久しぶり。初めまして


 再び戻ってきた民間研究所で待っていたのは思いもよらぬ人であった。

 いや、違う。人では無い。


 自動人形オートマタだ。


 現在ではシド専用研究室となってしまった部屋の中央。可愛らしい自動人形オートマタが実験用ベッドに横たわっている。


 その姿はルイーズと瓜二つであった。


「研究所のデータにルイーズが製造された時のものがあったから、それを元にルイーズを作り直したんだ」


 そして、得意げに語るのは白衣姿のシド。


「凄いな、シド。ルイーズにそっくりだ」

「僕は天才だからねぇ」


 新生したルイーズに歩み寄る。

 細かいパーツの形からサイズまで彼女そのものであった。


「えーと、データのバックアップは無かったから記憶は無くなっているのけど……」

「それでも十分だよ」


 シドに返答しようとしたが、その前に懐かしい声が耳元で響いた。


「おはようございますぅ。えーと、お二人は誰ですか?」


 突然の出来事に思わず、鞘に手をかけそうになったが、何とかこらえた。

 声がした方を見てみると、ベッドで寝転がっていたルイーズがいつの間にか立ち上がっていた。


「あぁ、初めましてルイーズ。私はアステル、そして隣にいる白い髪のヤツがシド」


「お二人は私にとって何に当たる方ですか? 創造主パパですか? 」


 彼女の疑問に対し、首を横に振る。


「いや、私達は君の友達だ」





 ルイーズが目覚めてから数時間、私とシドは彼女からの質問攻めにあっていた。

 新生しても好奇心旺盛なのは変わらないらしい。


 質問攻めが終わると、今度はシドから手紙が渡された。帝都から届いたものだ。

 その内容とは――。


「おぉ、審問官の任命式への招待状だ!」


「わぁー、おめでとうございますぅ。ルイーズはアステルさんの友達一号として嬉しいです」


 背後から、美少女型自動人形オートマタが抱きついてくる。

 

 一体、いつルイーズが友達一号になったのかは、この際触れないでおく。

 そしてシドはというと、いつも以上に愉快そうな表情で腕を組んだ。


「いやぁ、楽しみだねぇ。君の新人歓迎会」


「審問官に新人歓迎会があるのか?」


「違うよ。審問官になると専属の部隊がつくだろ? その時、配属された兵卒と審問官の顔合わせがあるんだ。その顔合わせが帝国兵の間では『地獄の新人歓迎会』って言われてる」


「何が地獄なんだ?」


「端的に言うと顔合わせは『審問官が兵卒に実力の違いを分からせる』為にやるんだ。ルナベル様は顔合わせの度に下士官も含めた何人かに蹴りを入れてるよ」


「やだよ、そんなバイオレンスな歓迎会」


 シドが不満そうに口を尖らせる。


「えー、面白いものが見れると思ったのに」


「私はそんなことやらないぞ。その蹴り飛ばされた兵卒達が可哀想だ」


「腹蹴りされた兵士は、嬉しそうな顔してたけど?」


「なんで?」



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