第6話

時は、4月13日の正午過ぎであった。


ところ変わって、今治市東鳥生町しないひがしとりうまち日本食研ショッケンの工場にて…


休憩室にいる従業員さんたちは、お昼のお弁当を食べていた。


智大ともひろは、青色のキャリーの中からお弁当箱を取り出したあと中身をゴミ箱にすてた。


その後、智大ともひろは幸せな表情でお弁当を食べている従業員さんのもとへ行った。


従業員さんが食べているお弁当は、きのうのお見合いバスツアーで出会った女性の手作りであった。


(ドカッ!!)


思い切りブチ切れた智大ともひろは、従業員さんを右足でけとばしたあと怒った声で言うた。


「おいクソガキ!!」

「なんだよぅ〜」

「食わせろ!!」

「食わせろ?」

「幸せな表情をしているオドレがいらつくのだよ!!」

「ふざけるなクソアホンダラ!!オメーは給与引きで注文した弁当食えばいいんだよ!!」

「クソアホンダラはオドレだ!!…おい、食わせろ!!」

「分かったよ!!食いたきゃ食え!!」


このあと、智大ともひろは人のお弁当をガツガツと食べあさった。


さて、その頃であった。


ところ変わって、智大ともひろの実家の大広間にて…


実家の大広間に汐夏しおか紗希子さきこ双海ふたみからお越しになった汐夏しおかの両親・きよか・やすあきと温大はるとの母・綾乃あやのの5人が座っていた。


テーブルの上には、緑茶が入っている砥部焼きの湯のみが並んでいた。


汐夏しおかが大学に入学してから数日後に休学した…


休学した理由は『獣医学部のカリキュラムが分からないから…』である…


そのうえに、今治市宮下町しないみやしたちょうで暮らしている叔父おじの家族たちと不仲になった…


汐夏しおかは、今後どのような生き方をしたいかについては言わなかった…


きよか・やすあき夫婦は、汐夏しおかがあいまいな言葉で説明したことに対してひどく困っていた。


汐夏しおかはどう言った生き方をのぞんでいるのよ…


きよかは、ものすごくあつかましい声で汐夏しおかに言うた。


汐夏しおか!!おとーさんとおかーさんはひどく困っているのよ!!汐夏しおか!!聞いてるの!?」


きよかに怒られた汐夏しおかは、つらい表情を浮かべていた。


きよかは、さらにあつかましい声で汐夏しおかに言うた。


汐夏しおかは、なんで岡山理大りだいに進学したのよ!?…おとーさんとおかーさんに『獣医さんになりたいから岡山理大りだいへ行く…みんなに愛される獣医さんになる…』と言うたから…おとーさんとおかーさんはアレコレと条件を出したのよ!!…(宮下町みやしたちょうの)叔父おじさんの家から通いなさい!!…卒業したあとは双海いえに帰りなさいと言うたのよ!!…双海じもとで就職しなさい!!…双海じもとで暮らしている男性と結婚して子をうみ育てなさいと言うたのよ!!…おとーさんとおかーさんは…孫の顔がみたいのよ!!」


近くにいた紗希子さきこが困った声できよかに言うた。


「おかあさま…汐夏しおかさんは大パニックを起こしているので…うまくものが言えないのです…」


きよかは、ものすごく怒った声で言うた。


「今うちは、汐夏しおかと話をしているのです!!」


紗希子さきこは、ものすごく困った声できよかに言うた。


「あの、おかあさまがガーガーガーガー怒鳴っていたら、汐夏しおかさんがイシュクしますよ~」


きよかは、ものすごくイラついた声で紗希子さきこに言うた。


「ガーガーガーガー言いたくなるわよ!!私たち夫婦は、ものすごくあせっているのよ!!ローゴの楽しみをうばわれるのがイヤだからあせっているのよ!!」

「それだったら、また日を改めてお話をしたらどうでしょうか?」


きよかは、ものすごく怒った声で言うた。


「もういいわよ!!あなたたちは私たちに汐夏しおかと話をするなと言うたので、やめるわ…汐夏しおかは獣医さんになる意志がない…双海いえに帰らない…双海じもとで結婚しない…子を産まないと言うたのでもう決めました…二番目の兄夫婦(46歳と41歳・子ひとり)の家族に東京暮らしをたたんで帰って来なさいと伝えます…」

