第12話 自己紹介は目を見てしよう
ヤバい…。
『う、ううぅ……』
頭痛が…、ていうか変な夢見たし…。
『幼女に骨抜きにされるって、側から見たらただのロリコンじゃねぇか…』
マジでよく分からん夢だった。印象的だった部分以外は霧がかって思い出せないが、それよりも頭の中がごちゃごちゃして気分が悪い。
『…よし、二度寝』
体調が良くない時に1人で無理しても結果は出ないのだ。そう言い訳しながら俺は再び布団に潜ろうと———ん?
『えっ布?』
指先から伝わるこの感触、間違いなく羽毛布団!
いやなんで無人島に布団がある。俺はデジャブを感じながら起き上がろうと———
「お目覚めでしょうかご主人様」
横に誰かいた。
「先日は大変失礼致しました。主人への無礼はこの首を持って清算するべきと考えましたが、今の貴方様は側仕えを持っておりません。ですので先の失態を挽回する機会をどうか私めに戴きたく、何卒貴方様のお側に置いてはもらえないでしょうか」
—————は?
————んん?
———えーと…
——うーーーん
「あの、ご主人様?」
『あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!』
「—は、はい?」
困惑させてスマンがこっちもふざけながらじゃないと整理出来ん。
『俺は船の前で誰かに話しかけられたと思ったらいつのまにか眠っていた…』
「…?、…はい」
『な、何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何が何だかわからなかった…。頭がどうにかなりそうだった…』
ふざけている間も既に俺の頭は限界で大量の存在しない記憶で精一杯だ。知らんアニメのダイジェストを複数同時に視聴している感覚に近い。前世でもしたことはないが…。
それに加えて目の前にいるコイツである。誰だよご主人様って、今回が初対面だろが。
「もし体調が優れないようでしたら——」
『少し待て。今考えてる』
もし目の前にいるのが可愛いメイドさんならさっき言われた言葉も今まさに蝕んでいる頭痛を無視して無理矢理飲み込めたかもしれない。
俺の異世界に行けたら会いたい人ランキングNo.1は美少女メイドである。メイド喫茶で働くのではなくそういった身分として主人に支え、給仕するメイドに俺は会いたい。
『だが男だ』
相手は体も声も紛うとこなき男である。執事も悪くは無いが声から察するに年は20代をまだ超えていない。俺の好みは熟練の老執事なのだ。
……そろそろ、一番の問題に触れなければいけない。
痛覚を遮断しても残る不快感をなるべく無視しながらどう切り出していくか考える。
まず顔を見て話をしよう…。
例えそこに目が無くてもするべきだろう。
『名前を、聞いてもいいですか?』
言葉は、伝わっていると思う。何故ならさっきの言葉も日本語ではないのに俺は理解できたのだから。
「……申し遅れました」
少しの間を開けて男は腰を下ろしたまま器用に頭を下げ、支える新たな主人に名を告げる。
「私はジキル。ただのジキルと、そう呼んでくだされば幸いです」
それは過去への決別を含める事を人外が知るはずもなかった。
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