第2話 俺と柳
前略、幽霊になった俺はなんでか柳龍一のところに化けて出たあと突然消えていなくなり、なんでか4年後の現在に俺はまた化けて出たらしい。
本気で意味がわからん。
意味っていうかなんもわからん。俺もなんでこんなことになってるのか知りたい。
どうせなら死んでから幽霊になってからずっとこいつとバカやったり友達でいられたらよかった。
4年ものブランクがあったら、もう俺の知ってる柳じゃないかもしれない。
俺の知ってる柳なんて本当はいなかったと、俺は気付いてしまう。俺は夢を見ていたかった。夢を見ていたかったんだよ。気付かせないでほしい。
俺は好き勝手心の中でこの不条理に文句を言った。喚き散らしたかった。
どうしてこんなひどいことをするんだろう。この世に神様ってやつがいるとしたら俺も殴りに行きたいね。
とりあえず俺は平身低頭謝って、謝った。土下座したら柳は蔑むような目で「そういうのやめろよ!」って怒った。ふざけたつもりはなかったんだけど、ごめん。
4年の間に起きたことについてはあんまり話さなかった。
いつもみたいに柳が俺にカステラを供えてくれて牛乳を添えてくれた。いつもの日常だった。俺の知ってる柄の湯呑に牛乳が注がれて、知ってる柄の小皿にカステラがひと切れ置かれた。俺はすごく嬉しかった。
「ありがとう、柳」
俺が笑ったら、柳もめんどくさそうにふてくされて顔を背けてた、だけど笑ったのを俺は見た。笑ってくれた。よかった。
「え?俺の実家に?なんで?」
柳が俺の実家に行きたいと言った。というか、いつも友達として線香をあげに行っているととんでもない報告をしてきた。
俺の家に、柳が?行った???
俺たちは友達でもなんでもなかった、俺が勝手に友達になりたくて、こうなってからまるで友達だったかのように俺が嘘を吹き込んだだけだったのに。もちろんその時柳は困っていたしいつか本当の友達になれたらなって夢を見てた。そんな、それだけのことを、それを柳は4年の間に大切にしてくれたらしかった。なんてやつなんだろう、なんていいやつなんだろう。
俺の心情はともかく、柳が言うには俺の実家に「友達として」赴き、盆と彼岸の年3回も俺の親と付き合いがあると言う。俺より実家に帰ってら。
それじゃあと俺が提案したのは。
「じゃあさ、今度は俺のじいちゃんとこに行かない?じいちゃんは全然現役で田舎で日帰り温泉屋さんやってるんだけど、そこに一緒に行ってみない?」
「おじいさん?実家ではそのようなことは聞いたことがないな。そうなんだ」
「うん、母さんとじいちゃんはちょっと仲が悪いから…だけど俺のことはじいちゃんはすごく可愛がってくれてて、きっと今も俺のこと待ってるだろうから、俺は目に見えないけど行ってやりたいんだ。だから柳も付き合ってくれない?」
「そうか。いいよ。」
「即答すぎ!もうちょっと考えたほうがいいぞ!お前って本当、騙されてそうで怖いよ」
「お前の言うことだから信じられるんだよ、バカ」
俺はまた耳の先まで真っ赤にしてしまった。
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