを受けたことが伺える、人工的に整えられた形状の茂み。そして緑が立ち並ぶ空間の空白を埋めるように、白を中心としつつそれぞれ微妙に色が異なるタイルによって、綺麗に舗装がなされた道が広がっている。

 そんな道が四方から交差する中心部は、各道幅よりも大きく円形に広がった、巨大な広場とも呼ぶべき場所となっていた。

 さらにその円の真ん中には、流線形を含むデザインの器と、そこから飛び出す清水が太陽光を乱反射する——優雅で上品な印象の噴水が鎮座する。

 まるで超一流ホテルのエントランスか、あるいは一国の王が住まう宮殿の——まさに「庭園」という名が相応しい光景。

 しかしその場所のあちこちで見られるのは、ホテルの従業員でも、あるいは気品溢れる貴人でもなく————


「あぁ~、今日もつっかれたぁ~」

「ほんとほんとー。あ、そうだ。今日暇なら、このままカラオケでもいかない?」

「お、いいね~。いくいく!」

 と、退屈な時間をどうにかやり過ごし、固まった体をほぐさんと伸びをしながらも、この後の予定をどうするか和気あいあいと相談する少女たちに、


「……先輩、随分遅いね」

「ん? あ~、あのパイセンのことだし、どうせまたどっかで道草食ってるんじゃね」

「も、もももしくは、ま、まままた生徒会の皆さんと……」

「その先言わんでいい。察したわ。はぁ……嫌な予感しかしねーけど、とりま一応連絡してみっかぁ……」

 と、待ち人がなかなか来ないのか、噴水広場の時計を眺めたり、手持ちのスマホでポチポチとメッセージを打ち始めたりする少女たち。


「ねえねえご存じ? 最近近くに新しいカフェができたらしいんですの」

「え、貴女も知ってたんですか? どうやら噂によると、そこのスイーツが絶品らしいですよね!」

「あら、お耳が早いですわね。私たちも近いうちに、足を運んでみませんこと?」

「いいですね! あ、でも今月はお小遣いが……」

 また、最近話題のあのお店の話から様々な雑談へと、ベンチに座って楽しげに、しかし身に着いた礼節が滲み出る優雅な所作で談笑する少女たち、などなど。

 

 それは彼女たちにとって当たり前なようでいて、しかし周りから見ればどこか輝かしく見える光景。

 それは若者たちが、いまこの時しか過ごせない思い思いの時間を送る、なんでもない「青春」の一幕。

 キラキラと光を瞬かせながら、絶えず宙へと噴き出し続ける清水に映っていたのは——そんないつも通りの日常を送っているだけの、姿だった。


 ——そう、実のところ、この『庭園ガーデン』と呼ばれる場所は、ある学園の敷地内に存在するエリア——つまり、である。

 それを示すかのように、噴水広場にいる少女たちはみな、各々の装いに個性はあれど、基本的に同じような白い制服を身に纏っている。また、その胸元や腕部などには、円形の紋章のような刺繍が施されていた。

