第2話 滝塚市黄海山事件―プロローグ
頭部にメスが入れられた。正確にはメスに類似した、人類の科学技術が及ばない高度な医療機械が。
近未来的な白い手術室のような部屋。中央に手術台。周囲には先端がガラス張りになっている銀色の円筒が幾本も存在している。そして、その全てに灰白質の物体が納められていた。
灰白質の物体から伸びるコードは、ガラス内部で会話装置、聴覚装置、視覚装置に接続されているが、今は電源が切られているようで機能していない。
そして今、新しい灰白質の物体が手術台に横たわる成人男性から取り出された。それは鋏のような手に優しく掴まれて、新しい銀色の円筒に納められる。
それを恭しく納める者たちは、もちろん人ではない。
それらは背丈が約一メートル五十センチ程度の桃色がかった体色をした生き物たちだった。甲殻類のような胴体に大きな背びれというか、膜のような翼が付いており、関節肢が数組付いていた。
そして、普通なら頭のあるはずの部分には、非常に短い触手に覆われた渦巻き状の楕円体が付いている。時折それが光を放つ。どうやら、それで意思疎通を行っているようだ。
その怪物たちは脳を摘出した成人男性の頭に何かを詰め終えると、彼を手術室の外へ運び出した。しばらくして、気絶した少女が運ばれてくる。
ロングスリーブシャツにハイキングパンツ。どうやらハイキングの途中、この怪物の魔の手に落ちたらしい。彼らは少女をそっと手術台に寝かせると、鋏でメスを握った。
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