第9話 千里眼

『まさか無人島だったとは…』


 読めなかったこの人外の目を待ってしても!


『山の人外、一生の不覚!!』


 ……遊んでないでそろそろ現実に戻ろう。


 夕日に感動していたのに、森の外には海が広がっていたことに気付いて現実逃避してる俺だが異世界ライフを諦めた訳ではない。


『逆に考えるんだ…』


 何事もポジティブに考えれば良いのだ。昔、好んで見ていた番組に芸人が無人島から自然物、漂流物を使って脱出するという企画があった。まあ…、ヤラセだのなんだのが発覚して今では見れなくなったのだが。


『まさか脱出島を出来る日が来るとは!』


 ふふっ、やってみたいと思ってもただ妄想の中でしか出来なかったことが叶うとは流石は異世界!


『唆るぜこれは!』


 やる事が決まったのなら後は行動あるのみ。もう肘の手前まで突っ込んでいた右腕を引っこ抜き海岸を見据える。筏を作るなら広く使える浜辺が適しているだろう。そう思い砂浜を見つけた俺の視界に小さく映ったのは


『え、船?』


 打ち上げられ、あからさまに流されて来ましたと言わんばかりの船があった。木製の帆船で、かなり大きいように見える。帆には紋章のようなものが描かれていた。


 なんで双眼鏡無しで山の上からそんな事が分かるんだよと思うだろうが人外だからとしか答えられない。凄いね、目を凝らすと甲板の板の数を数えられるんだぜ?どこのアーチャーだよ。


『でも流石に日が落ち切ったら何も見えないし、今日はここで野宿だな』


 やると言っておきながら寝ようとする己の太々しさに辟易しながら俺はその日を終えた。

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