 そして彼女らと同じく純白の制服を着込んだ人影が、中央の噴水広場から外れたところにある、木陰にちょうど隠れたベンチにも——ひとつ。


「……はぁぁぁぁぁ~」


 青空の下を吹き抜ける爽やかな風に、魂が抜けたかのような声が混ざり込み、そのままどこかへと流されていった。

 脱力感の滲むその声色のイメージ通り、ベンチの背もたれに深く体重を預けているその人影は、再びやるせない気持ちを載せた息を吐きだす。


「……なんでいつもこうなるのかなぁ……ぐすん」


 もたれかかったベンチの後ろから滝のように流れ落ちた、制服よりなお白い長髪の持ち主は、横に置いておいた鞄からスマホを取り出した。

 スマホから吊り下がった、小さなショートケーキのアクセサリーが揺れると同時、液晶へ明かりが灯る。

 青空をまるごと閉じ込めたかのような蒼玉サファイアの瞳は、上下に画面をなぞる白い指先と、その動作に応じて流れゆく液晶上の文字を反射していた。

 下から上への文字の流れは、ときおり止まっては数秒の間を経て再び動き出し、を何度か繰り返すと……やがて。


「——うぅぅ……わたしの、げんていすいーつがぁ~……」


 ——つぅ……、と。

 閉じられた目の端から溢れた液体が、天を仰いだ顔の側面を重力に従い下へと伝っていった。

 きらり……と悲しげに瞬いたそれは、一筋の湿った軌跡をその頬に残していた。

 スクロールが止まった画面に表示されていたのは、時間的にはちょうど今さっき発生したらしき、とある事件の小見出しだった。


 ——『有名カフェ、オープン日に店舗半壊。本日開催予定の開店記念イベントは中止が決定。延期開催の有無は未定』

 

 記事のトップには、当時の現場付近で撮影されたと思しき写真。

 物騒な銃器やら釘バット、巨大ハンマーに爆弾などの武器——もといを構えて衝突する少女たちの背後で、建物から爆炎が噴き出している様子……という、言葉で語るだけでなんとも混沌カオス極まる写真。

 パッと見で理解可能な情報量を超過しまくったそれこそが、彼女の涙の理由を物語っていた。


 ことは、一時間ほど前に遡る————。

 


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 カフェ『ドルチェ・ド・ルーチェ』がある通りへの曲がり角へと、期待に胸を膨らませて着いたわたしを待っていたのは、甘いスイーツでも、それを待つ人たちの長い行列でもなく。


 「………へ?」


 ダダダダダッ!! ドゴッ!! バキッ!! 

 ————ドカァァァァァァァッァァァァァァァン!!!!!


