第16話 名付け

『ごわごわしてあんまり感触は良くなけど、瓜坊やっぱりお前めっちゃ可愛いな!』


 ふわふわタイムもといごわごわタイムを堪能している俺だが別にずっと遊んでいたわけではない。


 夕食を食べる際にジキルに仕事はないかと詰め寄ったり、怪我をして歩けなくなった猿を担いだり、後瓜坊の名前を考えたりと色々と自分に出来ることをしていたのだ。


 筏は手伝わないのかと思われるだろうがその件は諦めた。あのでかいゴリラが来てからあの筏の組み立て作業は全てソイツに一任されてしまったのだ。そのせいなのか、前まで筏と思っていたものは今ではちょっとした小舟並の大きさになっている。


 勿論設計や材料調達はジキルや動物たちがやっていて、今更俺の立ち入る隙間は無いということだ。おめぇの席ねぇから!である。


『怠惰デスねぇ…』


 暇過ぎて脳が震えてしまう。でもジキルは俺には少しの簡単な仕事しか与えてくれないのだ。俺が役立たずだからという訳ではなく、今だに俺を主人と呼び優遇し続けているからだ。


『やっぱり最初の出会った時に何かがあったってことだよなぁ。俺覚えてないけど』


 あの俺に向ける忠誠心はどう考えても可笑しい。妖怪の仕業でもない限り俺が原因と考えるのが妥当だろう。だからと言って責任追求されても困るが。


 アイツに勇気を出して聞いてみても「私は目が醒めたのです」の一点張りである。掘り下げたくてもそう自信満々に回答されてはこちらもこれ以上は聞きにくい。



「フゴフゴ」


『ん?また撫でて欲しいのかお前は。よしよし愛奴だなぁほれほれぇ』


「フギュー」


 足に擦り寄って来た瓜坊を撫でながら俺は疲れた心を癒す。コイツの名前の件だが、最初はロケット生肉とか考えてたけどそれは流石に可哀想なのでやめる。ということで———


『お前の名前はロミーだ』


「フギュ!」


 決して raw meat生肉から取ったわけじゃないよ?本当だよ。


「フゴゴ」


『おお!そんなに気に入ったかぁ!じゃあねロミー、お手!』


「フキュ!」


『それは鼻だけど可愛いから良し!』


 手のひらに鼻を乗せたロミーを再び撫で回す。前世では犬も猫もどちらも買ったことがある俺だが、猪を見て触れるのは初めての経験である。


 まだ子供ということもありまだ体は小さく顔も獣特有の厳つさはない。目が宇宙なのは気になるが今更であろう。あと一言言うならば獣臭さがやはりあるのはどうにかしたい。日頃から嗅覚を遮断し続けるのも違和感があるのでしたくはない。


『よしロミー。暇な者同士水浴びでもするか!』


「フギュ!」


 向こうで皆んながあくせく働いてる側で何もせずにいる事への罪悪感を無視出来なくなった俺はロミーを抱えてすたこらさっさと川に逃げたのだった。

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