「おかあさま、冷静になってください〜」


紗希子さきこは、きよかに対して冷静になるようにと言うたが、きよかは『冷静になれないわよ!!』と言い放ったあとこう言うた。


「サイアクだわ!!こんなことになるのだったら、汐夏しおかを大学へ行かせるのじゃなかった…その前に、うちも汐夏しおかをうんで大失敗したわ…」


やすあきは、怒った声で汐夏しおかに言うた。


「お前は、きょうから家の敷居をまたぐことは禁止だ!!…おかーさんとおとーさんの期待を裏切ったからカンドーだ!!…(二番目の兄)は素直でいい子なのに…なんでお前は親の期待を裏切った…孫の顔が見たいと思ったけどもういい!!…(二番目の兄の子)の方がかわいいかわいいかわいい…出ていけ!!お前は実家いえから出ていけ!!」


このあと、きよか・やすあき夫婦は家から出て行った。


それから20分後であった。


大広間に汐夏しおか紗希子さきこ綾乃あやのの3人がいた。


紗希子さきこは、汐夏しおかに対して困った声で言うた。


汐夏しおかさん…汐夏しおかさんはこのままでいいの?」


紗希子さきこの問いに対して、汐夏しおかはひとことも言わなかった。


紗希子さきこは、ものすごく困った声で汐夏しおかに言うた。


汐夏しおかさん、おとーさんからカンドーだと言われたので、帰る実家いえがなくなったのよ…どうするのよ!?」


紗希子さきこの呼びかけに対して、汐夏しおかはひとことも言わなかった。


紗希子さきこは、汐夏しおかに対して困った声で言うた。


汐夏しおかさん!!だまってないでひとこと言うてよ…汐夏しおかさんは岡山理大りだいに行きたいの?行きたくないの?」


紗希子さきこの呼びかけに対して、汐夏しおかは答えなかった。


紗希子さきこは、ものすごく困った声で汐夏しおかに言うた。


汐夏しおかさんは、獣医さんになりたいの?なりたくないの?」


汐夏しおかは、ものすごくつらい表情で首を横にふった。


紗希子さきこは、ものすごく困った声で汐夏しおかに言うた。


「それじゃあ、汐夏しおかさんは、ちがう大学に行きたかったの?」


つらい表情を浮かべている汐夏しおかは、答えなかった。


紗希子さきこは、ものすごく困った表情で汐夏しおかに言うた。


「それじゃあ、なんで違う大学を選ばなかったのよ!?」


紗希子さきこに言われた汐夏しおかは、かんしゃくを起こした。


「松山の大学へ行きたくないから岡山理大りだいを選んだだけよ!!」

「松山の大学へ行きたくないって…」

「アタシは、県外の大学へ行きたかった…けれど…担任が聖カタリナ(大学)へ行けと言うたからイヤになったのよ!!」

「聖カタリナへ行けと言われたの?」

「県外の大学へ行きたいのに…担任が『福祉関係の方があってる…』と一方的に言うた…だからアタシは聖カタリナへ行くのを拒否したのよ!!…他の大学は、偏差値が悪いからあきらめろと言われた…聖カタリナへ行けと言うのだったら行かない方がいいわよ!!」


近くにいた綾乃あやのは、あきらめ顔で紗希子さきこに言うた。


義姉ねえさん、もういいわよ…汐夏このこは大学に通うこと自体がイヤなのよ…汐夏このこは大学で学びたいことがないのよ…岡山理大りだいへ行きたくない…聖カタリナもイヤだと言うてるのに、無理やり通わせるのはよくないわよ。」

「だけどね〜」

「それに、大学を卒業したからと言うて一流企業に就職できるホショウはないのよ…昨年度に岡山理大りだいを卒業した学生さんたちのうち獣医師免許の試験に合格した学生さんが7割しかいなかったのよ…」

「分かってるわよ!!」


紗希子さきこ綾乃あやのがあーでもないこーでもないと言い合ったので、話し合いができなくなった。


汐夏しおかは、ワーッと泣きながら家から飛び出たあとどこかへ行った。


結局、話し合いは平行線の状態で終わった。


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