 鳴り響く銃声らしき破裂音やら鈍器の重い打撃音、次いで鼓膜を大きく震わす爆発の轟音と。

 予想外も予想外、全く想像もしていなかったお出迎えに思考が一瞬止まったわたしは、気の抜けた声を漏らす。

 そして大きな音に続くようにやってきた爆風にあおられたせいで、そのまま後ろにのけ反ってしまうが——取り返しがつかないほどズレた重心を支えてくれるものは、ない。


「うわぁぁぁぁっ!? ちょちょちょちょちょ……あ痛ぁっ!!」


 ……もちろんバランスや受け身など取れるはずもなく、そのまま後ろに倒れこんだ結果はお察しの通り。

 かなり強めにお尻を打ってしまった。じぃ~ん……と響くような感じでなかなか痛い。

 もしわたしがうら若き乙女でなかったら、世界の至宝とも称すべきぷりぷり桃尻がこのまま致命傷を負っていたかもしれない。


「わ、若くてよかった! 美少女バフばんざい!」


 などと、割と本気で涙が出そうなレベルの痛みをどうにか誤魔化そうと、無理やり明るい声で茶化してみるものの——正直あんまりお尻の痛みは消えてくれないのだった。


「……うぅぅ、お尻は痛いし、それにいろいろ乱れちゃってるし……。もぉ~、せっかく整えてきたのに!」


 さらに荒ぶる強風やそれに伴う砂埃のせいで、出発前に慌ててセットした髪は乱れ、急ぎながらもきっちり整えてきた私服にはシワや埃だらけと散々な状態に。

 不満を評すべく口を尖らせるも、それに謝罪を返してくるような相手は案の定、いるわけもなく。

 未だひりひり痛む腰をさするのを中断し、状況を把握しようと正面に向き直った、その矢先だった。

 ————カンッ、となにか固いものが地を打ち、足元に向かって転がってくるような音。


「ちょっと、今度はいったい何が——…………え」


 意識外から来たものに反応が一拍遅れて、足元で止まった音の発生源それに視線を向ける。

 ——えっと、なんだっけこれ。

 緑とか茶色が混ざったみたいな……なんか迷彩に使われてそうな色味の、何かの木の実みたいな形をした、手のひらサイズの物体。

 ここ最近も見たような気がするけど……なんていうんだっけ。

 あ、そうだよ思い出した! そうそう、この小さくて丸いのは——


「————~~~~っ!?」


 ——現実逃避と唐突すぎる状況が、それぞれ半分ずつ原因となって生み出された反応の遅れ。

 致命的な間をおいて素っ頓狂な叫びをあげたマキナは、既に手遅れかもしれないながらも、半ば反射的に手を動かしていた。

 生物の危険本能が働いたのか、もしくは走馬灯か何かの類か……彼女は周囲の時間がゆっくり進んでいるような感覚に陥る。

 そうして徐々にスローと化していく時間の中で、背後に背負ったものへと手を伸ばすが——しかし足元に転がる破壊の果実は、ゆっくりと、僅かに膨らみ、ついに————。


 「まず——っ!?」


 ドォォォォォン————ッ!!!

 

 少女の身体のすぐ横で炸裂するそれは、遠くからの余波に過ぎなかった先程の爆風とは、比較にならない威力となって襲い掛かる。

 そして刹那、鼓膜を破かんばかりの轟音と、熱と共に弾ける火薬が生み出した爆炎が、未だ体勢を立て直せず無防備なままの美少女の身体を包み込んだ。

 

 熱が触れるものを焦がし、衝撃が立ちふさがるものを弾け飛ばし、飛び散る破片が命を削り取る——あまりにも凶悪な武器……!

 その威力をモロに、密着にも等しい至近距離で食らった可憐な少女は、もはや無事なはずもない……。

 やがて手榴弾の爆発で起こった煙や砂埃が、大気へと拡散し薄まっていくと、そこには哀れにも無残な肉塊と成り果てた、血みどろ少女の姿————


「けほ、けほっ……な、なんとかセーフ! あぶなかったぁ~……!」

 

 ——ではなく、そこには埃まみれで地に背をつけながらも、しっかりと五体満足のまま生きている少女マキナの姿があった。

 咳き込みつつも溌剌はつらつと発されたその声は、彼女が無傷でピンピンしていることを物語る。

 まるで先ほどの手榴弾による爆発が幻だったかのような——そんな、何事もなかったかのように振舞うその様子。

 しかしながら、視界が晴れて現れたその姿には、爆発に包まれる以前と異なっている点が——二つ。


「やっぱり天下無敵の美少女バフのおかげ、だよね~っ? な、な~んて……」


 一つ目は——どこから持ち出したのか、寝転がったままのマキナの付近に転がる、その身の丈に迫る大きさの長方形——いわゆる「防弾盾シールド」と呼称されるもの。

 巨大かつ分厚いシルエットのそれは、華奢な女学生には見合わない重厚な印象を与える。また彼女の髪色と同じく白に塗装された表面は、若干の焦げ付き痕が残る以外に一切の細かな傷も見られない。

 およそ彼女の可憐なイメージとは噛み合わないような、やたら物々しい装備の存在が、その場における第一の変化だった。


「——ふざけてる場合じゃなさそう……だよね。うん」

 

