第3話 俺たち・1
というわけで、じいちゃんのやっている温泉に来た。
ここは俺の母方のじいちゃんがやってる温泉。日帰り温泉がメインで、露天風呂をいくつかやっていて、酒の飲める足湯もあるし観光客がちょっと遊ぶのにちょうどいいやつだ。一応宿泊もやってるけどそっちはサブって感じ。じいちゃんは料理が上手で、でも本格的な料理ってよりは田舎の家庭料理寄りだから宿泊で出す料理は人を雇ってる。
温泉街特有の、蒸した湿気に覆われた街は観光地然としていなくてどちらかというと穴場の雰囲気だ。通行人はまばらで、さんざん通って世話になってる俺から見てもお世辞にも活気があるとは言えない。ほこほことガスの混じった特有の香りのする川が流れている以外は寂れた商店街が立ち並ぶ寂れた街並みだった。黒い岩がいくつも転がっている上流の川からはほこほことあたたかいガス混じりの蒸気が上がっている。ここは源泉が近い。
「じいちゃん、ただいま~!」
「おい、待て、まだこっちは初対面なんだぞ」
※※※
「宿泊客か?珍しいな。ここにはなんもないぞ。穴場だ秘湯だと言われてもてはやされているが、あるのは温泉と寂れた街だ。自分で言うのもなんだが飯も大して美味くないし絶景があるわけでもない。ただの寂れた温泉街だ。悪いことは言わないから他んとこ行きな」
俺のじいちゃんは
「忠告ありがとうございます。私は客は客なんですが、その、あなたのお孫さんに紹介されて来たんです。
「なんだと?俺の孫?辰一に聞いて?…俺の孫が死んだのを知ってデマカセ言ってんじゃねえだろうな?だったらお前の顔が潰れるまで殴ってやるぞ」
「信じていただけないなら帰りますが……あっ、帰りどうしよう。ここに泊まるつもりで来たから足のこと考えてなかった…」
「………仕方ない。ここへのバスは一日に片手で数えてお釣りが来るほどしかない。もう最後のバスが終わってるはずだ。ここらへんで宿泊できるのはここだけで、後は2つ隣の町まで行かなきゃならん。お前さんが辰一の友人かってのは一旦置いといて、泊めてやるよ。ここらは山からサルもクマも来やがる。そんなとこに客おいていけるかよ。全く…」
「ああ…すみません。ありがとうございます。」
「じいちゃん、相変わらず元気そうでよかった」
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