肉球でもタッチパネルは使えるらしい
試験室に入ると、そこにはデーターベースにアクセスできるモニターと、奥の部屋に繋がる扉があった。
「そこのコンピュータからデーターベースにアクセスしろ」
「分かった」
指示通りにコンピューターを起動させる。
巨大なスクリーンの傍にキーボードの姿は無い。
恐らくタッチパネル式だろう。
雷魔法を使い、画面に触れずに操作する。
万が一指紋でも採られていたら一大事だ。
「どのデータを見ればいいの?」
「そこの一番下だよ」
会話が出来る謎のモフモフは私の肩から飛び降りると、画面中を埋め尽くすデータの中から一つを選んでタップした。
「初めからお前がやれよ」とツッコミたくなったが、今はそれどころでは無い。
データーベースの中に入っている殆どのファイルには、何やら難しそうな名前がつけられていたが、モフモフによって開かれたファイルに付けられた名前は至ってシンプルだった。
『アーキタイプ計画』
ただそう書かれていた。
「アーキタイプって何?」
「おや、そんなことも知らないのか?」
モフモフは口を開けるとそのままゲラゲラ笑った。
「待て、声が大きいぞ。誰かに聞かれたらどうするんだ?」
何とか彼を黙らせようと白い毛並みに覆われた体を掴んだ。
「その必要は無くなったみたいだ」
「それはどういう――」
質問を返そうとしたが私が口を開くより先に、どこか懐かしい男性の声が背後から響く。
「何を聞かれたくないのかな?」
恐る恐る振り向くと、そこには高身長の男性が一人。
整えられた白い髪。深いブルーの虹彩。そして青白い肌。
その姿はまるで……。
「お父さ――」
そう、突如現れた男性の姿は父そのものだった。しかし、冷静に彼の階級章を確認すれば、その正体が父では無いことが分かる。
まず、身を包む服から彼が研究員では無く帝国の軍人であることが分かる。そして自身の階級を表す為につける徽章から分かる階級は……。
「いえ、最高司令官……閣下」
帝国の中でもトップクラスの要人であり、師匠たるシデンが行方不明になる原因を作った人物。
私にとって忠誠を誓うべき人物であり、同時に仇でもある男。
そして容姿から彼が『四人いる父の一人』であることが分かる。
「言い直す必要は無い。その『お父さん』という呼び方もあながち間違いでは無いのだから」
どういう意味だ?
そのまま父の分身であることを表しているのか、あるいは――。
「お気遣いありがとうございます。ですが今は閣下と呼ばせて頂けないでしょうか?」
「おや、今ここで私が最高司令官として君と接する場合、私は君を罰する義務があるが?」
「えーと、その……」
「まぁ、良いだろう。所詮、呼び名というものは交流を円滑にする為の建前にすぎない」
最高司令官は試験室の奥へ続く扉を開けると、くるりとこちらを振り向いた。いつの間にやら手の中から抜け出していたモフモフが彼の肩へ乗る。
「あの、そのワンちゃん……」
「あぁ、この子は私のペットだよ」
こいつ、裏切り者だったのか。
何が『その時は俺に任せな』だ。期待して損した。
最高司令官は薄笑いを浮かべると、こちらへ手招きした。
「君の望み通り全てを教えてあげよう。こっちへおいで、私の可愛い
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