 唐突に訪れた危機的状況への自己防衛だったのか、さっきから内心で茶化すような地の文ナレーションを入れまくっていたマキナは。

 ついさっき自らを襲った危険と、眼前に広がっている光景から、今この場は「そういう空気」ではないことを察した。

 スカートについてしまった汚れを払いのけつつ、彼女はゆっくりと立ち上がる。

 だが、大きな盾に手を添えて立つその身体には、ある異変ものが現れていた。


 これこそ、装備シールドに続くもう一つの変化。

 すなわち二つ目——それはマキナの後頭部に重なるようにして浮かぶ、光で描かれた紋章のようなもの。

 物理法則を完全に無視し、空中へ直接描かれたかのようなその円形の記号は、淡い桃色の光を放っていた。

 七等分された円のようなマークを中心に、幾重もの円と翼のようなシルエットが囲い込んだ形のそれを浮かべたまま——マキナは盾を支えているのとは逆の手を口元に添える。


「むむむ……それで、この状況はどうしよっかな~……」


 彼女は先ほどから眼前に広がっていた光景を、「またか……」とでも言いたげな困り顔で見ていた。

 自身を唐突に襲った轟音、爆風、そして手榴弾といった、危険極まりないものが次々とやってくる方向——本来なら向かおうとしていたカフェがあるはずの、その場所には。

 ——端的に表すならば、『』が広がっていた。


「あたしの銃弾をくらいやがれぇぇぇぇぇぇ——ッッ!! どりゃぁぁぁぁ!!」

「あぶっ!? や、やりやがりましたわねぇ……!! ならばこちらからもお礼を差し上げますわぁぁぁぁぁぁッ!!」

「どわぁぁぁぁっ!?」

「ちょちょちょ、待ておいバカこっちくるな巻き添————ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」

「くそっ、身内がやられた! こうなったら……おい、お前ら!! こいつの仇を打つぞっ!!」

「!? なんなんですの貴方たちは!? 敵ですの? 敵なんですのね!? それでは出会いの印に——この、お手榴弾でもくれてやりますわぁぁっ!!」

「んなもん——要るかぁっ!!」

「なっ!?」

「まさかのフルスイングで打ち返した!? すごいなおい!?」


「あぁ~~~…………」


 熾烈極まる戦闘の最中、「カキーン」なる甲高い音と共に流れ弾——もとい手榴弾が放物線を描いて飛来し、コロコロと足元へ転がってくる。

 しかし少し前とはうってかわって全く焦る様子もなく、マキナはむしろ何故か遠い目をしており。

 脱力するようにため息をつくと、ついでのように軽々と左手で巨大な盾を構え——自身と手榴弾の間へと滑り込ませた。

 直後、空気を震わせる破裂音と衝撃が周囲を駆け巡る。

 

「ふぅ、よっこいしょっと……それにしても、また結構大変なことになっちゃってるなぁ~。原因はなんか想像がつくけど……」


 身の丈サイズのシールドで防御体勢をとっていた彼女は、今度はまるで、もう何度も体験してきたかのように淡々と、手慣れたように爆発をやり過ごして。

 右の手の平をひさしのようにかざしつつ、少し遠くへと視線を飛ばす。


「あそこで戦ってるのは——うん。制服を見た感じ、うちの学園とゲーティアのところの子たちっぽいね。まあ正直、そんな気はしてたかな……いつも通りといえばそうだし」


 そうこうしている間にも戦闘の流れ弾やらなにかの破片が次々飛んでくるが、やはりマキナには特段、意に介する素振りはなく。

 前方で繰り広げられている混乱を観察しようと、彼女は妙に落ち着いた様子で目を凝らしていた。

 すると視界の一角に、白い制服の二人と黒い制服の二人が、戦いの最中に何やら口論している様子が映り込む。

 

「流石はゲーティア生とでも申しましょうか……! 戦い方もまた、普段の行いのように行儀の悪い戦法ばかりですわね!」

「あぁ!? てめぇらお高くとまったカンターレのお嬢様どもらの方が、よっぽど性格が悪いじゃねーか!!」

「そうだそうだ! 行列に使いっ走りを並ばせといて、後から横入りしようとしてただろ!!」

「あら? 並んでいただいてたのは「」で、全員もともと一緒のグループでしたし、私たちは予定がありましたので後から合流しようとしただけですのに——」

「嘘つけ! そんなんお得意の『建前』ってやつだろ!?」

「ふん、言いがかりも甚だしいですわね。何か証拠でも?」

「いや合流人数多すぎんだよ! 十人近く入ろうとしてたろ!? 常識的におかしいだろうが!!」

「なんと、これはまあ……ゲーティアの野蛮人に常識を説かれる日が来ようとは……!」

「こ、こいつらぁ……ッ!!」


 張り上げられた怒りの叫びと、それに対して大声で返される煽りは、戦闘による大きな雑音の中でも、比較的容易に聞き取ることができた。

 もう察しはついていたけれど、いまの話を聞くに、戦闘のきっかけは『ドルチェ・ド・ルーチェ』の限定スイーツを求める行列の並びでの、ごく小さなグループ間による小競り合いだったのだろう。

