第15話 君に会いたい

ウゾダドンドコドーン嘘だそんなこと!』


 俺はジキルに見事虚しく振られ、深い絶望に飲まれた。


 俺が魔法少女ならこの瞬間魔女になっていただろう。


 または絶望して新たなファントムを産み出していたかもしれない。


 どっちも素質が無ければ起こらないケースで、そして今世でも俺は持たない側の人間人外であったが。


 ジキル曰く、俺には魔法の素質が無いとのことだ。


 その素質とやらも回りくどい言い方であったが、要するに俺の肉体構造が一般的なものとかけ離れていることが問題らしい。


 つまり臓器。ファンタジーっぽく言うと”ゲート”と言ったところである。


 転移なら納得いくが、なんで転生したこの身にそれが無いのだ。もし転生させた神様とやらが居るのであればヨナ書のヨナのごとく怒りをぶつけただろう。勿論俺は諭されようと反省なんてしないが。


『逆に…アム…考え…ハム…るんだハム』


 不貞腐れてオンドゥル語を話し始め、ジキルに慰められた後、俺たちは前に考えていた脱出島を再開することにした。


 まぁ、今の光景を見ると俺になるが…


「そちらの木材はD班に、貴方方G班は足りなくなったツルを探してきてください。あなたは——」


 何処から出てきたのか全く見当つかない動物たちに指示を出すジキルと、目に宇宙を宿した従順な動物たちが船を組み立てるこの光景。


『どう…ジャリ…して…シャリ…こうなったウマ』


 俺の居場所そこにはなく、離れの木陰で用意された氷菓子を頬張ることしか出来ない。


『スタッフが脱出に手を貸すとか、完全にヤラセじゃないか。そりゃ炎上する訳だ…。あ、お代わりありがとう。瓜坊も一緒に食べる?いいの?そう、ありがとね』


 さっきからお代わりを補充してくれる猪の子供に手を振りながら俺はどうにか作業を手伝えないか考える。


『かゆうま』


 ダメだ。美味すぎる!毎度変えてくるシロップが俺の食べたことない未知の味で手が止まらないのだ。


 イチゴに近いと思ったらバナナの様なまろやかさも感じるとか反則である。人生のフルコースを作るとしたら絶対にデザートはコイツに決まりだ。




 ………………。

 ……………。

 …………。


『俺が行っても、邪魔になるよな』


 悪魔の囁きが聞こえるが俺の本心でもあ

る。


 俺は前世の頃からこういう皆んなで何かを成そうとする事にとことん向いていなかった。勿論わざと手を抜いたりはしていない。でも感じてしまうのだ。俺は必要ない、と。


 本音を隠し続けて生きていることに不満を感じていた俺は、周りの皆んなと本当の気持ちで接したことはないことに距離を感じていた。


 友達はそれなりにいた。好きなアニメや漫画や番組で笑い話ができる程度に幸福な人生だった。でも、そんな奴らとも俺が本当に通じ合いたいところでは分かり合える日は来なかった。


 皆んなの好き面白いと俺の好き憧れは違うのだ。


 だから魔法のあるこの世界ならきっと会えると思ったのだ。俺の好き憧れの理解者に。


『ま!そんな期待も裏切られそうな感じがし始めたけどねアム!うーん、冷たい!』


 何だか暗い気持ちになったので残り半分を掻き込み一息つく。


 どうやって味覚を感じてるのか疑問な体だが、どれだけ氷菓子を食っても頭が痛くならないのは素晴らしい。


 舌も唇も無いのにどうやってカトラリーから食べ物を外してるとか、そういう疑問は考えてはいけない。ふ◯っしーのイリュージョンと同じだと思えば良い。


『出来れば生で見たかったなー』


 妖精だし魔法使えるかなと前世では俺の憧れの対象だったが、ある時からテレビに出てくれなくなりそれはもう悲しんだものだ。


『食べてばっかりも飽きてきたし、そろそろ行きますか!瓜坊も毎度毎度頭に皿乗せて大変だろうし』


 こんなに愉快な動物達が居るならなんでもっと早く出てきてくれなかったのだろう。俺は孤独のサバイバルを嘆いた。だが今は皆んなが居る。もう何も怖くない…!


『おーい瓜坊!ちょっとその毛触らせて!』


 筏造りを手伝おうと思ったら森から馬鹿でかいゴリラが出てきたので、俺は回れ右で瓜坊と遊ぶことにしたのだった。

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