 しかしそこにいる学生の多くは、カンターレとゲーティア——多様な学校が存在するこの学園都市でもで知られている、もはや互いに不倶戴天の相手といってもいい組み合わせだ。

 その最悪のマッチングの結果、小さな種火が導火線へと移るように——周りの学生かやくを巻き込んでいき、最終的には行列に並んでいたほぼ全員による大規模戦闘に転じてしまった——と。


「——きっと流れはこんなところかな~……。はぁ、どうして毎回……今度はどうしよう……」

 

 そしてそれまで遠くを見ようとして細めていた両目をそのまま、呆れを意味するものへと変えながら、マキナは既にこの先どう行動すべきか思考を巡らせていた。

 自分がいる場所からカフェのある建物までの道の各所で、爆炎やら破片が飛び交う衝突が巻き起こっている。

 つまり、歩道から道路まで全てを巻き込んだ規模の戦闘だ——流れ弾なり二次被害を防ぐため、お店などはシャッターを下ろしてしまう可能性が高い。

 最悪の場合、このままどうにか切り抜けて進んだとしても、限定スイーツが手に入らない可能性もある。


「……むむむむむ……いや、でも」


 現状掴める情報からすれば、正直目的達成は困難という他にない。

 だが彼女は顔を上げ、何かを探すかのような素振りで、もう一度目の前の状況へと視線を向けた。


「行列待ちがきっかけなら——戦いの中心は、カフェから少し離れてるはずだよね。それなら、まだお店を閉じてない可能性も……?」


 元はといえば、有名なブランドのカフェ——そのオープン記念のスイーツを求める人たちの列だ。きっと、お店の前からは長い行列ができていたはず。

 お店の前から遥か遠くまで続く列の中で、並び順関係の揉め事が起こるとすれば——そこは多分、列の中間あたりから最後尾までの区間……だと思う。


 ————だって少なくとも、わたしなら。

 お店の目の前まで来たとき……頭がスイーツへの期待でいっぱいで、争っている暇なんてあるはずがないんだから。


 今の状況が出来上がるまでの流れを、その場にいたであろう人たちの気持ちまで想像しながら組み立てていく。

 それはあくまで、仮説。それでも、僅かにスイーツをゲットできる可能性があるとするならば——と。


「それに『ドルチェ・ド・ルーチェ』のブランドといえば、特にスイーツへのプロ意識の高さで有名だもんね。ちょっとやそっとのことじゃ——」


 ——そしてわたしは、黒煙と炎と怒号が上がる景色の中に、ついにそれを見つけ出した。

 少しだけ煤に汚れているものの、お洒落な書体で『ドルチェ・ド・ルーチェ』とあるのが読み取れる看板と、爆風にあおられたのか、その店先で横倒しになっている「OPEN」の文字列を。


「————うん、やっぱりそうだよねっ! よかった、開いてるみたい!」


 自分でも希望的すぎたとは自覚しているものの、しかし可能性はあると思っていた推論。

 それを後押しする証拠を、銃撃と爆発が満ちる茨の道——その先に見出して。


「なら、わたしがやることはひとつ……だよねっ?」


 メラメラと燃え上がる炎が背後に可視化できそうなまでのやる気を瞳に満たした少女は、向かうべき場所のただ一点——遠くにて構えるカフェの看板を見つめながら、静かに手元のシールドを構え直すのだった。

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